新型コロナウィルス感染症の拡大により、新しい学生生活のスタートでもある入学式が中止になるだけでなく、キャンパスは閉鎖されたまま授業の開始や再開が延期される事態が続いています。
また、身近な現実として、学生がいる家庭で生計を支えている親や家族が新型コロナウィルスに感染してしまう、またはコロナ禍によって失職してしまうこともあります。
結果、世帯収入が大きく減少し、家計が急変した家庭もあるかもしれません。
実際に、家計の急変を目の当たりにして今年度の学費を払えるめどが立たず、学校に通い続けることを諦めようかと悩んでいる学生の方も多いようです。
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目次
もし家計が急変したら、大学等の授業料の納付はどうする
大学や専門学校などの学費は高額であることが多く、日本学生支援機構(JASSO)から奨学金を利用している学生の方も多いでしょう。
2016年度の日本学生支援機構による「学生生活調査(pdf)」によると、大学生(昼間部)の約50%、つまり2人に1人は奨学金を利用している結果が報告されています。
家計が急変したとなると、多くの学生は日々の生活はもちろんのこと、学費の支払いにも窮することになります。
そのため、せっかく入学、進級した大学などの学校を続けることを断念してしまう学生も少なからずいます。
実は、ほとんどの大学や専門学校では、家庭の世帯収入が激減して家計が急変した学生に対して、授業料の納付期間の延長や減免などの対応を行っています。
また多くの学生が利用している日本学生支援機構(JASSO)では、やむを得ない事由によって家計が急変した場合の措置があります。
今回の新型コロナウィルス感染症にかかる影響によって世帯収入が減少し、家計が大きく急変した家庭の学生を対象に支給されるのが「給付奨学金」です。
コロナによる家計急変も対象 日本学生支援機構による給付奨学金
JASSO(日本学生支援機構)では、予測できない事由、例えば今回の新型コロナウィルス感染症にかかる影響を受けて家計が急変してしまった学生に対して、急変後の所得の見込みにより一定の要件を満たすことが確認できれば最大で月額7万5,800円が受給できる「給付奨学金」の支援対象になる措置があります。
通常の奨学金の申込受付期間は限られていますが、家計急変の場合は通年で申込を受付けています。
原則として、申込の受付は家計急変の事由発生から3か月以内の申請となります。
2019年1月以降2020年3月以前の場合は、進学(進級)から2か月以内に申請する必要があります。
給付奨学金の申込みは早めに進めるように気を付けましょう。
給付奨学金の対象になる条件とは
給付奨学金の受給対象になる条件は、大きく分けて3つの条件すべてに当てはまることが条件となります。
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条件(1):すでに大学等に在籍していること
家計の急変による給付奨学金の支援は、大学等に在学している方が対象です。
すでに大学等を卒業された方や来春の進学に向けて奨学金の予約をする方は対象ではないので、間違えないようにしましょう。
条件(2):下記4つの該当事由のうち、いずれかに当てはまること
それぞれの事由発生に関する証明書類が必要なので、申請をする前に証明書類を準備しておくとよいでしょう。
事由A: 生計維持者の一方、または両方が死亡した場合
→ 【証明書類】 戸籍謄本(抄本)、もしくは死亡日が記載された住民票
事由B:生計維持者の一方、または両方が事故や病気により、半年以上、就労が困難だった場合
→ 【証明書類】 医師による診断書、および病気休職中であることの証明書
事由C:生計維持者の一方、または両方が失職した場合(非自発的失業の場合に限る)
→ 【証明書類】 雇用保険被保険者離職票、もしくは雇用保険受給資格者証
事由D: 生計維持者が震災、火災、風水害等に被災した場合であって、次のいずれかに該当する場合
(1):上記A~Cのいずれかに該当
(2):被災により、生計維持者の一方、または両方が生死不明、行方不明、就労困難など世帯収入を大きく減少させる事由が発生した
→ 【証明書類】 罹災証明書、および事情書(所定様式)
新型コロナウィルス感染症にかかる影響による家計急変の場合で、事由A~Cのいずれにも該当しない場合は、「事由D:生計維持者が震災、火災、風水害等に被災した場合」に類するものとして受付けられます。
また、今回のコロナショックによって、雇用保険に加入対象ではない自営業者などの生活維持者が失職、あるいは収入減少した場合は、国、および地方公共団体が実施する新型コロナウィルス感染症にかかる影響による収入減少があった方を支援対象とした公的支援の受給証明書などを、罹災証明書の代用書類として提出することができます。
家計急変による給付奨学金の申請をする時には、家計の急変後の収入に関する書類として該当事由発生後の所得証明として給与明細などの提出が求められています。
あわせて、進学資金シミュレーター「給付奨学金シミュレーション(保護者の方向け)」を実施した結果のコピーを申請資料として提出することが必要なので、証明書類とともに準備することを忘れないようにしましょう。
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条件(3):一定以上の学業成績
給付奨学金を受けるには、一定以上の学業成績を修めていることが条件となります。
日頃からの学業成績が適格認定にも関わってくるので、学業には真摯に取り組んでおくことも大切です。
1年次(2019年度秋入学者を含む)の場合は、次の1~3のいずれかに該当する必要がある
1. 高等学校等における評定平均値が3.5以上であり、入学者選抜試験の成績が入学者の上位1/2の範囲に属していること
2. 高等学校卒業程度認定試験の合格者であること
3. 将来、社会で自立し、活躍する目標をもって学業を修める意欲を持ち、学業計画書等により確認できること
2年時以上の場合は、次の1、もしくは2に該当する必要がある
1. 在籍する学部等において、平均成績(GPA)等が上位1/2の範囲に属していること
2. 取得した単位数が標準単位数以上であり、将来、社会で自立し、活躍する目標をもって学業を修める意欲を持ち、学業計画書等により確認できること
参照:日本学生支援機構(pdf)
まずは在籍している大学などの窓口に相談してみましょう
私たちの生活は、新型コロナウィルス感染症の拡大によって、いまだかつてない国難に直面しています。
また、経済も停滞してしまっているため、日常生活はもちろんですがかなり負担となる大学等の高額な学費の支払いにも大きな影を落とし始めています。
しかし、家計急変というピンチのなかにあっても、「給付奨学金」のことを知っていれば大学などに通い続けるチャンスを見いだすことができます。
給付奨学金を利用できる学校は、国、または地方公共団体から対象確認を受けた学校に限られています。
そのため、給付奨学金の申請をする場合は、まず在籍している大学などの窓口に相談することから始めてみましょう。(執筆者:花見 結衣 監修:社会保険労務士 拝野 洋子)