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国家間経済格差がひどいEU イギリスのEU離脱(ブレグジット)での重要な課題とは

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国家間経済格差がひどいEU イギリスのEU離脱(ブレグジット)での重要な課題とは

イギリスのEU離脱(ブレグジット)はすでにイギリス経済に悪影響を及ぼし始めていますが、ヨーロッパ大陸ではブレグジットの影響を受けて極右政党を勢いづかせることなどにより、欧州連合EU(European Union)自身も政治的かつ経済的な危機に立たされています。

しかし、そもそもEU自身は政治あるいは経済システムとして重要な課題を抱えています

国家間経済格差がひどいEU

EU域内間での経済格差

よく知られているように、EUメンバーの国家間での域内経済格差があります

例えば、一人当たりのGDPや一人当たりの収入を見てみると、ドイツやフランスと比較してスペインやイタリアはかなり低いですが東ヨーロッパ諸国はさらに低いです。

国家間で労働者を守る法律も違います。

EU圏内で人の行き来は自由なので経済のいいところに職が集まり、法律が整備されているところへ人々は移動します

人口はマーケットサイズでもあるので、その域内移動によってますます格差は拡大してしまいます。

例えば、ポーランド人はさまざまな国へ移動して職を得ていますし、他の東ヨーロッパ諸国の多くの人たちも職を求めてイギリスへ移住し永住ビザを得ています。

さらに、特にリーマンショック以降、スペインやイタリアなどは財政悪化を改善するために緊縮財政をEUから半ば強いられており、これも経済悪化に拍車をかけています

これらによりEU全体の経済が悪くなり、ユーロは安くなったわけですが、輸出に頼っているドイツにとっては有利に働きます。 

経済がいいときはEU全体がいいのでその格差はさほど気にすることはないのですが、リーマンショックの時のように経済が悪化するとその格差が広がって浮き彫りになり、経済基盤が弱いところはなかなか回復できません。

United States of Europeは実現されるのか

EU各国の一部の立法権や通貨金融政策は、EUに牛耳られています。

すなわち、一部の民主主義の機能あるいは主権がなくなった状態です。

これは、近年台頭してきている極右の人々やブレグジット支持派が指摘している点でもあります。

例えば、ECBがユーロ通貨に関する金融政策を行っているので、経済が悪くなってもEU各国は各国の事情に合わせて債券の発行や通貨流通量の安定を自由に行うことができません

2019年の12月からEU議長などが入れ替わり、新体制がスタートします。

新体制ではさらに共通のルールを施行する、つまりEUのさらなる中央主権化を進めようとしています。

EUは結局United States of Europeヨーロッパ合衆国を形成したいように見えます。

それは果たして可能なのでしょうか?

アメリカ合衆国United States of Americaの場合、各州にそれほどの経済格差はないですし、何よりも一定の価値観を共有できています。

ところが、ヨーロッパ各国は価値観や文化はかなり違う上に経済格差がかなりあります

価値観や文化はかなり違うヨーロッパ

EUは必要だが政治的にはチャレンジ

ヨーロッパでは長い間紛争や戦争を繰り返してきました。

そこで、EU設立時にはヨーロッパを平和的に安定させたいという考えもありました。

実際に2012年にEUはノーベル平和賞を受賞しその取り組みが評価されています。

また、EUグローバル経済圏は世界で二番目に大きい経済圏ですし、EU各国は経済的恩恵を受けたのは事実です。

従って、EUを解体させてしまうことは考えられませんし、やはりEUは必要なシステムです。

ただし、焦らずに時間をかけてEUの政治システムを構築する必要があります

その流れを加速させると、ついていけないあるいは適応できない人々があふれ極右政党をさらに勢いづかせることになってしまうでしょう。(執筆者:小田 茂和)

《小田 茂和》
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小田 茂和

小田 茂和

博士持ちのフリーライター兼個人投資家 2011年東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻終了。博士(理学)。MRC分子生物学研究所研究員(イギリス)、基礎生物学研究所研究員・助教などを経て現在に至る。スペイン在住。得意分野は政治、経済、投資、科学、社会、食など 寄稿者にメッセージを送る

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