新型コロナウイルスは2月下旬ごろから日本でも猛威を振るい始めました。

感染者が発生した大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗客が滞留を余儀なくされたのは半年前です。

すでに6か月が経過したにもかかわらず、いまだに安全宣言を出すには至らず、感染者は右肩上がりに増えているありさまです。

私たちへの影響が大きかったのは緊急事態宣言でした。

全国への発令から解除までの40日間、特に旅行、飲食、エンタメ業界の売上は大幅に減少しました。

尊い人命を奪うという直接的影響だけでなく、明日の金銭を失うという間接的影響も甚大です。

筆者は夫婦の離婚や別居、再婚などの家計相談を受け持っていますが、相談者の家庭で問題になったのは「養育費」です。

非親権者が親権者に対して毎月、養育費を支払いますが、ほとんどの場合、養育費の月額は自分の収入で何とか支払える上限ぎりぎりに設定されています

そのため、コロナショックによる収入減により、養育費の支払が厳しいという声が多く寄せられ、今回の相談者・前田雄平さん(38歳)もその1人です。

コロナで収入減 「養育費払えない」 37歳男性の話

コロナショックの影響で養育費の支払いが厳しくなった例

【家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)】

前夫:前田雄平(38歳)→ 会社員(去年の年収400万円)◎今回の相談者

前妻:西瑠香(37歳)→ パートタイマー(離婚時の年収130万円)

前妻との子:西瑠璃(6歳)→ 雄平と桃子の長女

「もう完全に無理です。7月には5万円の養育費の支払がありますが、僕には全く余裕がありません!」

雄平さんはスポーツジムのインストラクターをしています。

頭をそり上げた髪型に服の上からも分かる鍛え上げられた肉体でしたが、顔からは不安しかうかがえませんでした。

緊急事態宣言下で勤務先のジムは閉鎖し、宣言が解除されても会員は感染を恐れて休会の申請をしたり、退会、結局、自粛要請が終了しても会員数は減り続け、ジムの経営は厳しいままです。

会社は人件費を削らざるを得ず、従業員の給与に手をつけ、雄平さんも例外ではなく、7月からの給与は20%カットすると言い渡されました。

雄平さんの重荷は「養育費」

2年前、前妻と離婚し、当時3歳だった娘さんの親権は前妻が持つことになりました。

その代わりに雄平さんは前妻に対し、娘さんの養育費として毎月5万円を支払うことを約束しました。

離婚時、雄平さんの手取りは毎月28万円でボーナスはなで、収入の2割を前妻に渡している計算です。

毎月の支出

家賃:10万円

水道光熱費(電気、ガス、水道代):3万円 

食費:5万円

プロテイン代:1万円

携帯電話代:1万円

インターネット:3,000円

保険料:6,000円

雑費(衣服、交通費、昼食代、日用品など):2万円

前妻への養育費 5万円

計27万9,000円

毎月の収支はトントンですが、ほとんどお金が余らないので、離婚から現在までの間、雄平さんの貯金は増えていません。

雄平さんは離婚したことでギリギリの生活を余儀なくされていました。

そんな中、7月以降の手取り額が毎月3万円も減ることになりました。

プラスマイナスゼロの収支では「減収額=赤字額」です。

このままでは雄平さんは毎月3万円の赤字に陥るので何とかしなければなりません。

雄平さんは筋肉増強のために高級なプロテイン(毎月1万円)をやめましたが、まだ不十分です。

まだ毎月2万円の赤字が残ります。

養育費の値下げを交渉

もし養育費を毎月5万円から3万円へ減らせれば赤字に転落せず、借金をする必要はありません

雄平さんは勇気を振り絞って前妻へ連絡し、アポを取り、直談判の場(貸会議室)へ足を運びました。

直談判に向かう

事情変更を理由に見直すことが法律で認められている

お金の名目が養育費の場合、事情変更を理由に見直すことが法律で認められ(民法880条)、コロナによる収入減は上記の事情変更に該当するでしょう

さらに家庭裁判所が公表している養育費算定表に互いの年収を当てはめて計算するのが一般的です。

離婚時の年収は雄平さんが400万円、前妻が130万円だったので養育費は月5万円が妥当な金額でした。

しかし、コロナウイルスの影響で雄平さんの年収は前年比で2割下がる予定です。

年収が320万円の場合、同じく算定表に照らした場合、養育費は月3万円が妥当な金額です。

毎月5万円の養育費は離婚時の年収に照らせば妥当な金額でした。

しかし、それはコロナショックで収入が減った現在は妥当ではないことを意味します。

雄平さんの提示額には法律的に確たる根拠があるのは心強いでしょう。

最終的には前妻は雄平さんの見直し案を受け入れるに至りました

雄平さんはコロナ減収による赤字の危機を脱し、最低限の生活を取り戻しました。(執筆者:露木 幸彦)