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60歳以降、収入によっては年金が減り「健康保険」の自己負担が増えるのはこんな人

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60歳以降、収入によっては年金が減り「健康保険」の自己負担が増えるのはこんな人

60歳以降に定年退職後を迎え、契約社員、パートやアルバイトなどの非正規雇用として再雇用されたケースでも、次のような要件をすべて満たす場合には、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入します。

社会保険に加入しなければいけない要件

・ 1週間あたりの所定労働時間(雇用契約書や就業規則などで定められた労働時間)が、20時間以上であること

・ 1か月あたりの決まった賃金(賞与、交通費、残業代などは除く)が、8万8,000円以上であること

雇用期間の見込みが、1年以上(雇用契約書や就業規則などに更新の定めがある場合には1年未満も含む)であること

・ 学生(定時制、通信、夜間の学生は除く)ではないこと

従業員の人数が、501人以上(労使の合意がある場合には、500人以下も含む)の会社で働いていること

後者の厚生年金保険に加入した場合、会社から受け取る給与の金額によっては、年金の一部または全部を受給できなくなります

その理由として在職中の年金を減らす、「在職老齢年金」という制度があるからです。

ただこの制度によって受給額が減るのは、原則65歳になると厚生年金保険から支給される「老齢厚生年金」、または経過措置で60歳から64歳になると支給される、「特別支給の老齢厚生年金」だけです。

ですから原則65歳になると、国民年金から支給される

・ 老齢基礎年金
・ 遺族基礎年金
・ 寡婦年金
・ 遺族厚生年金などの「遺族年金」
・ 障害基礎年金や障害厚生年金などの「障害年金」

は、この制度の影響を受けません。

在職老齢年金が改正されても、恩恵を受けられる方は限られている

在職老齢年金によって年金が減り始めるのは、60歳から64歳の場合、

「特別支給の老齢厚生年金を12で割った金額」と、「月給+直近1年間の賞与を12で割った金額」の合計が、28万円という支給停止基準額を超えた時

です。

また65歳以降の場合、「老齢厚生年金を12で割った金額」と、「月給+直近1年間の賞与を12で割った金額」の合計が、47万円という支給停止基準額を超えた時です。

いずれの基準についても、高齢者の就業意欲を損なっているという指摘があったため、政府は在職老齢年金の見直しを始めたのです。

議論が開始された当初は、在職老齢年金を廃止する案、または28万円と47万円の両者を、62万円に引き上げする案が有力でした。

しかし議論を進めるうちに、在職老齢年金を廃止する案は後退していき、また62万円は高いということで、51万円が有力になりました。

これで決着かと思っていたら、65歳以降の47万円は現状維持のままにして、60歳から64歳の28万円だけを47万円に引き上げする案が、現在はもっとも有力になっております。

この案が実現すれば、確かに以前よりは改善されますが、65歳になる前に特別支給の老齢厚生年金を受給できるのは、男性は1961年、女性は1966年4月1日以前生まれの方に限られます

つまり今後は人数が減っていき、最終的にはいなくなるので、改正案の恩恵を受けられる方は、あまり多くはないと思います。

現役並み所得者と判断されると、健康保険の自己負担は1割上がる

健康保険の自己負担が 1割上がる?

健康保険に加入している方と、その被扶養者になっている方が、保険医療機関などの窓口で支払う自己負担の割合は、年齢に応じて次のようになります。

70歳未満に該当する方

3割(小学校就学前については2割)

70歳以上75未満に該当する方

2割(現役並み所得者については3割)

このように70歳以上75未満の場合、現役並み所得者だと判断されると、自己負担の割合が1割上がるのです。

現役並み所得者と判断される基準は原則として、月給の金額を元にして算出される標準報酬月額が、28万円以上の場合になります。

また標準報酬月額が28万円以上になるのは、月給の金額が27万円以上の場合になるため、役員などの一部の高所得者だけが、現役並み所得者と判断されるわけではないのです。

ただ単身世帯で年収が383万円未満の場合、または70歳以上の被扶養者がいる夫婦世帯で、合計年収が520万円未満の場合には、標準報酬月額が28万円以上でも、2割負担になるのですが、申請が必要になります。

自己負担が一定額を超えた場合、高額療養費として払い戻しされる

保険医療機関などの窓口で支払う自己負担の割合は、健康保険であれば上記のように2割から3割になります

ただ医療費の自己負担には上限があるので、同一月(1日から月末)に支払った自己負担が、一定額(自己負担限度額)を超えた場合には、その超えた部分が「高額療養費」として払い戻しされるのです。

また例えば入院する前に、「限度額適用認定証」の交付を受け、それを保険医療機関などの窓口に提示すると、自己負担限度額を超える分は、支払う必要がなくなるのです。

主に中小企業の従業員と、その被扶養者が加入している協会けんぽの、70歳以上75未満の自己負担限度額は、次のようになっております。


≪画像元:全国健康保険協会

例えば入院した際に、1か月の総医療費が100万円になった場合、現役並み所得者と一般所得者の自己負担限度額は、次のような金額になります。

現役並みⅢ

25万2,600円+(100万円-84万2,000円)× 1%=25万4,180円

現役並みⅡ

16万7,400円+(100万円-55万8,000円)× 1%=17万1,820円

現役並みⅠ

8万100円+(100万円-26万7,000円)× 1%=8万7,430円

一般所得者

5万7,600円

以上のようになりますが、標準報酬月額が高い現役並み所得者ほど、負担が重くなるとわかります。

厚生年金保険に加入しない70歳以降も、在職老齢年金が適用される

原則として75歳以降は、すべての方が後期高齢者医療に加入するため、健康保険に加入する年齢の上限は75歳になります。

それに対して厚生年金保険は、引き上げの可能性はありますが、現在は原則として70歳です。

そうなると厚生年金保険に加入しない70歳以降は、収入がいくらであっても、在職老齢年金は適用されないと考えてしまいます。

しかし70歳以降も引き続き、厚生年金保険が適用される会社に在職中の場合には、65歳から70歳未満と同じ仕組みで、老齢厚生年金が減ってしまうのです。

一方で例えば60歳以降に個人事業主になって、厚生年金保険に加入しなくなれば、在職老齢年金は適用されないため、収入がいくらになっても年金は減りません

ただ健康保険の代わりに加入する国民健康保険、または後期高齢者医療の方で、現役並み所得者と判断されると、70歳以降の自己負担が1割(後期高齢者医療は2割)上がり、かつ高額療養費の自己負担限度額が増えてしまうのです。

ですから60歳以降は、在職老齢年金によって年金が減り始める基準だけでなく、健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療の自己負担が上がる基準にも、注意した方が良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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