老後はほとんどの人にやってきますが、その頃の体調や家庭状況などわかりようもありませんから、心配し始めるとキリがありません。
とはいえ、2016年の内閣府の調査では65歳以上の世帯は、単独世帯と夫婦のみ世帯が全体の48.4%を占めており、年々おひとりさま率が高まっています。
1人の財布でやりくりしていく老後を早めに思い描いておくことは、不安を解消する手立ての1つといえるでしょう。
そこで今回と次回の2回に分けて、おひとりさまのシニア生活の収入と支出にスポットをあてて、豊かな老後の助けになる方法をレポートいたします。
目次
収入の柱、自分の年金を知る

平成29年8月1日から、資格期間が10年以上あれば老齢年金を受け取れるようになりました。
仕事をやめればほとんどの方は、年金が収入の主軸になるでしょうから、受給額を把握することは漠然とした不安から逃れる第一歩です。
おおよその金額は毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」でわかるので、必ず確認してください。
0.5%減るが、早くもらえる「繰り上げ」
年金は現在ほとんどの方は、65歳から受給しますが、希望すれば受給期間を繰り上げることも繰り下げられます。
ただし、60歳から64歳11か月までの間に受け取る繰り上げでは、1か月早く受け取るごとに受給額が0.5%ずつ少なくなります。
銀行よりも高金利 0.7%増額される「繰り下げ」
一方、66歳から70歳までの間で繰り下げて請求すれば、最大42%増額されます。
繰り下げた月数に応じて0.7%ずつ増えるのですから、金利が低迷している現在、銀行に預金しているよりよほどお得です。
しかしながら、総受給額はどちらを選択すれば1番多いのか、という気になる問題への回答は寿命を終えてからしかわかりません。
体調や働き方、経済状態などを総合して、自分にとってベストな時期を見極めることこそが大切といえるでしょう。
年金ネットのシミュレーションでリアル家計を想像する
年金の受給時期は、1か月単位で選択できます。
自分に1番無理のない時期をみつけるために、日本年金機構の「年金ネット」を活用しましょう。
「年金ネット」に登録しておけば、パソコンやスマートフォンから自分の年金額をシミュレーションできます。
繰り上げて受給すれば生活費はいくらになるのか、繰り下げればどのくらい増額されるのか、自分の受給額が計算できるため、生活設計が立てやすくなります。
繰り上げにしても、繰り下げにしても、いったん受給額が決まればその金額は一生かわりません。
他にもデメリットになり得ることがあるので、十分に各項目を検討してください。
また年金からは、所得税や住民税などの税金、介護保険料や国民健康保険料もしくは後期高齢者医療保険料などの保険料が差し引かれます。
シミュレーションした満額は入金されませんので、ご注意ください。
いつ辞めるか、辞め時を考える

会社員の人にとって、老後の大きな支えになるのが退職金です。
退職金制度があるかどうか、まずは会社にお問い合わせください。
ここで注意すべきことは、退職金にも所得税と住民税がかかることです。
ただし退職金には、以下のように勤続年数に応じて退職所得控除という優遇制度があります。

表からわかるように、勤続20年以上になると控除額は30万円アップされます。
要は体調が許すなら、20年以上働いた方が税金は安く抑えられるということです。
さらに言えば、勤続年数に1年未満の端数があるときは、たとえ1日でも1年として計算されるため、控除額だけに限っていえば19年11か月で辞めるよりも20年1日で退職した方がお得です。
しかし定期的な収入が入る仕事があるということは、大きな支えになります。
さらに仕事は自分ひとりで行っているわけでもありませんから、周囲との兼ね合いも考えねばなりません。
自分にとっても周りにとっても最も良い選択はいつなのか、退職時期の検討には計算サイトなどのシミュレーションもご活用ください。
フットワークの軽さを武器にしよう
1つの財布でやりくりするおひとりさまの老後は、心許なく不安に感じることがあるかもしれません。
けれども独り身の最大のメリットは、自分が思うままにフットワーク軽く動くことができ、思い立った時にすぐ方向転換することさえも容易なことです。
情報を更新し、今後の暮らしをシミュレーションすることで、未来はより現実的に体感できます。
心豊かな老後を目指しましょう。(執筆者:吉田 りょう)