総務省が公表しているマイナンバーカードの交付率は、昨年11月1日現在で14.3%でした。
極端に低い普及率の理由は「取得が任意」であることと「カードの利便性が少ないため利用するメリットを感じない」というのが現状ですが、昨年度から政府はマイナンバーカードの積極的な普及拡大に向けた取り組みに本腰を入れ始めています。
ここでは、その制度とマイナンバーカードの普及促進の一環としたポイント還元制度およびカードの利用・活用における主な実施計画などについて述べてみます。
目次
マイナンバー制度とは

「マイナンバー制度」は2016年1月から実施されていますが、マイナンバーとは国民1人ひとりが原則として出生から死亡まで一生変わらない12桁の番号のことです。
また当時は「国民総背番号制」などと揶揄され反対意見も多く聞かれていました。
制度の目的

この制度は何のために導入されるのか、その主な目的を次に挙げていきます。
目的1 行政の効率化:国や地方の行政機関などにおいて、個人情報の入力、転記・照合などの手間を大幅に削減する
目的2 国民の利便性の向上:申請時の添付書類を削減するなど、行政手続きの簡素化を図る
目的3 公平・公正な社会の実現:所得税・贈与税・相続税等の脱税や生活保護の不正受給などを防止する
マイナンバーが活用される分野
・ 年金・医療・福祉等の社会保障
・ 所得税や贈与税などの税金
・ 大災害の発生に関して、被災者台帳の作成や被災者支援金などの災害対策
マイナンバーカードで何が変わるのか
マイナンバーカードには「通知カード」と「個人番号カード」の2種類があります。

通知カード
個人番号、氏名・住所・生年月日・性別が記載された紙製のカードです。
このカードは4年前に市区町村から送付されており「個人番号カード」取得者以外は手元に有るはずです。
本人確認を要する書類の場合、「通知カード」の他に運転免許証又は旅券(パスポート)など顔写真付き身分証明書を添付しなければなりません。
また無い場合は健康保険証、公共料金の領収書、年金手帳など2つ以上の書類が必要となります。
個人番号カード
表面が氏名・住所・生年月日・性別および顔写真、裏面が個人番号記載のICチップ付きプラスチック製のカードです。
国が取得を促しているカードは、まさにこれで、このカードのことを「マイナンバーカード」と呼んでいます。
「個人番号カード(以下マイナンバーカード)」は、これ1枚用意すれば事足ります。
但し、このカードは定期的な更新が必要で、20歳以上が10年ごと、20歳未満が5年ごとと定められています。

決済額の25%還元「マイナポイント」事業
現在は、キャッシュレス・ポイント還元事業による支援の最中(2020年6月まで)です。
政府は、マイナンバーの利用・活用の促進およびマイナンバーカードの更なる普及、それをベースとしたデジタル社会の構築を施策および消費促進の一環として、今年9月から翌年3月までの期間限定で実施します。
「マイナポイント」の詳細は現在検討中としていますが、明らかになっていることは、2万円を上限とした買い物をキャッシュレスカード等で支払った場合、5,000円分のポイントが付く還元率25%のお得な制度です。
キャッシュレス決済の参加店舗と決済事業者は未だ決まっていませんが、順次募集していく予定です。
ポイントの利用については、決済事業者発行のスマホ決済アプリやキャッシュレスカード等にカードの個人認証データを紐付けるための登録をする必要があります。
登録後は、スマホによるQRコード決済やPC上でのオンラインショップなどでポイント利用が可能ですが、カードを持ち歩く必要はありません。
「マイナポイント」を利用するには
「マイナポイント」を利用するためには、まず、このカードを取得することです。
(1)「マイナンバーカード」を取得する

取得手続きは、カード申請とカード上のICチップ内に「電子証明書(本人であることを公的に証明する印鑑証明書の代用)」の登録が必要で、住所地の市区町村が窓口となります。
(2)「マイキーID」を設定する

カード取得後の手続きは、スマホやパソコンからマイキーIDを設定します。
【スマホの場合】
1. 「マイキープラットフォームアプリ」と「公的個人認証サービスアプリ(JPKI利用ソフト)」を事前にインストールしておきます。
2. 「マイキープラットフォーム」を起動し、「マイキーID」の設定から「利用者証明用電子証明書パスワード入力」をクリックし、このカードをスマホで読み取り、カード申請時または受取時に設定した4桁の暗証番号を入力します。
3. 「マイキーID」および「パスワード」を自動的に付与と任意設定のどちらかを選択し、設定はこれで終了です。
IDとパスワードは後で変更も可能です。
但し、スマホはマイナンバーカードの読み取りが可能な機種(一覧表で確認可能)のみが対象となります。
具体的には、NFC/おサイフケータイ機能やBluetooth機能等のロックを解除する必要があります。
「マイナンバーカード」の新機能
マイナンバーカードに健康保険証や診察券などの機能も加わります。
昨年6月に政府のデジタル・ガバメント会議で検討された今後1~2年の間に実施される具体的な項目が公表されています。
一例を挙げると、
・ 診察券
・ おくすり手帳
・ ハローワークカード
・ ジョブカード
・ 図書館カード
・ 学生証や社員証
などの機能が加わります。
期待できる効果について、健康保険証を例に挙げて見ると、
・ 医療機関や薬局で本人確認とオンラインで保険資格の確認が可能となる
・ 受診や服薬履歴などの情報を医療機関等で共有が可能となる
・ 事務の効率化やコストの削減に加え診療品質の向上が期待できる
などがあります。
実施については、各医療機関に対して読み取り端末の設置やシステムなどの導入に伴う整備コスト面などの課題もありますが、政府は金銭的支援も含めた対応により来年3月からの実施を予定しています。
個人情報漏洩などのリスクに対する対策
「マイナンバーカード」には多くの個人情報が集約されるため、紛失・盗難・詐欺行為などによる情報漏洩および悪用による「なりすまし被害」等のリスクが当然予想されます。
これらのセキュリティー対策は、マイナンバー等の個人情報を分野毎に暗号化する分散管理、アクセス制御、24時間365日の緊急対応、監視・監督、違反者への罰則強化等の体制を整えることでカード利用の安全性を確保するとしています。
利用側は、クレジトカードと同様、カードの紛失などに気が付かないことがないよう「カードの保管管理を徹底すること」や「個人番号を他人等に絶対に教えないこと」などの心がけも必要です。
「マイナンバーカード」取得の詳細については住民票のある市区町村に、「マイナポイント」や「マイキーID」の設定方法については、「マイナンバーカード総合サイト」で確認することをおすすめします。(執筆者:小林 仁志)