火災保険は、契約期間も長く、更新も数年ごと、新築時あるいは転居時に契約したきり放置していることが多いです。
しかしながら、増改築やリフォーム、家族構成の変化などで、契約時とは状況が変わってしまうこともあります。
状況が変わるたび保険会社に連絡しておかないと、大損をしてしまうかもしれません。
今回は、火災保険について詳しく説明します。
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目次
火災保険には、告知義務と通知義務がある
火災保険の契約では、まず保険会社が見積書を作成します。
そのために、次のような情報が必要となります。
保険会社や特約・追加補償内容によって、項目数や名称に多少の違いはあります。
【火災保険(基礎の部分)に必要な告知】
・ 建物区分
・ 所在地
・ 築年数
・ 面積
・ 用法(居住のみ・店舗兼用など)
・ 建築構造(木造・鉄骨造・コンクリート造など)
・ 耐火性能
【特約・追加補償などに必要な告知】
・ 耐震、免震性能
・ その他設備など(オール電化・セキュリティ設備・ソーラーパネルなど)
・ 家財(おおよその金額・高額貴重品の有無など)
そして、実際に契約を結ぶ際には、これらの情報をあらためて「告知」するよう求められます。
告知義務
保険会社は、告知内容から家の評価を行います。
危険度などの計算を行い、保険料の算出や、「引き受けるかどうか」の判断をします。
そのため、契約の申込者は求められた内容に対して、事実を正確に告知しなければなりません。
万一、故意や重大に過失により事実を告知しなかった場合は、「告知義務違反」として、保険会社はその保険契約を解除できます。
契約内容は無効となり、既に払い込んだ保険料があっても返還されません。
通知義務
損害保険の場合、契約者は
という約束があります。
これが、「通知義務」です。
告知義務と同様に、故意や重大な過失により事実を通知しなかった場合は、「通知義務違反」となり、保険会社は保険契約を解除できます。
それまでに払い込んだ保険料は、返還されません。
保険金の請求を行った後に、通知義務違反がわかった場合
保険金請求を行った際に、家の情報が告知と相違していることが発覚する場合もあるでしょう。
もしも、通知義務違反をした内容と請求箇所(損害部分)に全く因果関係がないことが証明された場合に限り、保険金が支払われるケースもあります。
基本的には、通知義務違反によって保険契約解除となり、それまでの保険契約も無効となってしまうため、保険金の支払いはありません。
もちろん、それまで払い込んだ保険料も返還されません。
火災保険金請求の流れ
ここで、火災保険金請求時の流れを確認しておきましょう。
保険会社によっては、WEB上での保険金支払い請求ができる場合もあります。
その場合、提出方法が郵送からデータ送信に変わることもありますが、必要書類や鑑定・審査などの内容については同じです。
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(1) 保険会社に連絡 → 必要書類が送られてくる
家に何らかの損害があった場合は、まず契約する保険会社に連絡をしましょう。
補償対象だと思われる場合は、必要書類一式が届きます。(この時点では、支払い確定ではありません)
(2) 保険会社に必要書類を提出
契約内容や損害状況による違い、また保険会社によって書式や名称の違いはありますが、おおむね以下のような書類が必要です。
・ 事故内容報告書・損害明細書(保険会社書式。損害がわかる写真を添付)
・ 事故証明書・罹災証明書(損害の内容により異なります。不要な場合もあります)
・ 修理見積書(修理業者からの詳細な見積書)
(3) 鑑定人の調査・確認
保険会社から鑑定人が派遣され、被害状況の調査・確認などを行います。
(4) 保険会社の審査
契約者からの書類と鑑定人の報告を元に、「保険金の支払い対象かどうか」審査を行います。
支払い対象であれば、修理見積書などを元に保険金額が決められます。
(5) 保険金支払い
保険金額確定後、指定の口座などに保険金が支払われます。
もし、通知していない変更点があったとしたら、(2) 書類提出や(3)鑑定人の調査により明らかになるでしょう。
家も損害を受け、保険金も支払われず、保険も解除されてしまうような最悪の事態に陥らないよう、変更があった場合は速やかに連絡をしておきましょう。
変更を連絡することで、保険料が安くなることもある
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変更の通知をすると、保険料が高くなると思っている人もいるでしょうが、必ずしもそうとはとは限りません。
保険会社は、「増改築・リフォーム・家族構成の変更など」の変更を受けると、家(建物)についての再評価を行います。
その結果、保険料が安くなることもあります。
もちろん、それまでの保険契約内容や保険会社、増改築・リフォームの結果などによりますが、いくつかの例を紹介しましょう。
耐火性能がアップした場合
「耐熱性能を高めるための改築・リフォーム」を行った場合、火災発生リスクが低減したとして保険料が安くなる場合があります。(※耐火性能についての証明が必要)
また、保険会社によっては、「耐熱性能の高い建材使用」や「オール電化住宅」に対する割引を行っているところもあります。
耐震性能がアップした場合
火災保険とともに、地震保険も契約している場合が多いでしょう。
耐熱性能と同様に、「耐震性能を高めるための改築・リフォーム」を行った場合に、地震保険の保険料が安くなる場合があります。(※耐震性能についての証明が必要)
延床面積が減った場合
大規模な改築や一部取り壊しなどで延床面積が減った場合は、単純に補償対象が減るため、その分保険料が安くなる場合があります。
同居する家族構成の変化
家族構成は、火災保険にはあまり影響がありませんが、「家財保険」には影響を与えます。
「家財保険」とは、家具や家電、衣類などを含む家の中のあらゆる物が対象となった保険で、火災保険とのセットや単品で契約している人が多いと思います。
家財保険では、通常「保険金上限金額」を設定した契約になっています。
実際の手持ち家財から保険金を算出した人以外は、保険会社などから提示された「目安金額」で契約しているのではないでしょうか。
この目安金額は、「家族構成(年齢・人数など)」から算出しています。
家族構成に変化があった場合は、上限金額を適切に調整しましょう。
家財保険金の支払いは、「実損補填型」です。
実際にかかった費用以上の保険金はもらえません。
いざというときに使えない保険にしないため、時々は確認を
ほとんどの場合、火災保険の契約途中での大きな変更や追加ができません。
増改築・リフォームなどを行った際は、契約中の保険会社に通知すると同時に他社でも見積もりを取ってみるといいでしょう。
火災保険は、「家の保険」部分については会社による違いが少ないですが、特約や追加補償に特色があります。
前述した「耐火性能での割引」など、リフォーム内容と相性のいい保険会社が見つかるかもしれません。(執筆者:仲村 希)