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年金受給者の確定申告の分岐点 次の確定申告に備えて、保険料の納付者を変更しておく

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年金受給者の確定申告の分岐点 次の確定申告に備えて、保険料の納付者を変更しておく

現在は「年金受給者の確定申告不要制度」があるため、次のような2つの条件を満たした場合には、原則として所得税の確定申告を、やらなくても良いのです。

(1) 公的年金等の収入金額の合計が、年間で400万円以下である

(2) 公的年金等以外の所得が、年間で20万円以下である

また(1) の「公的年金等の収入金額の合計」とは、次のような2つを合算したものです。

【公的年金に該当するもの】

・ 原則65歳から支給される「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」

・ 60~64歳の間に支給される「特別支給の老齢厚生年金」

【公的年金以外のもの】

・ 恩給(普通恩給)

・ 過去の勤務に基づき、使用者であった者から支給される年金

・ 確定給付企業年金契約に基づき、企業年金基金などから支給される年金

ポイント1:公的年金に該当するものだけでなく、公的年金以外のものを含めて、条件を満たすのかを判定する点

ポイント2:障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金など)や、遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金など)は、含める必要がない点

この理由として障害年金や遺族年金は、原則として非課税になるため、これらからは所得税が源泉徴収されていないからです。

なお外国の公的年金からも、所得税が源泉徴収されておりませんが、こういった年金を受給している方は、確定申告が必要です。

確定申告を、やらなくても良い場合

所得税が源泉徴収される基準は、65歳を境にして金額が変わる

年金受給者の確定申告不要制度の条件を満たす方が、所得税の確定申告をする必要がないのは、老齢基礎年金や老齢厚生年金などの老齢年金からは、国が計算した所得税が源泉徴収されているからです。

ただ65歳未満の方については、老齢年金の合計額が108万円以下であれば、また65歳以上の方については、老齢年金の合計額が158万円以下であれば、所得税は源泉徴収されません。

この理由について理解するには、老齢年金に課税される所得税が、どのような手順で算出されるのかを、知っておく必要がありますが、大まかに説明すると次のようになります。

(A) 年間(1~12月) に支払われる老齢年金の合計額-公的年金等控除額=公的年金等の雑所得

(B) 公的年金等の雑所得-所得控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除、障害者控除など)の合計額=課税所得

(C) 課税所得 × 税率(5~45%)-税額控除(住宅ローン控除など)の合計額=所得税

以上のようになりますが、(A) の中にある「公的年金等控除額」は、老齢年金の合計額に比例して増えていきます

ただ65歳未満の最低額は60万円、65歳以上の最低額は110万円になっております。

また(B) の中にある所得控除のうち、誰でも受けられる基礎控除は、一部の高額所得者を除くと、48万円になっております。

そのため65歳未満で、老齢年金の合計額が108万円以下の場合、公的年金等控除額の60万円と、基礎控除の48万円を引くと、(B) の中の課税所得がゼロになります。

また65歳以上で、老齢年金の合計額が158万円以下の場合、公的年金等控除額の110万円と、基礎控除の48万円を引くと、(B) の中の課税所得がゼロになります。

そのためこれらの条件を満たす方には、所得税が課税されないため、老齢年金からは所得税が源泉徴収されません

所得控除と税額控除の種類によっては、確定申告が必要になる

老齢年金から源泉徴収する所得税を、国が計算する際には、(B) の中の所得控除の有無や金額を、きちんと把握しておく必要があります

そのため国は老齢年金の合計額が、上記の源泉徴収の基準を超えている方に、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」という書類を送付し、配偶者の有無や、障害の有無などを確認しています。

例えば配偶者控除の対象になる配偶者がいるのに、この書類を返送しなかった場合、配偶者控除を適用しないで、所得税が計算されてしまいます

こういった方が確定申告をやって、配偶者控除を受けると、所得税が還付される可能性があります

また次のような所得控除で、所得税の還付を受けるには、確定申告をする必要があります。

・ 医療費控除(一定額以上の医療費の支払いがある場合)

・ 生命保険料控除(生命保険の保険料を支払っている場合)

・ 地震保険料控除(地震保険の保険料を支払っている場合)

・ 雑損控除(災害、盗難、横領によって、住宅などに損害を受けた場合)

要するに(B) の中の所得控除のうち、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の中に記入欄がない所得控除がある方は、確定申告をやってみる価値があるのです。

また(C) の中の税額控除も、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の中に記入欄がないため、例えば住宅ローンが残っている方は、確定申告をやってみる価値があります

それに加えて確定給付企業年金契約に基づき、企業年金基金などから支給される年金を受給している方も、確定申告をやった方が良いと思います。

この理由として企業年金基金などから支給される年金は、配偶者の有無や、障害の有無などにかかわらず、一律で7.6575%の所得税が、源泉徴収されているからです。

つまり所得控除を考慮しないで、所得税が算出されているため、確定申告をすれば、所得税が還付される可能性があります。

納付書や口座振替で納付すると、社会保険料控除を有効に活用できる

社会保険料控除を 有効に活用しよう

65歳以上で老齢年金の合計額が158万円以下の方は、上記のように公的年金等控除額と基礎控除を引いた段階で、課税所得がゼロになります

そのためこういった方が、他の所得控除を受けられる条件を満たしても、節税のために使えないため、無駄になってしまいます

節税のために使えない場合

例えば公的年金等控除額と基礎控除だけで、課税所得がゼロになっている方の老齢年金から、後期高齢者医療の保険料が源泉徴収されていると、無駄になってしまう所得控除が発生します。

この理由として後期高齢者医療の保険料は、国民健康保険や国民年金の保険料と同じように、その全額が社会保険料控除の対象になるからです。

老齢年金から保険料が源泉徴収されている場合

また老齢年金から保険料が源泉徴収されている場合には、その年金受給者の所得から、保険料の金額を引く必要があるからです。

そこで同居する家族の中に、公的年金等控除額と基礎控除を引いた段階で、課税所得がゼロにならない方がいる場合には、老齢年金からの源泉徴収を止めて、その家族名義の預貯金口座からの口座振替で、後期高齢者医療の保険料を納付します

これにより同居する家族が、社会保険料控除を受けられるため、今までより節税になる可能性があります。

後期高齢者医療の保険料だけでなく、国民健康保険や国民年金の保険料についても、同居する家族が納付書や、口座振替で納付すれば、その家族が社会保険料控除を受けられます

このように社会保険料控除は、他の所得控除と違って、節税のために柔軟に活用できます。

そのため無駄になっている社会保険料控除がある場合には、次の確定申告に備えて、保険料の納付者を変更しておきましょう。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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