財産目録がコピーでもOKになり、法務局での保管制度が始まるなど、7月からの民法改正で自筆証書遺言の簡便性と信頼性が上がったことで、「遺言作成を自筆で」と考える方が増えたのではないでしょうか。

しかし、自筆証書遺言は公正証書遺言と違って内容に専門家のチェックが入りません。

そこで、特に財産の表記について、基本的な注意点をおさらいしておきましょう。

「自筆証書遺言」の書き方基本の「き」

財産は「特定」しなければならない

遺言は、自身の最後の意思を表明する大切な文書です。

間違いがあってはならないので、

「誰が」
「誰に」
「どの財産を」
「どれだけ」
残すか

が遺言書内でしっかり特定されていることが必要です。

曖昧な書き方をすると相続時に揉める恐れがあります。

現金(預貯金)について

遺言作成時から実際の相続が開始するまでの期間が長いほど、金融資産額は変動します。

したがって、

現金の場合には「Aに1,000万円、Bに2,000万円を譲る」ではなく「Aに1/3、Bに2/3」と書くのがよい

と言えます。

また、預貯金の場合には口座別に「この銀行の預金はA、こちらはB」とした方が、名義変更が楽だと思うかもしれません。

しかし、金融機関は自筆証書遺言があっても万が一のトラブルを怖れて、結局は相続人全員の実印が押された名義変更(払戻)届出書を求めてきます

また、前述のように預貯金額も変動しますし、どれか1つの口座からの多額の引出しをしたにもかかわらず、補填をしないままに遺言者が亡くなってしまうと、本人の意図せぬ不公平な相続になってしまいます。

したがって、

預貯金や投資信託口座などもすべて列挙したうえで、各相続人がどれだけの割合で相続するかを記すのが安全

です。

なお、自身の口座の特定には「○○銀行 ××支店 普通(定期)」と書けば十分で、口座番号まで書く必要はありません。

金融機関では同一名義は一支店で1口座が原則ですし、仮に何かの理由で複数口座が認められていたとしても、それらの口座をすべて特定できるからです。

銀行・支店名と普通・定期の種類

不動産の特定は「地番」で

不動産が多数あれば登記簿謄本を取り寄せ、財産目録として遺言書に同封できる方法が新たにできるようになりました。

自宅の土地と建物の2筆だけなら大した手間ではないので、自筆で遺言書内に書き込んでもよいことでしょう。

ただし、

不動産の特定には「(住民票に表記されている)住所」ではなく、必ず土地は地番、建物は家屋番号

を用いて行ってください。

登記の変更手続きは地番・家屋番号でされますし、そもそも普段使用している住所(住居表示)は複数の不動産に与えられている場合があり、特定に足りるとは言えないのです。

自宅の権利書に記載されている「土地の表示」、「建物の表示」部分を丸写しすれば大丈夫です。

形式の有効性や財産特定など、作成に手間をかけなければならないのは面倒ですが、自筆証書遺言はその分の費用が一切かかりません。

公正証書遺言だと不動産価額や預貯金の総額、さらには内容の複雑さに応じて手数料が高くなります

財産が多い方にとっては、これからは遺言書保管制度と併用しての自筆証書遺言をじっくりと自分で考えて作れるという意味において、積極的に選択肢としてもよいかもしれません。

財産の特定のしかたが曖昧でも、書かれた内容から推定が可能なことも多いのです。

しかし、相続手続きはただでさえいろいろと大変なわけですから、せっかく遺言を作るのであれば遺された家族の手間を増やさないよう、書き方にも十分に注意しましょう。(執筆者:行政書士 橋本 玲子)