まず、大前提としてお伝えします。

譲渡する年の1月1日現在で所有期間が5年超あるマイホームは、

購入価格より売却価格の方が安くなった場合、その損失分を取り戻せる制度

があります。

この制度は、バブル経済が崩壊した時に設けられたものです。

住宅を高値づかみしてしまった人が、転勤などでやむを得ずマイホームを安く売却せざるを得ない場合には、今でも十分に利用価値があります。

今回はこの制度に関して、新しい住宅を購入した場合と賃貸住宅を借りた場合に分けて、できるだけわかりやすく解説します。

1. 新しい住宅に買い替えた場合

家を買う

この制度の正式名称は、

「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」

です。

例えば、5,000万円で購入した住宅が3,000万円でしか売却できなかった場合、譲渡損失として2,000万円が発生します。

そして、新しい住宅を購入した場合、譲渡損失である2,000万円が、買い替えをした年を含めて通算4年間所得から控除できるのです。

このメリットは大きく、年収800万円の人で試算すると、

譲渡損失が発生した年の所得
800万円 – 2,000万円 = -1,200万円 → ゼロ

2年目の所得
800万円 – 1200万円 = – 400万円 → ゼロ

3年目の所得
800万円 – 400万円 = 400万円 → 400万円の所得

のようになります。

節税対策になる

つまり、2年間は所得がゼロですから、確定申告をすることによって、

会社から源泉徴収された所得税が全額還付されることになり、住民税も所得割がかからなくなる

のです。

3年目には400万円の所得が発生しますが、年収の半分の所得であるため、確定申告をすることで、上記と同様に所得税と住民税が減額されます。

税金の還付を受けて少しでも譲渡損失の穴が埋まることで、購買意欲を回復させることが制度の狙いです。

なお、この制度の手厚いところは買い替え後の住宅で住宅ローン控除が利用できるということです。

これにより、数年後に所得が回復しても、住宅ローン控除で当面の間は税金の還付を受けられます

2. 賃貸住宅を借りた場合

賃貸の住宅

この制度の正式名称は、

「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」

です。

前出の制度と何が違うのでしょうか。

答えは、新しい住宅を購入しなくても、上記と同様の譲渡損失の繰越控除が認められる点です。

ただし、注意したいのは、対象の住宅が

住宅ローン控除の対象となる住宅ローンで購入されたという要件がある

ことです。

また、対象金額については、次のような計算式で判定します。

例えば、

5,000万円で購入した住宅を3,000万円で売却 → 譲渡損失2,000万円が発生

売却前日の住宅ローン残高が4,000万円の場合:借入金残高4,000万円 – 売却代金3,000万円 = 1,000万円の損失

この両者を比較し、少ない方の金額が対象となるため、この事例では1,000万円が対象金額です。

単純に考えると、住宅ローンが1,000万円無担保で残るため、税金の還付を通じて住宅ローンの延滞を減らす狙いがあります。

制度の利用には条件を確認する

なお、上記2つの制度とも、所得金額が3,000万円以下であることや、他にもいろいろと条件があります。

制度を利用される際には、上記で示した正式名称で検索されるなどして制度の詳細を確認し、不明な点は必ず専門家にご確認下さい。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)