※本サイトは一部アフィリエイトプログラムを利用しています

注目記事

【元弁護士が解説】相続争いでかかる弁護士費用 ケース別の相場と安く抑える方法

税金 相続・贈与
【元弁護士が解説】相続争いでかかる弁護士費用 ケース別の相場と安く抑える方法

相続争いがいったん起こると、感情的な骨肉の争いが際限なく続くことが多いです。

そんな相続争いをおさめるためには、冷静に対応しつつ専門的な知識を駆使することが必要です。

弁護士に依頼することで適切な解決が期待できますが、弁護士への相談料や依頼費用は気になるところでしょう。

そこで、ここでは相続争いのケース別に、弁護士の相談・依頼費用の相場や安く抑える方法を解説していきます。

報酬規程によると弁護士費用は高額になる

弁護士に支払う費用の相場

どこの法律事務所にも「報酬規程」があります。

以前は日弁連が作成した報酬規程が一律に適用されていましたが、現在では廃止され、各弁護士が自由に費用を決めることになっています。

そのため、各事務所には独自の報酬規程が備えられていますが、多くの場合、昔の日弁連の報酬規程をほぼそのまま引き写した内容となっています。

そこで、まずは昔の日弁連の報酬規程の内容をみてみましょう。

日弁連の報酬規程

昔の日弁連の報酬規程のうち、法律相談料と民事事件の着手金・報酬金は以下のように定められています。

法律相談料と民事事件の着手金・報酬金

参照:(旧)日本弁護士連合会報酬等基準(pdf)

ただし、遺産分割請求の依頼については、分割の対象となる財産の範囲または相続分について争いのない部分については、相続分の時価の3分の1の金額が経済的利益の額になります。

なお、ここに掲げた民事事件の着手金・報酬金は訴訟など裁判手続を要することを前提とした金額です。

調停や示談交渉の依頼の場合は上記の金額の3分の2に減額できることになっています。

また、示談交渉から調停に進んだり、調停から訴訟に進む場合には追加着手金として上記の金額の2分の1を請求できることになっています。

相続争いの解決を弁護士に依頼した場合、この規定に従うと費用がいくらになるのか、例を挙げてみてみましょう。

例:総額5,000万円の遺産の分割をめぐって相続争い、被相続人の妻が弁護士に依頼

妻の法定相続分(1/2)は2,500万円ですが、そのうち2,100万円までは争いがなくても、残りの400万円についてほかの相続人から寄与分を主張され、弁護士に依頼した結果、妻は法定相続分どおり2,500万円の遺産を相続できたとします。

この相続争いを解決するために遺産分割協議(示談交渉)と調停を行ったとすれば、弁護士費用は以下のようになります。

法律相談料… 30分で5,000円

着手金… 73万円

経済的利益の額… 1,100万円
※争いがなかった部分の2,100万円×1/3+400万円

【計算式】
300万円 × 8%=24万円
800万円 × 5% + 9万円=49万円
24万円 + 49万円=73万円

追加着手金… 36万5,000円

【計算式】
示談交渉の着手金73万円×1/2=36万5,000円

報酬金… 76万円

経済的利益の額… 400万円

【計算式】
300万円 × 16%=48万円
100万円 × 10% + 18万円=28万円
48万円 + 28万円=76万円

着手金と報酬金を合わせると185万5,000円になります。

弁護費用は結構かかります

これに消費税や実費などが別途かかります。

なお、法律相談料は、依頼を受ける場合は請求しない弁護士も多いです。

とはいえ、以上の金額を見ると、多くの方は非常に弁護士費用が高いとお感じになるのではないでしょうか。

しかし、実態はかなり違います。

弁護士費用は実際には柔軟に決められている

以前、日弁連の報酬規程が統一的に適用されていたころから、多くの弁護士は規定にかかわらず柔軟に費用を決めていました。

今も、それはあまり変わっていないはずです。

なぜかというと、

日弁連の報酬規程のとおりに計算するとあまりにも費用が高くなりすぎて実態に合わないし、その金額を支払える依頼者もあまりいなかった

からです。


実際の費用の決め方は弁護士によってまちまちなので何とも言えませんが、ごく大ざっぱいに言うと、上の例なら

・ 着手金… 20~30万円
・ 報酬金… 50万円前後

とする弁護士が多いでしょう。相場としてはその程度です。

ただし、繰り返しますが費用の決め方は弁護士によって本当にまちまちです。

もっと高額の費用を請求する弁護士もいるので、ご留意ください

【ケース別】相続争いの弁護士費用の相場

遺産分割協議と調停の弁護士費用の相場は上でご説明したとおりです。

相続争いにはほかにもさまざまなケースがあるので、ケース別に弁護士費用の相場をご紹介します。

ただし、実際に支払われている弁護士費用については正確な統計があるわけではないので、以下でご紹介する「相場」には私感が多分に含まれていることをご容赦ください。

遺言書作成

相続争いが予想される場合は、被相続人の生前に遺言書を作成しておくことが重要です。

遺言書作成を弁護士に依頼した場合の手数料は、日弁連の報酬規程では10万円~20万円とされています。

実際の相場も同程度か、若干低く8万円~15万円程度のケースも多いように感じます。

遺言執行

被相続人が遺言書を残していた場合は、遺言の内容を実現するために遺言執行者を選任することになります。

遺言執行の作業は単に遺言の内容を実現するだけですが、

・ 戸籍関係書類の収集

・ 相続財産の調査

・ 不動産登記手続

・ 遺産の換価手続(場合によって)

など数多くの作業があります。

個人で行うには大変な作業や、専門的な知識を要する作業もあるので、弁護士などの専門家に依頼したほうが安心できます。

遺言執行を弁護士に依頼した場合の手数料は、日弁連の報酬規程では以下のように定められています。

遺言執行を弁護士に依頼した場合の手数料

参照:(旧)日本弁護士連合会報酬等基準

実際の相場としては、経済的利益の額に応じて細かく計算するよりも、30万円~50万円程度でざっくりと決められるケースが多いです。

作業が多いケースでは手数料が100万円程度になるケースもあります。

相続放棄

相続放棄の申し立てを弁護士に依頼した場合の手数料は、日弁連の報酬規程では10万円~20万円とされています。

実際の相場としてはそれよりも少し低く、5万円~15万円程度と考えられます。

相続放棄は難しい手続ではないので、弁護士に依頼せず自分で申し立てる方も多いため、手数料の相場も低めになっています。

ただし、被相続人に借金があって債権者からの催促が厳しいような場合は、弁護士に依頼すれば弁護士がすべて対応してくれるというメリットがあります。

内容証明郵便の作成・送付

遺産分割についてほかの相続人と言い分が食い違う場合、本格的な遺産分割協議を始めるときに内容証明郵便をほかの相続人へ送付するのが一般的です。

内容証明郵便の作成・送付を弁護士に依頼した場合の手数料は、日弁連の報酬規程では3万円~5万円とされています。

ほかの相続人が遠方に住んでいる場合

ほかの相続人が遠方に住んでいる場合に相続争いの解決を弁護士に依頼すると、遺産分割協議や調停・審判への出頭のために弁護士が出張しなければならないことがあります。

遺産分割の調停は相手方、つまりほかの相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があり、審判は被相続人の最後の住所地に申し立てる必要があります。

弁護士が出張する場合は、実費のほかに弁護士の日当がかかります。

日当について、日弁連の報酬規程では半日で3万円~5万円、1日で5万円~10万円とされています。

実際の相場としては半日で5,000円~1万円、1日で1万円~2万円程度です。

日当は請求しない弁護士も少なくありません。

日当を請求されない場合でも、交通費は実費を請求されるのが一般的です。

実費としては

・ 出張交通費

・ 連絡にかかる通信費

・ 調停や審判を申し立てる際の印紙代や予納郵券代

などがあります。

弁護士が事件を処理する際には大量の書類が発生するため、コピー代を請求する弁護士もいます。

相続争いの弁護士費用を安く抑える方法

弁護費用を安くする方法

弁護士費用を安く抑える方法を知りたい方は多いと思いますが、とっておきのコツのようなものはありません。

しいていえば、

遺産分割協議は自分で行い、調停の申し立てが必要になって初めて弁護士に依頼する

ことで遺産分割にかかる着手金を節約できます。

しかし、早めに弁護士に依頼すれば遺産分割協議で解決できたのに、当事者間で揉めることによって問題が深刻化するケースも少なくないので、これはあまりおすすめできません。

以上のことを前提として、弁護士費用を安く抑える方法としては以下の2つが考えられます。

1. 費用が安い弁護士を見つける

弁護士費用を安く抑えるためには、費用が安い弁護士を見つけるのが最善の方法です。これに勝る方法はありません。

既にご説明したとおり、費用の決め方は弁護士ごとにまちまちです。

相続案件の経験が少なくて自信がないために費用を安くしている弁護士もいるのは事実ですが、同じ水準の仕事ができる弁護士でも費用の水準はまちまちなのです。

傾向としては、相続案件に力を入れている事務所の方が安い費用で依頼できることが多いです。

多分野の案件を取り扱っている事務所よりは、相続案件に力を入れている事務所の方が効率的に事案を処理できるので、費用も安く設定しやすい傾向があるのです。

できれば、複数の事務所に相談をして見積もりを取り、比較するのが理想です。

2. 法テラスを利用する

法テラス(日本司法支援センター)には「民事法律扶助」という制度があります。

この制度は、収入が一定の水準以下であることなどいくつかの要件を満たす方は安価な弁護士費用で、それも着手金は分割払いで弁護士に依頼できるものです。

法律相談も3回まで無料になるので、要件を満たす方は利用してみるといいでしょう。

相場を知って、ゴールを決めて弁護士を見つける

相続争いの弁護士費用について解説してきました。

何度もご説明したとおり、弁護士によって費用の決め方はまちまちなので相場を示すことは難しいのですが、筆者の経験もふまえて解説しました。

ほかのサイトで説明されている「相場」とはかなり異なるところもありますが、可能な限り弁護士業界の実態に即してご説明したので、ある程度の「相場感」はつかんでいただけたのではないかと思います。

弁護士費用は決して安くありません。

依頼する目的と、望むゴールを明確に決めて弁護士に依頼することが重要です。(執筆者:川端 克成)

《川端 克成》
この記事は役に立ちましたか?
+2

関連タグ

川端 克成

川端 克成

約15年間弁護士をしていましたが、人の悩みは法律だけでは解決できないことに悩み続けて、辞めてしまいました。現在はフリーライターとして活躍中です。読んで役に立ち、元気が出るライティングをモットーに、法律問題に限らず幅広いジャンルで執筆しています。これまでの人生では、ずいぶん遠回りをしてきました。高校卒業後は工場などで働いて二部大学に入り、大学卒業後も工場で働いて司法試験の勉強をしました。弁護士を辞めた後も工場で働きながらライティングの修行を重ねました。そんな人生経験にも基づいて、優しい心を執筆を通じてお伝えするのが理想です。 寄稿者にメッセージを送る

今、あなたにおススメの記事

特集