親が亡くなり相続が発生した際に、親と同居していた長男などの相続人が遺産を独り占めしようとするケースが多々あります。

放っておくと、親の預貯金の明細を開示しないで勝手に使い込んでしまったり、自分名義の口座に移し替えてしまったりするケースも発生します。

遺産を独り占めされそうな時に、どのように対処すればよいのでしょうか。

今回は、長男などが親の遺産を独り占めしようした際の対処方法を、弁護士がパターン別に解説していきます。

「遺産の独占」 を目論む相続人がいる5つのケースと対処法

ケース1:遺産を使い込む可能性がある場合

遺産相続が起こった際に、長男などの同居人が「遺産は全部自分がもらう」などと言って、他の相続人に分け与えようとしないケースは少なくありません。

そのような時に放っておくと、長男が親の遺産を勝手に使ってしまう可能性があります。

遺産の使いこみが心配な場合には、次のように対応しましょう。

対処法:金融機関に報告して口座を凍結してもらう

まずは、親名義の預金を守る必要があります。

放っておくと

長男が勝手に親の預貯金を出金したり、自分名義の口座に振り込んだりしてしまう

可能性があるためです。

人が死亡すると、金融機関は口座を凍結させて、出金や振込などの取引をできないようにするものです。

そこで、親が死亡したらすぐに親名義の預金の預け先金融機関に通知して、口座を凍結してもらいましょう。

その際に

「本人が死亡したが、長男ともめていて、長男が勝手に預貯金を引き出す可能性があるから出金を止めてほしい」

などと事情も告げておくと、金融機関も気をつけて対応してくれるケースがあります。

ケース2:遺産の内容を開示しない場合

相続が発生した際に、遺産分割協議を開始しようとしても同居していた相続人が親の預貯金などの財産内容を開示しないケースもよくあります。

そのような場合には、次のように対応しましょう。

対処法:金融機関に行って「残高証明書」「取引明細書」を取得する

被相続人の預貯金通帳を見せてもらえない場合には、直接取引先の金融機関に行って「残高証明書」や「取引明細書」を発行してもらいましょう。

「残高証明書」とは

残高証明書」とは、ある時点における預貯金の残高が記載されている書類です。

「相続開始時点」など日付を指定すると、その日の残高を明らかにしてもらうことができます。

「残高証明書」を取り寄せると、相続開始時点における残高などを知ることができるので、遺産としていくらの金額があるのかがわかります。

「取引明細書」とは

取引明細書」とは<、一定期間における取引の内容が全部記載されている書類です。

たとえば「2018年7月1日から2019年9月10日まで取引明細書」などを発行してもらえば、その期間に行われた入出金や振込などの履歴がわかります。

相続開始前後の「取引明細書」を取得すると、同居の相続人によるものと思われる使途不明な出金や振込状況などを確認できます。

一般的には「残高証明書」より「取引明細書」を取得した方が多くの情報を入手できるので、

使いこみなどが疑われるのであれば、相続開始前後の数か月~数年にわたる明細書を出してもらう

のがよいでしょう。

「残高証明書」「取引明細書」を取得する方法

預貯金の「残高証明書」や「取引明細書」を取得したい場合には、預貯金口座のある金融機関に行き、相続人との関係を示す戸籍謄本等の資料を示して申請する必要があります。

金融機関によっては、郵送で対応してくれる場合もあります。

また、「取引明細書」の場合、必要な期間も指定しなければいけないので注意が必要です。

事前にどのくらいの期間の分が必要かを確認してから行きましょう

預貯金口座がたくさんあって個別に回るのが大変な場合には、弁護士に各金融機関における取引明細書等の取得を依頼することも可能

です。

金融機関に行き、申請する

ケース3:既に遺産を使い込まれた場合

相続開始後に親名義の預金口座を凍結してもらっても、既に同居の相続人が預貯金を使い込んでいるケースもあります。

その場合には、使い込まれた遺産を取り戻す必要があります。

遺産を取り戻すには、

「不当利得返還請求」や「不法行為にもとづく損害賠償請求」

を行います。

対処法1:遺産分割協議では解決できない

遺産相続トラブルというと「遺産分割協議」や「遺産分割調停」によって解決できるイメージがありますが、奪われた遺産の取り戻しは遺産分割手続きの中ではできません

従って、不当利得返還請求や損害賠償請求をしなければならないでしょう。

対処法2:訴訟が必要になるケースもある

話し合いで遺産を任意に返してもらえない場合、裁判所で「不当利得返還請求訴訟」や「損害賠償請求訴訟」を提起しないと解決できません

自分たちだけでは交渉や裁判が困難な場合、弁護士に依頼して早めに取り戻しを行うことをおすすめします。

ケース4:遺産分割協議に応じない場合

遺産分割協議書

親の遺産を分けようとして同居の長男などに遺産分割協議を持ちかけても、

「遺産は全部長男である自分がもらうので、お前たちに譲る物はない」

などと言われ、対応してもらえないケースがあります。

このように、遺産分割の話し合いに応じてもらえない場合には、家庭裁判所で「遺産分割調停」を行いましょう。

調停を申し立てると、家庭裁判所から相手に話し合いのための呼出状が届きます。

多くの人は、家庭裁判所から呼出状が届いたら、その日に出頭してくるものです。

相手が来たら、裁判所で話し合いを進められます。

裁判所からの呼出状が届いても相手が無視し続けると、最終的に調停が不成立となって「審判」になります

審判では、審判官が法定相続分に従って遺産分割の方法を指定します。

相手の同意がなくても強制的に遺産が法定相続割合によって分けられる

ので、遺産を取得できるでしょう。

ただし、その前に使い込まれてしまったら取り戻しができなくなるので、先に説明したように事前に銀行口座などを凍結させておく必要があります。

ケース5:遺言書を偽造された可能性がある場合

長男などの同居の親族が遺産を独り占めしようとするとき「遺言書」を持ち出されるケースがよくあります。

「長男へすべての遺産を相続させる」などと書かれている親の遺言書です。

しかし、その遺言書が偽物である可能性も考えなければなりません。

・ 明らかに筆跡が違う

・ 親が認知症になってからの日付で遺言書が作成されている

・ 親が生前話していた内容と異なる

などの事情があれば、同居の長男が遺言書を勝手に作成したり書き換えたりしている可能性も考えられます。

遺言書が怪しい場合には、長男に対し

「遺言無効確認調停」や「遺言無効確認訴訟」を起こして遺言書が無効であることを確定する

必要があります。

遺言書が無効と決まったら、その後は遺産分割協議や調停を行って遺産分割の方法を決定していきます

状況に応じた適切な対応をとる

ひと言で「遺産を独り占めされそう」とは言っても、具体的な状況はケースによってさまざまです。

それぞれ対処方法も異なるので、状況に応じた適切な対応をとらねばなりません。

どのように対処するのが最適か分からない場合には、弁護士に相談するとアドバイスをもらえますし、必要な手続きを任せることも可能です。

遺産は、いったん使い込まれると後からの取り戻しが困難になるケースが多々あります。

独り占め問題に困った際には、早めに弁護士に相談してみてください。(執筆者:松村 茉里)