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日本銀行による追加「金融緩和」の手法と限界 日本銀行のETF買いによる株価形成のゆがみには注意

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日本銀行による追加「金融緩和」の手法と限界 日本銀行のETF買いによる株価形成のゆがみには注意

現在の金融政策の中身とその効果

現在日本銀行は、「長短金利操作付量的・質的金融緩和」という金融政策をとっています

これは、2016年9月20、21日に実施された政策委員会・金融政策決定会合で導入が決定され、それまでの

「マイナス金利付量的・質的金融緩和」を強化することが目的

とされています。

この金融政策は大きく2つの要素からなっています。

1. 従来の短期金利のみ操作する手法から、長期金利の操作まで行うことにより「イールドカーブ(利回り曲線)」の形状をも操作する

2. 消費者物価が物価安定目標の2%を安定的に超えるまでマネタリーベースの拡大を継続するという「オーバーシュート型コミットメント」

現在の大幅な金融緩和は2013年から始まっており、緩和当初はある一定の効果は発揮したといえます。

2012年末の民主党政権から自民党政権への移行から始まったアベノミクスで、日経平均株価は2倍以上にまで上昇し、一時は円ドルの為替レートも10円以上も円安に振れ、日本経済特に製造業には好影響をもたらしたといえます。

一方で、肝心の消費者物価は、デフレからは脱却できたものの、相変わらず非常に低い上昇率にとどまっており、金融緩和政策の効果はあまり見られなかったという他ありません

日本銀行もそのことについては危機感を持っており、金融緩和政策の方針もこれまでさまざま変化させており、現在は上述した「長短金利操作付量的・質的金融緩和」をとっておりますが、目立った効果は出てきていないのが現実です。

日本銀行による追加金融緩和の手法

容易に切れない追加金融緩和のカード

日本の金融政策は、米国の住宅金融バブル崩壊後継続的に緩和状態が続いている一方で、バブルの震源地であった米国は、一足先に2015年から金融引き締め方向に動いてきました。

米国も2019年入り後は、再度金融緩和の方向へ舵を切りましたが、2015年からの4年間は金融を引き締めてきていたため、緩和余地が残されています。

一方で、日本は緩和状態を継続しているため、一段の緩和を行うには手段が限られ、容易に一層の緩和へと進むことは不可能です。

一部市場関係者の間では、2019年10月末の政策委員会・金融政策決定会合で日本銀行が、一段の金融緩和政策をとるとの声が聞かれていました。

しかし、比較的円安な状態で安定している円ドル為替レートや、2万円を大きく上回る日経平均株価を考えれば、日本銀行が限られた虎の子の追加緩和カードを切るはずがありません。

もし仮に日本銀行が緩和カードを切るとすれば、それは円ドル為替レートが105円を上回る円高が常態化しそうなとき、もしくは日経平均株価が2万円を大きく割り込むなどといった日本経済に大きなマイナスの影響をもたらすような状況が生じたときに限られるでしょう。

限られる金融緩和の手法とその弊害

いざ緩和を実施するとなった際にはどうなる

日本銀行は「量的緩和」の具体的方法として、国債を年80兆円、ETF(上場投資信託)を年6兆円、REIT(上場不動産投資信託)を年900億円買い入れるとしています。

これ以上の金融緩和は、上述した通りよほどのことがない限り行われないとは思いますが、いざ緩和を実施するとなった際にはどのような手法が考えられるのでしょうか。

一般に言われているのは、短期金利の誘導目標を現在の-0.1%から-0.2%に引き下げるというものですが、これだけでは大した効果が得られないと考えられるため、量的緩和策も併せて実施されると思われます。

もっとも、国債の購入額をこれ以上増額するのは国際市場の規模を考慮しても不可能と言わざるを得ず、REITも市場規模からするとこれ以上購入額を増やすとしても微々たる額に限られると考えられます。

そうすれば、残されるのはETFの購入額の増額ということになり、その際には株価の下支え効果は期待できるでしょう。

しかし、足元ETF購入に伴う日本銀行の株式保有率は確実に上昇してきており、ETFの購入額増額という手法も限界に近付いてきています

日本銀行のETF買いによる株価形成のゆがみには注意を要するでしょう。(執筆者:土井 良宣)

《土井 良宣》
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土井 良宣

元日本銀行員で、現在独立系のファイナンシャルプランナーとして活躍しています。一般的なファイナンシャルプランナーと異なり、マクロ経済分析をベースとした運用アドバイスを独立した立場から行っています。また、相続や保険・家計の見直しのご相談も承っております。 寄稿者にメッセージを送る

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