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資産価値ゼロになる危険も!「原油先物価格連動商品」への投資リスク コロナショックが続けば再暴落の可能性

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資産価値ゼロになる危険も!「原油先物価格連動商品」への投資リスク コロナショックが続けば再暴落の可能性

今回は、需給が不安定で値動きが激しくなっている原油市場の注目点とそれに関わる注意点について解説していきたいと思います。

「原油先物価格連動商品」 への投資リスク

WTI原油価格史上初となるマイナスに転じる

2020年4月20日のNY原油先物市場は、新型コロナウイルスの感染拡大により、期近5月限WTI原油先物価格は一時1バレル = マイナス40.32ドルという史上初のマイナス価格に転じました。

この原因は、

・ 供給過多により北米を中心に原油貯蔵スペースの上限が近付きつつあること

・ 取引所が「5月限に限ってはマイナスの価格でも取引可能とすること」を発表したこと

であるとされています。

一般的に「原油は重要なエネルギー資源であることから価値はゼロにならない」という市場原理がありました。

しかし、原油を処理する際には、大量の二酸化炭素等の有害物質が排出されることから、溢れた原油の処理にはコストがかかり、そのコストを売り手が払わなければならないのです。

そのため、このマイナス価格を恐れた機関投資家を中心に原油先物に売り注文が殺到し、価格は史上初となるマイナス圏に突入したのです。

しかし、その後、WTI原油先物価格は反転急上昇し、1バレル = 10ドル台までその価格は戻しました

OPECプラスは協調減産で市場の安定化を図る

このような世界情勢の中、サウジアラビアや非OPEC国で構成されたOPECプラスによる協調減産が決定し、日量で970万バレルの減産で合意に至りました。

しかし、国際エネルギー機関(IEA)によると、いまだに世界全体で日量2,600万バレルの需要減となっているため、先物市場は引き続き不安定な値動きを繰り返しており、これを受けサウジアラビアは5月1日の減産開始を前倒しして減産を開始しました。

OPECプラスは協調減産

原油先物価格に連動するETF・ETNのリスクに注意

NY原油の大口投機玉は、4月21日からの1週間で58万9,388枚の買い越しとなっており、引き続き投機的な売買が繰り返し行われている状態となっています。

この

価格の下落を狙った売買は個人投資家にも広まっており、短期的な値上がりを狙って、原油先物価格と連動するETF(上場投資信託)やETN(上場投資証券)などの有価証券に売買が集中し、マネーゲームの様相を呈している

のです。

しかし、今回の歴史的な原油価格急落を受け、今まで意識されてこなかったリスクが浮き彫りになってきました

引き金となったのは、中国銀行が販売している「原油宝」と呼ばれる原油先物契約に連動する小口の投資商品が、原油価格のマイナス転換を受け一夜にしてマイナス資産となったことです。

通常、有価証券に投資する場合には資産価値がゼロ以下にはなりませんが、

この原油宝は、銀行を通して原油を売買するという仕組みとなっていたために、原油先物価格がマイナスとなったことから資産価値もマイナスとなり、銀行に投資家がマイナス分の保証金を支払わなければならない

可能性が出てきたのです。

これを受け、日本でも原油先物価格に連動するように運用されているETFやETNなどの有価証券の上場廃止・早期償還リスクが意識され始めたのです。

例えば、「原油ブル(2038)」は、東商取原油先物価格にある程度連動するように運用されているETNであり、先物価格が±1%動くと価格が倍連動して上下するという仕組みとなっています。

問題となったのが、今回のように

価格の急変動が生じ、先物価格が50%以上下落してしまった場合、原油ブルは倍下落しマイナス100%となり、資産価値がゼロとなり上場廃止となってしまう可能性がある

ことです。

また、

純資資産総額が極端に少なくなってしまった場合、早期償還となり強制的に現金化されてしまう可能性があるため、ハイリターンが期待できる反面想定外の損失を被る可能性がある

ので注意が必要です。

今回の価格変動を受け、運用元である野村證券はこのリスクについて注意喚起しており、改めてそのリスクを公表しています。

野村證券の注意喚起

≪画像元:野村證券「上場ETN信託受益証券の値動き、及び主な投資リスクに関するお知らせ(pdf)」≫

しかし、このリスクを知らずに投資している投資家は非常に多く、大幅な価格乖離が生じていることから売るにも売れない状態となっているのです。

さらに、GWのような大型連休中の値動きにも注意が必要です。

大型連休中の東京原油先物市場は値動きが止まっている状態ですが、他の先物市場は値動きを続けています。

万が一大幅な価格変動が起こり価格が暴落し続けていた場合、連休後の先物市場にその価格変動がまとめと襲い掛かり、想定外の値動きが生じる可能性があるのです。

この時に、上記の上場廃止基準に抵触してしまう可能性があるのです。

幸いにも、今回のGW中にはそのような価格変動は起こりませんでしたが、新型コロナウイルスの感染拡大が終息していない現状を鑑みると、そのリスクには十分注意する必要があるのです。

原油価格連動商品のリスクを理解したうえで判断する

原油先物価格の需給改善の道のりは先が長く、年後半にかけて価格が急上昇する可能性があるとの予測もあります。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大の終息までが長引き、経済活動が再度停止するような事態となれば、原油先物市場は再度不安定化し下落に転じる可能性が考えられるため、原油価格連動商品に投資する際には上記のリスクを十分に理解したうえで投資判断を下すように注意しましょう。(執筆者:白鳥 翔一)

《白鳥 翔一》
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白鳥 翔一

大学院にて化学を専攻し、現在某証券会社にて働いている現役の証券マンです。周りに流されない独自の投資理論で営業活動をしており、そこで得た経験を生かしてライターとしても活動しています。 寄稿者にメッセージを送る

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