日々を健康に過ごすために欠かせない医療費は、大切な家計費のひとつです。

毎月の通院や予防接種などの医療費として家計内でおおよその予算を取っていても、突然の手術や入院、ケガによって思いがけず医療費が多くなる年もあります。

予想外の医療費は家計的に大きな負担ですが、1年分の医療費が一定額以上であれば所得から控除される対象になります。

「医療費控除」は自分で手続き

自分で確定申告するの?!

医療費控除は年末調整の控除項目ではありません!

早ければ11月から配布、回収が行われる年末調整に必要な申告書は、扶養控除や保険料控除など記入事項や記入欄が細かく、分かりにくいこともあります。

そのため、「年末調整で医療費控除もできるのでは?」と思っている方が意外と多いです。

筆者は経理事務として勤務していましたが、実際に「医療費控除の記入箇所は、申告書のどこにあるのか?」とよく質問された経験があります。

「医療費控除」は、会社を通して手続きをする年末調整の控除項目ではありません

そのため、医療費控除を受けるためには、翌年の2月中旬~3月中旬までに自分で「確定申告」をする必要があるのです。

医療費控除となる対象条件と目安

医療費控除の対象となる医療費には2つの要件があります。

要件1:納税者本人、また納税者と生計を同一にする配偶者や家族、親族のために支払った医療費であること

要件2:控除対象となる年の1月1日~12月31日までに支払った医療費であること

また、支払った医療費のなかには、医療費控除の対象となるものと、対象にならないものがあります

医療費控除対象となる医療費の条件は細かく決められているので、確定申告の前にしっかり確認しておきましょう。

医療費控除の対象となる医療費

国税局の公式ページによると、医療費控除の対象となる医療費には大きく9種類あります。

1. 医師又は歯科医師による診療又は治療の対価

2. 治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価

ただし、平成29年1月1日から令和3年12月31日までの間に支払う特定一般用医薬品等の購入費は、その年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取り組みとして一定の健康診査や予防接種などを行っているときに、通常の医療費控除との選択により、セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)の対象となります。

3. 病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、指定介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設又は助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価

4. あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価

※疲れや体調を整えるといった治療に直接関係のないものは対象外

5. 保健師、看護師、准看護師又は特に依頼した人による療養上の世話の対価

※家族や親類縁者に付添いを頼んで付添料の名目で支払ったお金は対象外

6. 助産師による分べんの介助の対価

7. 介護福祉士等による一定の喀痰吸引及び経管栄養の対価

8. 介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額

9. 以下のような費用で、医師等による診療、治療、施術又は分べんの介助を受けるために直接必要なもの

(1) 医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用、コルセットなどの医療用器具等の購入代やその賃借料で通常必要なもの

※自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金、および電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除くタクシー代は対象外

(2) 医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯、眼鏡などの購入費用

(3) 身体障害者福祉法、知的障害者福祉法などの規定により都道府県や市町村に納付する費用のうち、医師等の診療等の費用に相当するものや上記(1)・(2)の費用に相当するもの

(4) 傷病により約6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合、おむつを使う必要があると認められるときのおむつ代

※医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要

10. 骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金

11. 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金

12. 高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導 (一定の積極的支援によるものに限る)のうち、一定基準の該当者が支払う自己負担金(平成20年4月1日から適用)

出典:国税庁HP「医療費控除の対象となる医療費

注意点

同時適用はできません

特に気を付けておきたい点は、「セルフメディケーション税制」は医療費控除と同時には適用できないことです。

もし、「セルフメディケーション税制」を選択した場合は、対象となる医薬品の購入金額が1万2,000円を超えると所得控除が受けられます。

ただし、控除金額には8万8,000円までの上限が設けられており、さらに健康診断や予防接種などを行っていることが条件となるので、医療費控除かセルフメディケーション税制を選ぶかは慎重に決めるようにしましょう。

医療費控除となる医療費の目安金額

医療費控除となる金額は、まず実際に支払った医療費から、各保険から受け取った保険金や健康保険からの高額療養費、出産育児一時金などを差引きます。

所得が200万円以上の場合は、一律10万円を差引くため、実際に払った医療費が10万以上であれば「医療費控除」をする目安となります。

ただし、所得が200万円未満の場合は、所得金額×5%分をさらに差引いた金額が医療費控除の金額となるので、源泉徴収票に記載された所得額を確認するようにしましょう。

医療費控除をして安くなる税金

確定申告で医療費控除をすると、課税対象の所得金額が低くなり、その結果、所得税と住民税が安くなります。

所得税は年末調整で確定した所得税額よりも安くなり、還付金が発生します。

所得税の還付金は、確定申告から約2~4週間後に指定した銀行口座へと還付されます。

一方、住民税は、医療費控除額の約10%分が安くなります。

ただし、翌年6月以降の納付分に反映されるため、銀行口座へ還付されることはありません

会社で住民税が給与から天引きされている場合は、毎月の給与明細を確認するとよいでしょう。

医療費が年間10万円を超えたら、12月中に申告準備

通常、1人分の医療費は目安となる10万円をあまり超えることはありませんが、家族にかかった医療費を合算すると控除対象金額になっていることも少なくありません。

まずは、病院や薬局などで発行された医療費対象の領収書は、まとめて保管しておきましょう。

確定申告で支払った医療費を証明する領収書の提出は必要ありませんが、領収書の代わりに「医療費控除の明細書」の作成、添付が確定申告で必要となるためです。

医療費控除の明細書フォーマットは、国税局の公式ホームページ(pdf)からダウンロードできます。

年始年末が過ぎると、年度末の3月までなにかと慌ただしく時が流れていきます。

「今年の医療費は高くなっている」と感じたら、12月に入ったら計画的に医療費控除の確定申告のための準備を進めるようにしましょう。(執筆者:花見 結衣)