日本の育児休業制度は世界から見るとどの程度の評価をされているのでしょうか。

最近は、小泉進次郎環境相が部分的ではあるものの育休を取得したことが話題になり、国も「イクメン」の普及を推し進めようとしています。

国連児童基金(ユニセフ)の2019年の調査では、日本の男性の育児休業制度は給付期間などのランク付けで41か国中「1位」でした。

しかし、実際に2018年度の利用率は6%にとどまっています。

ノルウェーやスウェーデンでは約80%です。

かつては日本並みに低かったドイツでも30%を超えています

これらのデータが「制度は一流、実態は二流」とやゆされているゆえんです。

では、何をもって「制度は一流」と言えるのでしょうか

実際の利用についてはそれぞれの事情もあることから、今すぐの改善は難しいことでしょう。

しかし、一流と称えられるに至った制度には、どのようなものがあるのかは気になるところです。

「損」しない育児休暇

育児休業給付金

育児休業給付金の支給対象となる休業とは、いわゆる育児介護休業法で定める育児休業と同じです。

そして、男性の場合には、事実上「短期間」の育休を取得することが多いと考えられます。

女性と同様に「育児休業給付金」を申請できるのですが、どのような場合に受給できるのかを整理しましょう。

確認すべき点

育休開始日前の2年間にみなし被保険者期間が通算して12か月以上あること

みなし被保険者期間とは、離職の日から1か月の期間ごとにさかのぼっていき、その1か月の期間に賃金支払基礎日数が11日以上ある期間のことです。

「離職」はしていませんので、「みなす」という言葉が付加されているとお考えください。

簡略化すると2年間で給与の支払いが11日以上あった場合でも誤りではありません。

「賃金支払基礎日数が11日以上ある期間」とは、給与の締め日ではなく、「育休開始日を基準に」見ることをおさえておきましょう。

たとえば「転職後すぐの場合は受給できないのではないか」との疑問もでますが、答えは「受給できます」です。

みなし被保険者期間が「通算」とあります

前職の離職票などで「通算」して要件を満たしていることを証明することが可能です。

しかし、いわゆる失業手当を受給してしまっている場合は、さすがに通算できませんので、受給できないということです。

パートなどの期間雇用者の場合も受給可能かの質問の答えは「受給できます」です。

ただし、

同一事業主の元で1年以上雇用が継続していること

同一事業主のもとで子が1歳6か月までの間に労働契約が満了することがあきらかでないこと

の2点を満たしておく必要があります。

また、あくまで復帰を前提にしていることから、休業取得時に退職が確定している場合には支給の対象外です。

「育児休業期間中」に給与の支給があったか

どの程度支払われているかを確認しましょう。

賃金が80%以上支払われている場合には支給されません

80%を下回る額が支給されている場合には、80%を超えないように調整されます

計算式にすると、

「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 80%」

を超えないように調整されます。

たとえば4月1日~4月23日まで育児休業を取得し、4月24日に給与支給日の場合には「育児休業期間中」に給与支給日はありませんので、調整されることなく給付金が支給されます。

これが4月23日が給与支給日になると「育児休業期間中」に支給がありますので、支払われた賃金額の欄に支給金額の記載をして申請することになります。

従って、前述の式に当てはめて調整がなされるということです。

賃金が80%以上 支払われている場合は 支給されません

「支給単位期間に支払われる賃金額」とは

支給単位期間に支払われる賃金額」とは、その期間に「支払日がある」ものです。

また、育休期間外を対象としている賃金は含めず、原則として育休期間を対象としていることが明確な賃金のみです。

従って、育休の期間を調整することによって、受給することも可能です(すすめるという意図ではありません)。

「育児休業期間中」に就労しているか

支給単位期間内に就業している日がある場合を考えましょう。

就労している日が10日以下(10日を超えている場合は時間にして80時間以下)であれば受給可能です。

やむを得ず一時的に勤務せざるを得ない(リハビリ的な意味合いの場合も含む)場合も想定して設けられている規定と推察します。

給与支給日の1日の違いによって調整が入る点については、育休中は無給の会社が多いことが背景にあると考えられますが、育休中でも給与を支払われるような場合は注意しておきたい論点です。

なかには、「育休期間を意図的にずらせば給付金を受給できるのは信義に反するのではないか」とのご指摘もあるようです。

男性の育児休業は、女性のように産後休業の後に引き続いて育児休業を取得するようなロングスパン(悪い意味ではなく)での取得というよりも「一時的」に取得されるケースが圧倒的に多いと言えます。

そのような実態を鑑みると「一流」の制度のさらなる合理的な活用方法を知り、女性への家事負担の偏在の解消や国の掲げる男性育児休業取得率向上、ひいては出生率低迷の回復(男性の家事時間の多さが第2子以降の出産率も上がるとのデータもあり)に貢献し得ると言え、本質的にもプラスの要素が多く、むしろ積極的に使いこなすべきと考えます。

参照:内閣府

男性の育児休業

育児休業は原則として「1歳に満たない子(要件を満たせば2歳まで可能)」を養育するために、その1人の子供について1回のみの取得です。

母親が産後8週間以内の休業であれば1回とカウントされない「パパ休暇」という制度があります

たとえばパパ休暇を取得し、その後、女性が育休中に自身の育休を再度取得することが可能なのです。

よって、前述の

育児休業給付金と組み合わせて日程調整することで、育休を取得しながらも可能な限り収入減を回避する術

ともなります。

パパママ育休プラス

「パパママ育休プラス」とは、両親がともに育休を取得する際に以下のいずれの要件も満たした場合には、子供が「1歳2か月に達する日の前日まで」延長される制度です。

・ 配偶者が、子供の1歳に達する日(1歳の誕生日の前日)以前に育休を取得している

・ 本人の育休開始予定日は、配偶者が取得している育休の「初日以降」であること

・ 本人の育休開始予定日が子の1歳誕生日以前であること

・ 1人当たりの育休取得可能最大日数(1年間)は変わらない

参照:厚生労働省(pdf)

この制度の金銭的なメリットは、育児休業給付金は育休取得から180日目までは給与の67%の給付を受けられることですが、181日目から50%へ減額します。

そこで、一例として、母親の181日目から父親が育休を取得することで、父親は給与の67%の給付を受けることができるのです。

「1歳2か月まで、1家庭として給与の67%の給付」を受けることが可能ということです。

取得可能例

【母が先に育休を取得しているケース】

母が子の1歳到達日である10月9日まで育休を取得

父が(バトンタッチし)10月10日から育休取得(また、父は母の育休と重複する期間があっても可能です)

では、パパママ育休プラスが使えない場合も確認しておきましょう。

取得不可例

【1. 母が先に育休を取得しているケース】

・母が4/1~育休を取得
・父が10/1~育休を取得

この場合は、「母は」パパママ育休プラスは使うことができません(父の育休の初日前に取得している為)

【2. 父が1歳到達の翌日後に育休を取得するケース】

・ 母が育休を取得中
・ 子が10月9日に1歳到達
・ 父が10月11日に育休申請

この場合の父の育休開始は10月10日までです。

参照:厚生労働省(pdf)

育児休業期間中の社会保険料免除の特例

育児休業等を開始した日の属する月から育児休業等を終了する日の翌日が属する月の前月までは父と会社双方が保険料免除

となります。

また、老後の年金受給の際もその期間は、保険料を払った期間とみなし、年金が減額されるなど不利益になることはありません

育児休業「等」となっております。

保険料免除の対象となる期間には、育児休業期間と育児休業制度に準ずる措置による休業が含まれます。

そして、法律上は子が3歳まで可能です。

全ての会社でこのような措置が設けられているとは考えづらいですが、もし整備されているようであれば「一流」の恩恵に預かるのも一案と言えるでしょう。

なお、免除の対象や毎月の給与と賞与も対象です。

3歳未満の子を養育する者の標準報酬月額の特例

育児休業期間中の 社会保険料免除の特例

端的には、子が生まれたことにより子の誕生前と比較して残業などができなくなり給与が減額した場合などには、月々の保険料の負担も重くなると言えます。

その場合に、月々の保険料負担を抑えることができる制度です。

しかし、社会保険制度をよく勉強されている方からは「将来受け取る年金額も下がるのではないか」とご質問を受けます。

「特例」と銘打っていることから、「年金額の計算」については、下がる前の金額を用いて計算してくれる制度であるということをおさえておきましょう。

なお、申請を忘れていたために後で申請せざるを得ない場合でも、2年以内であれば可能です。

また、すでに離職して資格を喪失している場合には、1年以内であれば可能です。

日本が誇る「一流」の制度をうまく活用

日本が誇る「一流」の男性の育児休業制度の一部を紹介しました。

まだ知られていない制度や十分にその制度を使いこなせていない部分は否めなせん。

上手に、かつ本質的な先行投資となるような活用をしましょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)