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70歳まで働く時代になっても、年金支給は68歳からになる。

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70歳まで働く時代になっても、年金支給は68歳からになる。

公的年金の保険料を納付した期間や、保険料の納付を免除された期間などを合算した期間が、原則10年以上あって、受給資格期間を満たしている場合、65歳になると国民年金から、「老齢基礎年金」が支給されます。

また受給資格期間を満たしたうえで、厚生年金保険の加入期間が1か月以上ある場合、65歳になると厚生年金保険から、「老齢厚生年金」が支給されます。

このように老齢基礎年金と老齢厚生年金という、2つの老齢年金の支給開始年齢は、現状では65歳になっています。

ただ後者の老齢厚生年金については、もともとは60歳だった支給開始年齢を、65歳に引き上げしている最中になります。

そのため受給資格期間を満たしたうえで、厚生年金保険の加入期間が1年以上ある方は、65歳になる前に支給される老齢厚生年金、いわゆる「特別支給の老齢厚生年金」を、60~64歳から受給できる場合があります。

この特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は、性別と生年月日で変わりますが、具体的には次のようになっております。

【男性の引き上げスケジュール】

1953年4月1日以前生まれ:60歳

1953年4月2日~1955年4月1日生まれ:61歳

1955年4月2日~1957年4月1日生まれ:62歳

1957年4月2日~1959年4月1日生まれ:63歳

1959年4月2日~1961年4月1日生まれ:64歳

1961年4月2日以降生まれ:65歳

【女性の引き上げスケジュール】

1958年4月1日以前生まれ:60歳

1958年4月2日~1960年4月1日生まれ:61歳

1960年4月2日~1962年4月1日生まれ:62歳

1962年4月2日~1964年4月1日生まれ:63歳

1964年4月2日~1966年4月1日生まれ:64歳

1966年4月2日以降生まれ:65歳

70歳までの就業機会を確保するのが、企業の努力義務になっていく

70歳までの就業機会を確保

特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は、段階的に引き上げされているため、60歳から65歳までの間に、無年金の期間が生じるようになりました。

またこの無年金の期間に失業すると、収入がなくなってしまう可能性があります。

そこで政府は上記のような引き上げが始まる前に、従来は「努力義務(努力が義務付けられているが、法的拘束力や罰則はない)」であった、高年齢者雇用確保措置の実施を、高年齢者雇用安定法を改正して、「義務」にしました。

なお高年齢者雇用確保措置は、次のような3種類に分かれており、企業はこの中のいずれかを、実施する必要があります。

・ 65歳までの定年の引き上げ

・ 継続雇用制度(例えば再雇用制度、勤務延長制度)の導入

・ 定年の定めの廃止

男性はあと数年で引き上げが完了するため、そろそろ次の展開があるのではないかと思っていたら、70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする、高年齢者雇用安定法などの改正案を、政府が2020年2月4日に閣議決定しました。

この改正案の特徴としては、上記のような3つの選択肢に加え、

・ 起業した方に業務委託する

・ 自社が関わっている社会貢献活動へ参加させる


など、雇用以外の選択肢も認めている点です。

また改正案が国会で可決されても、現状では努力義務にすぎませんが、数年後に老齢年金の支給開始年齢が70歳に引き上げされ、これが実施される際に義務化されると、予想する方がいるようです。

ただ個人的には次のような理由により、70歳まで働く時代が来ても、老齢年金の支給開始年齢は68歳だと予想しております。

繰下げ受給を活用すると、現在と同水準の老齢年金を受給できる

2019年8月27日に厚生労働省から、5年に1度のペースで実施されている、年金財政検証の結果が公表されました。

この年金財政検証の結果について詳しく知りたい方は、厚生労働省のウェブサイトの中にある、「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」というページを参照してください。

今回の年金財政検証で特徴的だったのは、60歳まで働いて65歳で老齢年金を受給する現在の高齢者と、同水準の老齢年金を受給するには、何歳まで働けば良いのかが試算された点です。

それによると

・ 現在50歳の方は66歳
・ 現在40歳の方は67歳2か月
・ 現在30歳の方は68歳4か月
・ 現在20歳の方は68歳9か月

という結果でした。


この試算は年金財政検証で示された6つのシナリオのうち、2番目に悲観的なものなので、もっと楽観的なシナリオであれば、これより年齢が若くなります。

ただ受給できる老齢厚生年金を増やすために、60歳以降も厚生年金保険に加入する必要があります。

また老齢年金の支給開始を1か月繰下げる(遅くする)と、65歳から受給できる金額に対して、0.7%の割合で老齢年金が増えていく、「繰下げ受給」を利用する必要があります。

自助努力で老後に差がつく

財務省は支給開始年齢の改正案で、68歳という目安を示している

年金財政検証の結果が公表される約1年前の2018月4月11日に、老齢年金の支給開始年齢に関する、興味深いニュースがありました。

それは財務省が、老齢厚生年金の支給開始を現在の65歳から、68歳に引き上げする案を、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会の財政制度分科会に、提示したというものです。

この案について詳しく知りたい方は、財務省の「社会保障について(pdf)」という資料を参照してください。

厚生労働省が年金財政検証の中で示したのは、

各人が自主的に支給開始年齢を、繰下げした場合の試算になるため、現在の高齢者より給付水準が下がっても良いのなら、従来通りに65歳から受給できます

それに対して財務省の案は、

老齢厚生年金の支給開始を強制的に、68歳まで引き上げするものなので、もしこの案の通りに法改正されたら、65歳から受給するのは難しくなります

ただ社会保障の改正に関して、厳しい要求が多い財務省が、68歳までの引き上げで良いとした点は、意外な感じがしました。

働けない場合に備え、iDeCoやつみたてNISAで老後資金を準備する

早めに老後資金対策を考える

財務省の案が発表された後に、国民からの反発が起きたため、厚生労働省は火消しに走ったと記憶しております。

しかしその1年後に厚生労働省は、現在の高齢者と同水準の老齢年金を受給するには、現在20~30歳の場合、68歳くらいまで働く必要があるという、財務省の案と似たような試算結果を示しました。

ですから老齢年金の支給開始は、各人の自主的な繰下げにより、または法改正による強制的な引き上げにより、いずれは68歳くらいになると考えています

ただ健康面の問題などで、68歳まで働けない方もおりますし、また68歳になる前に、完全にリタイヤしたいという方もいるはずです。

ですからiDeCo(個人型の確定拠出年金)や、つみたてNISAなどを活用して、早いうちから老後資金を準備しておく必要があると思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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