新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言は2020年5月25日に全面解除されました。

全国的に社会経済活動が徐々に戻りつつありますが、本格再開までにはある程度の時間がかかるでしょう。

そんななか、収入が減少して自宅の家賃が払えないという人も増えています

既に滞納している人もいれば、今までは何とか支払ってきたものの収入が回復せず、今後は払えないという人もいるでしょう

政府は中小企業の家賃補助については対策を拡充していますが、個人の賃貸住宅の家賃補助については対策が不十分といわざるを得ません。

そこで今回は、個人の賃貸住宅の家賃が払えなくなった方について、賃料を減額させるとっておきの方法をお話しします。

今月の家賃払えるかな

住居確保給付金は要件が厳しい

自宅の家賃が支払えなくなった人が利用できる制度として「住居確保給付金」というものがあります。

収入や資産などに関する一定の要件を満たせば、家賃相当額(上限あり)が原則3か月(最長9か月)支給されるという制度です。

政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、この制度を利用しやすいように支給要件を一部緩和しました。

それでも、「離職や廃業と同程度の状況にある者」という、かなり厳しい要件があります

要件を満たす人は積極的にこの制度を利用すべきですが、実際には要件を満たさない人の方が多いであろうと考えられます

大家との賃料減額交渉も簡単ではない

家賃をまかなえる給付金制度を利用できない場合は、なんとか家賃を減額してもらいたいところですが、大家との賃料減額交渉も簡単ではありません。

交渉によって賃料を減額してもらえた人も少なくないかもしれませんが、多くの大家はローンの支払いがあるため簡単には減額請求に応じられないはずです。

コロナの影響を受けての賃料減額請求が法律的に認められるかどうかというと、ケースバイケースですが、現時点では難しいでしょう。

借地借家法第32条1項には経済事情の変動により賃料の増減を請求することができると規定されています。

しかし、コロナの影響による個人の収入の減少は今のところは一時的なものであり、将来に向かって賃料を減額させる事情には該当しないと判断される可能性が高いと考えられます。

調停で賃料を減額できる可能性が高い

法律で賃料減額が認められる可能性が低いからといって、手立てがないわけではありません。

今回のコロナ騒動による家賃の問題に限りませんが、簡易裁判所の「賃料等調停」で家賃が減額されているケースは多いのです。

調停では、「調停委員」という専門知識を持った人が話し合いを仲介し、柔軟な解決を図ってくれます

あくまでも話し合いの手続きですが、調停で解決しない場合は訴訟に進むことになります。

大家としても、訴訟になると面倒なので多少の妥協をしてでも調停に応じるケースがよくあります。

つまり、訴訟で賃料減額が認められる可能性が高くなくても、調停という話し合いの手続きによってある程度の減額を勝ち取れる可能性は高いといえます。

誤解を怖れずに言えば、法律上の明確な離婚原因がなくても離婚調停で離婚が成立するケースが多いことと似ています。

簡易裁判所の「賃料等調停」で軽減される場合もある

大幅な減額は難しいことに注意

大家の「妥協」によって解決する場合、家賃の大幅な減額は難しいことにも注意が必要です。

減額できても、月額数千円にとどまるケースも少なくありません

調停は話し合いの手続きなので、大家が妥協しなければ家賃が減額されることはありません。

しかし、話し合いの手続きだからこそ、柔軟な解決が期待できるというメリットもあります。

調停員を介して話し合うことによって合意できれば、一定期間のみ家賃の一部を免除または猶予するといった形で解決できることもあるでしょう。

調停なら申し立て可能

賃貸住宅の借主が賃料減額請求の訴訟をするために弁護士に依頼すると費用倒れとなる可能性もあります。

しかし、調停であれば自分で申し立てることも十分に可能です。

調停にかかる費用は、印紙代・切手代・必要書類の取得費を合わせて数千円~1万円程度です。

大家との話し合いがスムーズに進まないときは、調停の申し立ても視野に入れてみてはいかがでしょうか。(執筆者:川端 克成)