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原油先物価格がマイナス 異例の減少が発生した原因と今後の値動き

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原油先物価格がマイナス 異例の減少が発生した原因と今後の値動き

原油先物価格がマイナスに

4月20日に、ニューヨーク・マーカンタイル取引所に上場しているWTI(ウエスト・テキサス・インターミーディエイト)原油先物価格の終値が、歴史上初めてマイナスとなりました。

通常何か物を買えば、対価としてお金を支払うのが当たり前ですが、価格がマイナスになるということは、そのものを買うとお金がもらえるということです。

なぜこのような異例な現象が生じたのでしょうか。

日経平均先物などと異なる特徴を持つ原油先物

先物とは、ある一定の期日(決済期日)に約束した金額を支払うことで、対象物を手に入れられる取引(契約)のことをいいます。

投資家が投資対象として取引をしている日経平均先物などは、日経平均という実物が存在しないため、お金を払って日経平均を手に入りません

そのため、日経平均先物の決済は、決済期日を迎える前に売却してしまうか、決済期日に差額がある場合は差額分を支払うかまたは受け取るかして決済を行います

一般的な投資家が多く利用する先物取引は、このような日経平均先物のようなものが多く、現物を受け取って決済することは想定されていません。

WTI原油先物は、原油という現物が存在する

先物でも原油は現物がある

決済方法としては、

・ 本来の先物取引同様、期日までの売却

・ 期日において現物を受け取るか


のいずれかになります。

4月20日にマイナス価格になったWTI原油先物は、5月に決済期限を迎えるもので、決済期日が翌日の4月21日というものでした。

つまり、取引できるのは翌日の21日のみということとなり、そのまま売却せずに先物を保有すれば、原油を実際に受け取る必要がありました。

原油を受け取るということは、原油を貯蔵する施設が必要になるうえ、輸送や管理コストも必要になります。

投資家は、

原油の先物取引で利益を上げたいだけで、決して原油が欲しいわけではありません。

そのため、投げ売りが起こり、

マイナス価格

、つまり

お金を払ってでも原油を売却するという行動に出ました


もっとも、通常時は、先物の取引期日が近付けば、実際に原油を受け取りたい企業等が購入するため、マイナスになることはありません。

しかし、足元では、新型コロナウィルスの影響で原油の需要は急減しており、原油の貯蔵施設は満杯に近い状態で、貯蔵コストが通常時の数倍から十数倍にまで跳ね上がっています。

そのため、通常時であれば購入に動くはずの企業等も、貯蔵コストの高止まりで買いに動かなかったため、原油の投げ売りが起こり、価格がマイナスになりました。

同じことが繰り返される可能性に注意

上述した通り、WTI原油先物がマイナスになったのは、新型コロナウィルスにより原油需要が激減したためです。

従って、新型コロナウィルスによる経済活動の停止・停滞状態が緩和されない限りは、原油の需要も盛り上がってこず、原油貯蔵コストは高止まりしたままになるでしょう。

そのため、今のような経済状況が続く限り、決済期日が近付いた原油先物価格が、再度マイナスになることも想定しておく必要があります。(執筆者:土井 良宣)

《土井 良宣》
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土井 良宣

元日本銀行員で、現在独立系のファイナンシャルプランナーとして活躍しています。一般的なファイナンシャルプランナーと異なり、マクロ経済分析をベースとした運用アドバイスを独立した立場から行っています。また、相続や保険・家計の見直しのご相談も承っております。 寄稿者にメッセージを送る

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