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国民年金の「免除」を選択する時の注意点と、免除を受けない方が良いケース

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国民年金の「免除」を選択する時の注意点と、免除を受けない方が良いケース

厚生年金保険に加入する、20歳以上60歳未満の会社員の方が退職して、すぐに再就職しなかった場合、国民年金に加入する必要があります。

こういったケースでは原則的には、自分で保険料を納付する「第1号被保険者」になりますが、配偶者が代わりに保険料を負担するため、自分で保険料を納付する必要のない、「第3号被保険者」になる方もおります。

また前者の第1号被保険者が、国民年金の保険料を納付するのが困難な場合には、保険料の納付が免除(全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除)、または猶予(納付猶予)されます。

この免除や納付猶予は、いつからでも受けられますが、原則的には7月から始まって、翌年の6月に終わります。

その理由として、どの免除や納付猶予を受けられるのかは、本人、世帯主、配偶者の、前年の所得によって審査されます。

またすべての市区町村で、前年の所得の証明が可能になるのは、7月以降になるからです。

会社員の方が失業した場合には、本人の所得を除いて審査するという特例があるため、例えば同居する配偶者に収入がない場合には、失業した直後から、免除や納付猶予を受けられる可能性があります。

この特例を使うか否かにかかわらず、保険料を納付するのが困難になった第1号被保険者が、免除や納付猶予を受けるには、所定の申請が必要になります。

なお国民健康保険については、前年の所得が一定の基準以下になった場合、自動的に保険料の負担が軽減されるため、この辺りは国民年金と大きな違いがあります。

40年間全額免除でも、満額の半分を受給できる

全額免除でも満額の半分を受給

審査する順番を指定しないで、国民年金の免除申請をした場合、

・ 50歳以上 → 「全額免除 → 4分の3免除 → 半額免除 → 4分の1免除」という順で、審査が行われます。

・ 50歳未満 → 全額免除→納付猶予 → 4分の3免除 → 半額免除 → 4分の1免除」という順で、審査が行われます。

両者の違いは全額免除の次に、納付猶予があるか否かになりますが、これが意外に重要なです。

国民年金に加入する必要のある20歳から60歳まで、1か月も欠かさずに保険料を納付し、原則65歳から満額の老齢基礎年金を受給できた場合、その金額は2020年度額で78万1,700円(月額:6万5,141円)です。

厚生年金保険の保険料の一部は、国民年金の保険料として使われているため、20歳から60歳まで厚生年金保険に加入する会社員だった場合にも、満額の老齢基礎年金を受給できます。

それに対して極端な例になりますが、20歳から60歳まで国民年金の保険料の全額免除を受けた場合、受給できる老齢基礎年金は、2020年度額で39万850円(月額:3万2,570円)です。

1度も保険料を納付していないのに、満額の半分くらいの老齢基礎年金を受給できるのは、この財源の2分の1は、国庫負担(税金)で賄われているからです。

国民年金の保険料の未納が続き、公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料を納付した期間や、免除を受けた期間などを合算した期間が、原則10年に達しなかった場合、受給資格期間を満たせなくなります。

結果として老齢基礎年金を受給できなくなれば、自分が納めた税金を取り戻せなくなるので、きちんと免除申請をした方が良いです。

国庫負担がない納付猶予は、老齢基礎年金の金額に反映されない

国民年金の保険料の全額免除を受けた期間は、上記のように保険料を納付した場合の2分の1で、老齢基礎年金が計算されます。

また4分の3免除を受けた期間は「8分の5」、半額免除は「8分の6」、4分の1免除は「8分の7」で、老齢基礎年金が計算されます。

一方で納付猶予を受けた期間に対しては、国庫負担がないため、老齢基礎年金の金額に反映されません

ただ原則10年の受給資格期間を満たしているのかを、日本年金機構が判断する際には、納付猶予の期間も含めます。

そうなると極端な例になりますが、納付猶予の期間が10年で、残りの30年は未納期間だった場合、老齢基礎年金を受給できる資格はあっても、この金額は0円になってしまいます。

免除申請をする際には、

納付猶予を審査対象から外す、または納付猶予を最後に審査するように、書類を記入した方が良い

と思います。

ただ4分の3免除、半額免除、4分の1免除などの一部免除は、免除によって少なくなった保険料を納付しないと、未納期間と同じ取り扱いになるため、免除申請が無駄になってしまいます

金銭的な余裕がまったくない場合には、保険料の負担がある一部免除より、保険料の負担がない納付猶予を優先して受け、金銭的な余裕ができた時に、追納すれば良いと思います。

なお納付猶予を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に追納する場合には、当時の保険料に加算額が付き、その金額は年数が経過するごとに増えていきます。

そのため納付猶予を受けた各月から10年以内という、追納の期限だけでなく、3年という年数も覚えておきたいところです。

付加年金、iDeCo、国民年金基金は、免除によって加入資格がなくなる

免除によって加入資格がなくなる

国民年金の保険料に加えて、毎月400円の付加保険料を納付すると、老齢基礎年金に上乗せして、

「200円 × 付加保険料の納付月数」

で算出される、付加年金が支給されます。

この付加年金は原則65歳の支給開始から、わずか2年で元が取れるため、かなりお得な制度です。

ただ付加年金は金額が少ないため、これより大きな上乗せが欲しいという方は、iDeCoや国民年金基金の方が良いと思います。

金銭的な余裕がある場合には、複数の制度を同時に利用しても良いのですが、付加年金と国民年金基金は同時に利用できません

またいずれの制度についても、

申請して各種の免除や納付猶予を受けると、加入資格がなくなります。

国民年金の保険料を納付しないで、付加保険料、iDeCoや国民年金基金の掛金だけを納付することはできません。


そのためこれらの制度を引き続き利用したい方は、免除や納付猶予を受けない方が良いです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

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《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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