高齢者社会である日本にとって、厳しい現実のひとつ。
それは、介護問題です。
厚生労働省の発表によると、現在の「要介護(要支援)認定者数」は、656.0万人(平成31年1月末現在)で、日本人口の約18%にも及びます。(参考:[厚生労働省「介護保険事業状況報告の概要(平成31年1月暫定版)」/「2.要介護(要支援)認定者数」](pdf))
もし自分が、あるいは親や家族が介護状態になったらと思うと不安ばかりが募りますね。
介護が始まる世代の「子世代」は、一般的に40~50代の働き盛り世代が多く、介護と仕事の両立も課題のひとつです。
今回は、家族が介護になったときに取得できる「休み」に焦点を絞ってお話したいと思います。
ぜひ知っておいてください。
目次
介護休暇制度
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「介護休暇」は、育児介護休業法が定める「法定休暇」です。
法定休暇とは、法律で定められた休暇で、下記条件を満たす労働者に取得する権利があります。
もし、就業規則に定めがなかったとしても、事業所は申請を断ることができません。
取得条件
【勤務条件】
・ 6か月以上継続雇用されていること
・ 常時介護を必要とする期間が2週間以上の家族がいること
【家族の定義】
平成29年より、この場合の「家族」とは、「配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫」で、「同居・扶養関係」については問われなくなっています。
また、上記以外の者でも事業所が承認することで、「家族」として休暇申請が可能です。
【介護の定義】
この場合の「介護」に、「要介護認定」や「医師の診断書」の有無は問われません。
目安としては、
・ 排泄(はいせつ)
・ 食事
などの日常生活に必要な動作についての「常時介護」が、2週間以上継続していることです。(参考:[厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(令和元年12月作成)、10 介護休暇制度P3「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」(pdf)
休暇日数
・ 介護が必要な家族1人につき、1年度5日までで、2人以上の場合は10日
・ 介護休暇は1日単位または半日単位で取得可能
令和3年1月1日からは、介護休暇を1時間単位で取得することが可能となります。
勤務形態や業務内容によっては、半日単位での休暇が困難な場合もあるでしょう。
また、休暇中の有給・無給の扱いについても、各事業所に任されており一概には言えません。
詳しくは各事業所に確認してください。(参考:[厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(令和元年12月作成)、「10 介護休暇制度(pdf)」)
ただ、年間5日程度の休暇では、「病院や施設の説明を聞く」場合や「移動時のつきそい」程度の介護しかできないのではないでしょうか。
長期間と休む必要があるときは、「介護休業」制度を利用するといいでしょう。
介護休業制度
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「介護休業」は、雇用保険の制度です。
雇用保険適用事業所に勤務していて、下記条件を満たす労働者が申請できます。
取得条件
【勤務条件】
・ 1年以上継続して雇用されていること
・ 常時介護を必要とする期間が2週間以上の家族がいること
「家族」「介護」の定義は、前述の「介護休暇」の場合と同様です。
【休業日数】
・ 介護が必要な家族1人につき、雇用期間中通算93日までで、3回まで分割可能
・ 介護休業給付金として休業前賃金の67%が支給される
「介護状態が2週間継続すること」が支給条件ですが、休業日数は2週間以上である必要はありません。
例えば、病院や施設に入るまでの10日間を自宅で介護する場合などは、10日分で申請することができます。(参考:[厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(令和元年12月作成)、「8 介護休業制度(pdf)」)
一括でも分割でも取得できますが、通算日数にも分割数にも上限があります。
例えば、骨折などが治れば介護状態が改善する場合は、有効な手段でしょう。
また、入院までの数週間、あるいは一時退院期間の数日間などに合わせて取得するような使い方も便利です。
しかしながら、長期に渡る「介護と仕事の両立」には向いていません。
その場合は、「介護のための所定労働時間の短縮措置等(選択的措置義務)」を利用するといいでしょう。
介護と仕事の両立が可能になる時短勤務制度
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「介護のための所定労働時間の短縮措置等(選択的措置義務)」とは、「時短」勤務です。
これも、育児介護休業法によって定められたもので、各事業所の就業規則に定めがなくても、労働者からの申請で対応することとされています。
取得条件
「勤務条件」「家族の定義」「介護の定義」は、介護休業の場合と同じです。
【措置内容】
1. 所定労働時間の短縮措置
2. フレックスタイム制度
3. 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
4. 労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度
「所定労働時間の短縮措置」は、時間・日・週単位での調整が可能です。
例えば、
・ デイケアに送る日だけ、午後から出勤にする
・ 曜日によって出勤日と介護日を決める
など、さまざまな状況に対応できます。
この他に、「時間外労働・深夜業」などを制限する措置などがあり、家族の介護を抱える労働者に無理な勤務をさせないよう取り組まれています。
ただし、勤務時間が減った分、相応の収入減は免れません。
民間の介護保険などをうまく使いましょう。(参考:[厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(令和元年12月作成)、14 『事業主が講ずべき措置(所定労働時間の短縮等)』p7対象家族の介護のための所定労働時間の短縮等の措置(pdf))
制度の特性を活用して収入を減らさない
それぞれの休みの違いは、
・ 「介護休業」→ 短期決戦
・ 「介護時短」→ 長期戦
といったところでしょうか。
介護における不安要素のひとつは、「先が見えない」ところにあると思います。
いつまで続くのか、どうなるのか、はっきりとしたことがわからない中で送る、手探りの毎日。
仕事との両立は体力的にも精神的にも大変ですが、休暇や時短をうまく活用して、自分自身が倒れてしまわないように、すこし休めるようにしておくことをおすすめします。(執筆者:仲村 希)