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揺らぐ「中央銀行の独立性」 日・米・欧・新興国でも政治介入が進む理由を解説

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揺らぐ「中央銀行の独立性」 日・米・欧・新興国でも政治介入が進む理由を解説

近年、中央銀行の独立性が揺らいでいます。

今回はその理由について解説します。

政府から圧力を受ける中央銀行

FRB

米連邦準備理事会(FRB)は、2019年に7月から3会合連続で利下げを行いました。

これは、表向きは景気が悪くなってしまう前に予防的に利下げを行った、ということになっています。

確かに、この3回の利下げによって世界的に株式市場は持ち直しました。

しかし、米国の物価や雇用関連の統計を見る限り、3会合連続で利下げをする必要性があったのかは疑問です。

景気下支えのための予防的利下げという側面があったのは間違いないですが、それを上回るトランプ政権からの利下げ圧力があったのは想像に難くありません

他にも、トルコにおいては、エルドアン大統領が利下げをしない中央銀行にしびれを切らし、中央銀行の総裁を更迭し、利下げを行わせるといった暴挙にまで及んでいる次第です。

なぜ中央銀行の独立性が揺らいでいるのか

政府が中央銀行の独立性を無視するような行為に及んでいる理由は、一言でいえば政府による中央銀行への信頼が薄らいでいるということです。

理由1: 金融危機を抑え込むことができなかった

事の発端は、2008年に起こった世界的な金融危機です

金融危機が起こった当初は、日欧ないし新興国では、「米国だけの問題」と対岸の火事として油断していました。

しかし結局は世界的な危機にまで発展し、震源国の米国はもちろん、日欧、新興国の中央銀行が危機を抑え込むことができなかったことが、政府からの信頼を失った一因になっています。

理由2: 消費者物価上昇目標を達成できていない

また、近年は各国・地域の中央銀行は、金融政策にインフレターゲティングを導入していることです。

従来は物価見通しなどについても曖昧な表現をしており、結果が厳しく問われることは少なかったのです。

しかし近年は、先進国中央銀行は消費者物価上昇率目標を2%程度と明確に定めている一方で、大規模な金融緩和を長年続けても目標を達成できていません

このことに対しても、政府は大きな不満をもっているのです。

政府と中央銀行が手を取り合うことが期待される

金融政策で手を取り合うイメージ

中央銀行の最大の使命は、物価の安定です

世界金融危機以降、各国中央銀行は金融緩和を行い、景気の下支えをしつつ、低下する物価を何とか上向けようと必死に政策運営をしてきました。

しかし、金融危機から10年以上が経過したにもかかわらず物価目標を達成できていないことからも分かるように、中央銀行の力だけでは景気を上向かせたり物価目標を達成したりすることは不可能なのです

つまり、中央銀行にはそこまでの力も能力もないことを、政府をはじめ国民全体が理解することが大切です。

換言すれば、現在は政府や市場による中央銀行への期待値が高すぎるということです。

今後は、中央銀行の政策頼みにならず、政府による規制緩和や財政出動などを組み合わせて、政府と中央銀行が手を取り合って経済成長の後押しをしてくれることを望むばかりです。(執筆者:土井 良宣)

《土井 良宣》
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土井 良宣

元日本銀行員で、現在独立系のファイナンシャルプランナーとして活躍しています。一般的なファイナンシャルプランナーと異なり、マクロ経済分析をベースとした運用アドバイスを独立した立場から行っています。また、相続や保険・家計の見直しのご相談も承っております。 寄稿者にメッセージを送る

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