12月になり、翌年の株式相場見通しが証券・投資銀行各社から発表になりました。
2020年予想は強気な見通しが目立ち、今の水準から2割近く値上がりする見通しもあります。
強気派、弱気派に分かれるのはいつものことながら、多くの予想に共通したのが「前半勝負」です。
その理由を検証すると、相場の波をつかめるヒントが見えてきました。

目次
相場の波をつかむヒント
日本にとって2020年はオリンピックの年です。
では世界にとって、株式相場にとって、何がインフルエンサー(影響を及ぼすイベント)となるでしょうか。
それらインフルエンサーが注目される時期が、相場の波の天井であり底でもあります。
まずは、証券・投資銀行各社の相場見通しを見てみましょう。
証券・投資銀行各社の2020年株式相場見通し
米中貿易摩擦の収束感、低金利環境の継続といった「適温相場」が想定のベースとなっており、日経平均の上値は2万5,000円を越える見通しが大半となっています。
中でも野村證券は2万8,000円高値を予想しており、これまで売られていた景気敏感株が買い直されると見ています。
また下値は2万2,000円までの見通しが多く、2019年同様に相場の上下動が少ない相場を予想しています。
ただバンク・オブ・アメリカは2万円割れもあると予想しており、米中対立の再燃に懸念を示しています。
まとめると
良ければ高値+2,000円の2万8,000円
クラッシュすると下値-2,000円の2万円
といった見通しです。
2020年株式相場を取り巻くプラス要因
では上値2万5,000円を越える見通し(プラス要因)は、どこから来るのでしょうか。
(1) 日本相場の出遅れ修正
2019年の世界主要株価指数で、日本株式は最下位だったのです。
年初から12/19までの日経平均株価上昇率は19.2%、TOPIXは16.2%でした。
それに比べ、米国ナスダックは33.9%の上昇、独DAXは25.1%と同期間で比べると日本株式相場は出遅れています。
この「出遅れ感=持たざるリスク」を感じた海外投資家の資金流入が、2019年末になって年初来高値を更新した理由です。

(2) 上場企業の増益見通し
日経平均株価採用企業の1株あたり利益は2018年が1,757円、2019年は▲2.7%減益の1,710円で着地しそうです。(QUICKコンセンサス)
それに比べ、2020年は+6.2%の1,816円が予想されており、企業利益の回復が株高につながる見通しとなっています。
(3) 経済対策の効果出現
12/5に政府が発表した大型経済対策の効果が現れるのが、2020年4、5月頃となりそうです。
消費増税対策の期限切れや、オリンピック景気後退への配慮が、株価を引き上げるかは不明ながら、下支えすることは間違いないでしょう。
2020年株式相場を取り巻くマイナス要因
では下値2万2,000円を下回る見通し(マイナス要因)は、どこから来るのでしょうか。
(1) 先進国の成長率鈍化
国際通貨基金(以下、IMF)が発表した世界経済見通しでは2019年の経済成長は3.0%、2020年は3.4%に回復すると予想しています。
ただ2020年の日本は0.5%と2019年0.9%より鈍化、米国も2.1%と2019年2.4%から鈍化する見通しとなっています。
新興国を中心とした景気回復を予想するものの、新興国は軒並み横ばいか景気鈍化が見込まれています。
(2) 米国大統領選挙の影響
株式相場に影響を与える2020年最大のインフルエンサーは、米国大統領選挙でしょう。
選挙は11/3に行われますが、3/3スーパーチューズデーや9月末から始まるTV討論会など、選挙当日までに紆余曲折があります。
これこそが、2020年の相場の波につながってくるのです。

「春高・秋安」を予想
これらプラス要因、マイナス要因に加え、米国大統領選挙の年は相場がさえない法則(アノマリー)があるのです。
1980年以降10回のうち、米国大統領選挙の年はNYダウ平均上昇率が3.7%、日経平均が-0.2%と抑えられています。
選挙前年のNYダウ15.6%、日経平均9.5%とは大違いです。
また1年のうちでも4月5月が高値となり、11月の選挙前10月に底を打つ法則があります。
以上、現時点で判明しているさまざまな要因を考慮すると、「前半勝負」というキーワードが注目されます。
いま株式運用を実践している方は、桜の咲くころからGW明けの日本企業決算発表までが天井、夏枯れから寒さを感じる10月頃が底、という相場の波をメインシナリオとして考えておきましょう。
これから投資する方は、米国大統領選挙の影響や北朝鮮情勢・イラン情勢が急変し株価が急落することがあれば、日経平均2万2,000円付近をメドに購入を検討してみてはいかがでしょうか。
底を判断する一つの指標は、VIX指数いわゆる恐怖指数です。
「アナリスト」の予想は、あてにならないと言われますが、それを鵜呑みにして売買するのではなく、自身の相場観を持って一つずつのイベント結果を確認しながら、方向修正する基準としてアナリストの予想を参考にしていただければと思います。(執筆者:中野 徹)