労働保険(労災保険、雇用保険)などから支給される各種の保険給付の給付水準を決める際には、「毎月勤労統計」という統計調査を基準にしています。

この毎月勤労統計を作成する時の調査において、厚生労働省が2004年頃から不正をしていたことが2019年1月頃に発覚しました。

また、不正調査の影響により、2004年7月以降に支給された労働保険などの保険給付が過小支給になっていたことも明らかになりました。

この時点で厚生労働省は、過小支給になっている可能性がある方は約1,973万人、また追加給付の総額は約5,375億円に達すると発表していました。

追加給付はすでに始まっていますが、このように規模が大きいため、すべての給付が終わるまでにはかなりの時間がかかりそうです。

該当する可能性のある方は、厚生労働省から追加給付のお知らせが届くのを気長に待つしかありません。

社会保障を受けるのに「住所変更届」提出が必要・不要なケース

厚生労働省は住民基本台帳データを活用して現住所を把握

従業員が雇用保険に加入する際に勤務先がハローワークに提出する資格取得届には、氏名(フリガナ)、生年月日、性別を記入する欄はありますが、住所を記入する欄はありません

また、労災保険は従業員が個人単位で加入するのではなく、労災保険が適用される事業所単位で加入するため、資格取得届というものがありません。

そのため、追加給付が始まったというニュースを初めて聞いた時、

「厚生労働省はどのような方法で追加給付が必要な方の現住所を把握しているのか」

という疑問が湧いてきました。

これについて調べてみると、資格取得届には住所を記入しませんが、労働保険の保険給付を請求する書類には各人の住所を記入します。

この書類が提出された際に登録した住所の電子データと、住民基本台帳データの住所履歴を照らし合わせ、現住所を把握しているようです。

保険給付を請求した時点と住所が変わっていても、引っ越しをした際に市区町村の窓口で住所変更の手続きをしていれば、厚生労働省から追加給付のお知らせが届きます

ただし、次のようなケースについては、追加給付のお知らせが届かない可能性があるそうです。

・ 2010年10月4日以前に、氏名を変更した場合

・ 住民票に記載されている住所と異なるところに、一時的に滞在している場合

・ 海外転出届を市区町村の窓口に提出したため、住民票が除票されている場合

・ 労働保険などの保険給付を受給中、または受給した後に亡くなった方の遺族

そのため、厚生労働省は、これらに該当する方に対して「追加給付に係る住所情報等登録フォーム」に住所などを登録してくださいと、呼びかけています。

追加給付に係る住所情報等登録フォーム

≪画像元:厚生労働省

労働保険の保険給付を受給していると、住所変更の手続きが必要になる

雇用保険の資格取得届は上記のように住所を記入する欄がないため、雇用保険に加入している方が住所を変更した際に、勤務先は特に書類を提出する義務はありません。

ただし、近年は資格取得届の中に被保険者番号(転職先でも使い続ける各人に1つだけ割り当てられた番号)だけではなく、マイナンバーも記入します。

この両者を紐付けすると、ハローワークは雇用保険に加入している方の現住所を以前より把握しやすくなります

そのため、雇用保険に関しては、住所変更に関する書類を提出する必要はもはやないのだと思いました。

しかし、雇用保険の基本手当いわゆる

失業手当を受給するための手続きを行って、「受給資格者証」の交付を受けた後に住所を変更する場合には、「受給資格者氏名・住所等変更届」をハローワークに提出する

必要があります。

また、

労災保険から支給される年金を受給している方が住所を変更する場合には、「年金たる保険給付の受給権者の住所・氏名・年金の払渡金融機関等変更届」を労働基準監督署に提出する

必要があります。

このように労働保険の保険給付を受給している方は、マイナンバーを記入するようになった後も住所変更に関する書類を提出する必要があるようです。

基礎年金番号とマイナンバーの紐付けによって住所変更を省略できる

基礎年金番号

≪画像元:日本年金機構

従業員が社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入する際に、勤務先が年金事務所などに提出する資格取得届には住所を記入する欄があります。

また、配偶者を健康保険の被扶養者や国民年金の第3号被保険者にするために提出する「被扶養者(異動)届・第3号被保険者関係届」にも住所を記入する欄があります。

そのため、

社会保険に加入している方やその被扶養配偶者が住所を変更した際に、勤務先は「被保険者住所変更届・国民年金第3号被保険者住所変更届」を年金事務所などに提出する必要があります

もしこの書類が提出されていない場合、「ねんきん定期便」や年金の請求に必要な書類などが自宅に届かない可能性があります。

ただし、基礎年金番号(すべての公的年金で共通して使用する各人に1つだけ割り当てられた番号)とマイナンバーが紐付けされている場合には、原則として住所変更に関する書類を提出する必要がなくなりました。

そのため、マイナンバーを持っていない海外居住者や短期在留外国人を雇用していなければ、住所変更に関する書類を提出する機会はかなり減ったと思われます。

なお、厚生年金保険に加入する年齢の上限は現在は70歳になっているため、これ以降に社会保険に加入する要件を満たした場合、健康保険だけに加入します。

こういった健康保険にのみ加入している方、または健康保険組合が運営する組合健保に加入している方は、基礎年金番号とマイナンバーが紐付けされていても、健康保険の住所変更に関する書類を提出しなければならない場合があります

また、単身赴任によって住民票と異なる住所に住んでいるため、赴任先の住所に「ねんきん定期便」などを届けて欲しいという場合があります。

このような場合に住所変更に関する書類を提出すると赴任先の住所に送付されるようになるので、義務がなくても提出することをおススメします。(執筆者:木村 公司)