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【銀行員が答えます】休眠口座に手数料検討 通知は? 残高がなくなったら? 対策は? なぜ今さら…?

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【銀行員が答えます】休眠口座に手数料検討 通知は? 残高がなくなったら? 対策は? なぜ今さら…?

口座の手数料に大きな波紋

口座に手数料ってなに?

2年間動きのない口座に年間1,200円の手数料を検討~2020年秋にも

この記事を書いている現在(2019年12月7日)、一部メガバンクに関する新聞記事やネットで発表された内容は、かなり大きな波紋を呼んでいます。

SNSでトレンドワードになるほど注目を集めて、さまざまな意見の投稿や多くの疑問があるようです。

今回は銀行口座の手数料に関して、皆さんが抱いているかもしれない疑問について銀行員としてお答えしたいと思います。

「銀行口座はどのように管理されているか?」などにも触れ、この記事で銀行で口座を持つということを考えるきっかけにしていただければ幸いです。

この記事は口座手数料について純粋に説明する内容であり、特定の金融機関を誹謗中傷するものではなく、また他の取引に誘導する意図もありません。

そのため、実在する金融機関のケースを例として紹介しますが、固有の名称は明示しません。


現時点での口座手数料(口座維持手数料 口座管理手数料)とは

銀行が預金口座を維持管理する費用を、顧客に負担させるのが口座手数料です。

「口座維持手数料」や「口座管理手数料」などいくつかの呼び方がありますが、意味や使われ方は統一されていないようです。

一部の記事では

・ すべての口座を対象にするのが「口座維持手数料」

・ 入出金など動きのない口座を対象にするのが「口座管理手数料」

と区分けしているところもありますが、どちらも意味としては大きな違いがありませんので、この記事ではシンプルに口座手数料で統一します。

私の知るかぎり、現在口座手数料を導入しているのはメガバンク1行(グループ銀行も含む)、信用金庫1行信託銀行1行です(信託銀行は富裕層投資口座の手数料で、意味が違うので除外します)。

メガ1行は2004年より「未利用口座管理手数料」をすでに導入済み、信用金庫は来年(2020年1月)から「未利用口座管理手数料」を導入する予定です(両金融機関のHPに記載あり)。

ともに、今回報道と同じ内容の口座手数料に該当します。

これからの口座手数料はどうなるのか、報道内容から考える

すでに導入している金融機関の例や、今回の報道内容による概略は次の通りです。

1. 対象になるのは2年間動きのない「不稼働口座」

入出金や給料振込、公共料金やクレジット代金の自動引き落としなどが銀行口座の主な動きです。

このような動きがまったくない口座を「不稼働口座(未利用口座)」と呼んでいます。

この不稼働状態が2年以上続いている口座に対して手数料を取ることになるようです。

通帳記入(記帳)や利息の入金(利息付与と言います)、そしてこの口座手数料の引き落としなどは口座が動いた(稼働した)ことにはならない

ようです。


2. 手数料は年間1,200円(税別)

手数料は年間1200円

手数料の金額は年間1,200円の予定で、導入予定の信金と導入済みのメガバンクも同額です。

銀行が口座を維持管理する費用を、顧客が負担する手数料として、この金額設定になっています。

3. 対象になる人には事前に「通知」される

口座の動きがなく手数料の対象になる人には、事前に通知されます。

通知の方法としては、銀行から手数料についてなどの内容を記載した文書が、届出住所に郵送されるのが一般的です。

ただし、この場合郵便が届かなくても通知したことになります(上記メガと信金、ともにHP記載あり)。

銀行は通知文書を郵送した、という事実だけで通知は完了したというスタンスです。

「転居したことを銀行に知らせず文書が届かなかった」

などで自分が知らなくても通知したことにされてしまうので注意が必要です。

4. 通知後、さらに3か月間不稼働だと手数料が引き落とされてしまう

通知が届いたあと、さらに3か月間不稼働の状態が続くと手数料が引き落とされてしまいます

文書には「今から3か月のあいだ動きがなければ手数料を徴収する」という内容が書かれているようです。

言い換えれば、3か月後に手数料を取ると予告したから、あとになって文句は言わないでくださいね、ということにもなります。

自分が知らなくても通知されたことになっているので(上記)、その人はこうした、いわば3か月の猶予期間があったことも、まずわからないでしょう。

転居をして知らせていない場合は、最後まで自分がまったく知らないところで手数料が引かれてしまうこともありえます。

通帳をなくして(喪失)いた場合も同じで、上記の手続きが進んでしまいます

5. そのあとも不稼働が続くと、最後には「強制解約」されてしまう

口座が不稼働(未利用)口座にされ手数料が引かれたあとも、そのまま放置していれば毎年手数料が引かれていきます。

そして、口座の残高が手数料に満たなくなった場合は、その残額を手数料として徴収したあとで、口座は強制解約されてしまいます。

例示した金融機関のHPには「口座を自動解約させていただいた後の、お客さまのお手続きは一切ございません。」と記載されていることから、強制解約する予告や、解約したという通知はされないようです。

Aさんの口座でシミュレーション

【5年前に5,000円で口座を開設したAさん】

引っ越しをした時にはすでに口座の存在は忘れていたので、銀行に転居届も出していません

3か月の猶予期間も過ぎ、銀行は通知をしたので、手数料(1,200円+消費税)を引き落とし始めます。

手数料が引き落とされてから4年目、口座残高は5,000円から3,960円(1,320円×3年分)引かれて残高が1,040円になりました。

その後、残高1,040円が全部引き落とされて強制解約、銀行との取引は終了となります。

報道されている内容が実現されれば、自分が知らないうちにこのようなことがこれから起きます。

今… 口座が 消滅した

手数料導入3つの理由

これまで銀行に口座を持つことで手数料はかかっていなかったのに、なぜ今になって必要なのか?

銀行員としての考え、私見でですが、それには3つの理由が考えられます。

理由1:銀行が、儲からなくなったから

不況、低金利政策、競争激化、フィンテックなど銀行を取り巻く環境は悪化し、銀行経営は苦しくなっています。

いまや、就職戦線の学生たちのあいだで、銀行は最早花形ではなく「斜陽産業」と思われているようで、銀行員としては寂しいかぎりです。

銀行が手っ取り早く利益を求めるとき、1番簡単な方策は手数料を増やすことです。

口座の維持管理費用を顧客に負担させるという名目ですが、本音は手数料が欲しいということ、そして本当に口座を維持管理するにはお金がかかるからです。

理由2:口座を維持管理するのにはお金がかかるから

ひとつの顧客口座を維持管理するには、実際費用がかかります。

顧客情報を厳正に管理するシステム構築や維持には莫大なお金が必要になります。

銀行口座の通帳を1冊作るとき、通帳繰り越しのときには200円の印紙税が必要(収入印紙を貼ること)です。

実際新規発行や通帳繰り越しなどひとつの銀行ですべて管理するのは大変なので、印紙税は特別な方法で納税しています。

これを年間の決まった日時点の、銀行の口座数×200円で納税しています。

他の経費とも合わせると、ひとつの口座を維持管理するには年間2~3,000円の費用がかかると、金融業界ではよく言われます。

理由3:銀行が手数料を理由にして顧客を選別したいから

年間2~3,000円費用がかかる銀行口座ですが、その人に費用を上回る取引があれば、手数料をもらわなくてもよくなります。

例えば

・ 定期預金や投資信託などの運用残高がある

・ 住宅ローンなどの融資残高がある

・ 銀行のクレジットカード会員になっている

などの取引です。

上記メガと信金でも取引に応じて手数料対象外になると説明があります。

また、口座残高が1万円以上ある場合も手数料対象外になるようです。

これは、1万円以上残高を預けてくれる人ならこれからの取引拡大の望みがある、という「線引き」と考えられます。

ネット記事の口コミに「1万円未満の人は、銀行から見るとお客さんじゃないんですね」とありました。

その通りとは言いませんが、ある意味当たらずとも遠からず、私は的確な意見だと感じています。

今回の報道を受けた反応で多かったのが「手数料を取られるなら解約する」というものです。

こうした反応は当然考えたうえで、それでも手数料を導入しようとしているわけですから、「1万円未満で取引拡大が望めない顧客とは、これを機会にさよならしてもいい」と銀行が宣言しているとも感じられます。

せめて1万円… お願いします

口座手数料を取られないようにする方法

口座手数料を取られないようにするには、どのような方法があるでしょうか?

いくつか具体的な手段をお教えします。

1. 入金して残高を増やす

2. 出金して残高を最小限にしておく

3. 手数料がかからないようなサービスを申込む

導入済みメガや報道によると残高1万円未満の口座が対象になるようなので、とりあえず入金して残高を1万円以上にしておけば、手数料は取られなくて済みそうです。

余分な出費がイヤなら、カードで出金可能な金額ギリギリまで出して残高を限りなくゼロに近くしておくという方法もあります。

また、銀行のHPなどで手数料がかからないようにするサービス(定期預金が〇〇万円以上あるなど)を確認して、そうしてサービスを申込むという手もあるでしょう。

そこまでして維持する意味があるのかを考える

ここまで読んだ人の中には「そこまでして、その銀行の口座を持ち続けなくても良いんじゃないの?」と感じた人もいるでしょう。

そうです、手数料がかからなくなるやりかたを説明しましたが、「そこまでして、その銀行と取引を続けるか」これを考える良い機会ととらえてはいかがでしょう。

複数の銀行で口座を持つことについて銀行員の考え

お金を貯めるために銀行を分けるとか、家計の口座はA銀行、投資運用はB銀行い分ける、といった考えも否定しません。

このサイトでもそうした記事があり、納得できる論拠があると私も感じます。

ただし、それは自己管理ができるという前提の話しですので、面倒くさいのはイヤ、お金のことばかり考えたくないという人には向いていないと思います。

細かい管理が苦手な人が、貯蓄の裏ワザ的に複数口座を作ると、結果として作ったことを忘れてしまい、自分の知らないところで残高が消えていくことにもなりかねません

私は銀行員として、意図的に複数の銀行に口座を持つのはおすすめしません。

「社会人になって、はじめて銀行口座を作りメインバンクの銀行と取引するうちに頼まれて作った」

「引き落としで指定された他の銀行口座を作った」

「親が作ってくれていた口座を受け継いだ」

「バイト先の振込指定銀行だったので口座を作った」

気がついてみれば複数の銀行で自分名義の口座がいくつもあるのが現状だと思います。

銀行を選別するのはあなた自身

選別する機会 選ぶのはあなた

あなたが口座を持っている銀行で口座手数料が導入されたら、

「そこまでして付き合う銀行か?」

これをよく考えたうえで、ご自身で銀行を選別する機会にしてください。


給与振込や住宅ローンなどの借入、クレジット代金や学費、公共料金の引き落としなどメインにする銀行口座はひとつで大丈夫です。

どうしても〇〇銀行でないとダメと指定されたときに、2冊目を持つくらいがちょうど良いと私は考えます。

今のところメインバンクとして取引している口座は、手数料の対象になることはないでしょう。

ただし、冒頭で触れたようにすべての口座が手数料の対象になる時代が来るかもしれません。

そのときこそ「手数料を払ってまで付き合うべき銀行か?」を選ぶのはあなたです。

場合によっては住宅ローンも含めて、よりサービスが良い銀行に「口座ごと取引を引っ越す」ことも考えることもあると思います。

やっかいな口座解約とその対処法

選別してもういらないと思った銀行口座は解約することになりますが、この解約が結構やっかいです。

口座の解約は、口座がある支店に本人が出向いて手続きするのが原則です。

今回の手数料に関するネット記事の口コミに離島に住んでいる人で「銀行から言われて、解約するために飛行機を使って手続きに行った」という内容があり驚きました。

本当に「飛行機を使ってでも来店しろ」と銀行が言ったとしたらけっこう問題だと思いました。

今まで取引していただいたお客さまに対し、そこまで高飛車で杓子定規な対応をする銀行はないと信じたいからです。

真偽のほどはさておき、原則は来店でも、交通費や時間がかかる場合には、郵送で書類のやりとりもしてくれるはずです。

いずれにせよ口座を解約するときは銀行に連絡して、事前準備など漏れのないようにしてください。

足りないものがあると、1度で手続きが終わりません。

どうしてもすぐに手続きができない場合などの場合でも、銀行に1度連絡をすると、「このままでは3日後に手数料が引かれてしまう」という場合でも、もしかしたら引き落としを一時ストップしてくれるかもしれません。

私の勤務する銀行では、手数料についてお客様から事前に異存や苦情の申し出があった場合に、それを無視して手数料を取るようなことはしません。

銀行によって対応は違うと思いますが、大事なことはしっかりと自分に意思表示をすることです。

現在、銀行など金融業界は「お客様本位の運営方針」をかかげています。

これに余分な説明は不要で、文字通りお客様本位の柔軟な対応をしてくれるはずです。

仮に、銀行の対応に納得いかなければ、それも銀行と縁を切るきっかけになるでしょう。(執筆者:加藤 隆二)

《加藤 隆二》
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加藤 隆二

執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二 加藤 隆二

バブル期に入社して、以来銀行一筋30年。お金にまつわるさまざまな相談にこたえてきました。時には返せなくなってしまった人からの相談にも、可能な限り親身になって対応してきたつもりです。銀行員として「あなたのために、なにができるか考えます」 最初の挨拶はいつもそう言ってきました。年を重ねた今も、気持ちは変わっていません。銀行員として、読者である「あなたのために」役に立つ文章を書いていきたいと思っています。 寄稿者にメッセージを送る

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