生命保険の加入を考えるとき、死亡保険金額はどのように決めていますか

保険営業員の提示金額は多すぎる気がする、かといって、少なすぎるのは不安だと思っている人も多いのではないでしょうか。

その場合は、あらためて「死亡保険金の目的」を考えるといいでしょう。

今回は、死亡保険金額を決めるときの考え方について、詳しくお話します。

「死亡保険金」 設定はいくらにすべきか

死亡保険金額を考えるときは、遺族の目線で考える

自分で使うことを目的とする医療保険と違って、死亡保険金を使うのは遺族です。

死亡保険金額を考えるときは「被保険者が亡くなったことで、遺族が受ける損失」を基準にします。

一般的に、最も金銭的ダメージが大きいのは「働き盛り世代」の「稼ぎ頭(便宜上「夫」とします)」が亡くなった場合でしょう。

年代や家族構成の違う2家族を例に、ざっくりと計算してみましょう。

例【A家】

夫:50代 年収550万円(会社員)

配偶者:40代・子2名(19歳私立大学1年生・17歳公立高校2年生)

生活費30万円/月 

住宅ローン15万円/月(あと5年で完済)

例【B家】

夫:30代 年収350万円(自営業)

配偶者30代・子2名(4歳2歳)

生活費15万/月 

賃貸家賃10万/月

・ 「末子22歳(一般的に大学を出て就職をする年齢)」の期間で、計算します。

・ 物価の上昇や生活費の増減については、考慮しません。

(1) 「損失」 夫が亡くなった場合の金銭的損失

「稼ぎ頭」である夫の給与収入がなくなるのは大きな損失です。

昇給などは考慮せず、現状の給与が続いた場合で計算します。

「給与の損失」夫が稼ぐはずの金額

[A家]500万円 ×(22歳-17歳)=2,500万円

[B家]350万円 ×(22歳-2歳)=7,000万円

(2) 「出費」 生活の中での出費

夫が亡くなっても、遺族の生活は続きます。

遺族の生活は続きます

生活費

【A家】30万円 × 12か月×(22歳-17歳)× 0.7=1,260万円

【B家】15万円 × 12か月×(22歳-2歳)× 0.7=2,520万円

夫分の生活費は不要となりますので、現状の7割として計算します。

住居費

【A家】団体信用保険金によりローン完済

【B家】賃貸家賃 10万円 × 12か月 ×(22歳-2歳)=2,400万円

A家は、ローンを組むときに加入する団体信用保険の保険金によって、夫死亡時点のローン残高が相殺されます。

一方、賃貸契約の場合は、一般的にそういった保障がありません

夫が亡くなっても、そこに住み続ける限り、家賃の支払いは続きます

転居する場合には、別途費用がかかります。

・ 実家などへ移動する場合 転居費用

・ 別の賃貸物件へ移る場合 転居費用+新居契約時の費用+今後の家賃

子の学費

【A】

長子 私立大学1年生 90万~160万円 × 3年間=270万~480万円

末子 公立高校2年生 15万円 × 1年間=15万円

大学費用90万~160万円 × 4年間=360万~640万円

【B】

長子 800万円(全公立)~2,200万円(全私立)=1,600万円~4,400万円

末子 800万円(全公立)~2,200万円(全私立)=1,600万円~4,400万円

幼稚園から大学まで、全て国公立800万円・全て私立2,200万円を目安に計算します。

別途塾費用や習い事などについては、今回は省いています

出費の合計額

夫の給与損失額【A】2,500万円【B】7,000万円に対し、「生活支出合計額」は【A】約2,395万円【B】約1億2,920万円となります。(学費は最高額で計算)

B家の計算には昇給等が含まれていないことを考えれば、おおむね妥当な金額でしょう。

では、死亡保険金額はこの金額を目安にすればいいのでしょうか。

その前に、もう1点の要素について考えましょう。

(3) 死亡後の収入

夫が亡くなり、給与収入がなくなる代わりに支給される金額があります

遺族年金について

遺族年金

遺族年金の受給資格を満たしていると仮定し、子の年齢は誕生日当日として計算します。

年金額は2020年4月1日更新の金額です。

参照:日本年金機構

【A家】約770万6,600円

【遺族基礎年金(国民年金)】100万6,600円

配偶者 78万1,700円 ×(18歳-17歳)=78万1,700円

子加算(末子) 22万4,900円 ×(18歳-17歳)=22万4,900円

【遺族厚生年金(厚生年金)】約670万円※

年収と勤続年数による概算 約76万円 ×(22歳-17歳)=約380万円

中高齢寡婦年金 58万円 ×(22歳-17歳)=290万円

※厚生年金の金額は各自の条件によって変わります。

【B家】1,925万4,200円

【遺族基礎年金(国民年金)】

配偶者 78万1,700円×(18歳-2歳)=1,250万7,200円

子加算(長子) 22万4,900円×(18歳-4歳)=314万8,600円

子加算(末子) 22万4,900円×(18歳-2歳)=359万8,400円

合計(支給期間:16年間)1,925万4,200円

A家は、夫が会社員で厚生年金を納めているため、子の成長後も遺族年金が一生涯(妻の老齢年金との金額調整あり)続き、中高齢寡婦年金も妻が65歳になるまで続きます

一方、自営業で国民年金のみのB家は、末子が19歳の誕生日以降は遺族年金の支給がありません

その他の収入

【A家】

・ 死亡退職金 約1,500万円(会社によって、また勤務年数によって異なります)

・ 勤務先からの弔慰金(業務上の死亡かどうか、勤務年数などによって金額は変わります)

・ 社会保険からの埋葬料5万円(加入している健康保険によって異なります)

【B家】

・ 国民健康保険からの葬祭費 5~10万円(住所のある市区町村によって異なります)

その他にも、個別で加入している年金保険や貯蓄保険、財形などがあるか確認しておきましょう

あえて計算に入れず、突発的で一時的な出費に備えて温存しておくのも1つの手です。

妻の収入も加算する

配偶者の収入

今回は、配偶者の収入については計算していません

夫死亡後に妻が働くことは当然想定できますが、死亡時の状況によっては思うように働けない場合も考えられます。

夫死亡前から、フルタイム勤務などで状況が安定している場合は、妻の収入も加算してもいいでしょう。

その他 国の支援など

寡婦家庭では、医療費の助成や学費の補助、公営住宅への入居など、さまざまな「国の支援」を受ける機会があり、生活費の負担を軽減できます。

ただし、金額で表しにくいため今回は計算に含みません。

「損失」-「収入」=「必要死亡保険金額」

夫が亡くなった場合の「損失」から「収入」を引いた金額は、次の通りです。

【A家】

2,500万円(給与損失)-1,500万円(退職金)-約770万円(遺族年金)=230万円

すでに子が成長しているA家の場合は、補填期間が短く済みます。

会社勤めのため、遺族年金も安定し、退職金も入るため、死亡保険金は300~500万円程度でもいいでしょう。

【B家】

1億2,920万円(遺族生活費)-1,925万4,200円(遺族年金)=1億994万5,800円

7,000万円(給与損失)-1,925万4,200円(遺族年金)=5,074万5,800円

一方、子がまだ小さいB家には、最低でも5,000万円以上の大きな死亡保険金が必要です。

ライフプラン表を出してみる

ここで紹介した収支計算については、それぞれの生命保険会社で「ライフプラン表を出してほしい」と言えば対応してもらえます。

今回は「末子22歳」までの期間でしたが、「妻の老後」を含めた計算もしておくといいでしょう。

最近では、自分で使える医療保険やガン保険が人気で、死亡保険金額は「最低限でいい」と考える人が増えているようです。

その考えは、間違ってはいません。

しかしながら、「わが家にとっての最低限はいくらなのか」はしっかり考えておいてください。(執筆者:仲村 希)