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親がアパートで孤独死 原状回復費用等の請求に家族がとるべき対応【前編】 賃貸借契約の連帯保証人になっていない場合

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親がアパートで孤独死 原状回復費用等の請求に家族がとるべき対応【前編】 賃貸借契約の連帯保証人になっていない場合

核家族化が進んだ現代では、高齢の親がアパートで独り暮らしをしているという方も多いことでしょう。

考えたくはないことですが、親が賃貸アパートで孤独死してしまった場合には、家族が家主から原状回復費用などを請求されることがあります。

これに応じる必要があるか否かの結論は、請求された家族が賃貸借契約の連帯保証人になっているかどうかで異なります

今回は、まず前編として、家族が連帯保証人になっていない場合にとるべき対応を説明します。

親がアパートで孤独死【前編】

法律上は相続放棄をすれば支払い義務はなし

結論から言いますと、

故人の相続人にあたる家族には、家主に対して原状回復費用などを支払う義務があります。

ただし、相続放棄をすれば支払わずにすみます

賃貸アパートに住んでいた親が亡くなると、賃借人としての地位が相続人に承継されます

そのため、相続人は原状回復費用の他にも明け渡しまでの家賃や、一定の損害賠償金などを支払わなければならないこともあるのです。

しかし、相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったものとみなされます。

したがって、家主に対する一切の支払い義務から免れることができるのです。

現実的な対処法

法律上の結論は前述の通りですが、実際にはこのように簡単に割りきれる場合ばかりではないことでしょう。

そこで、現実的な対処法をもう少し考えてみましょう。

まずは遺産を調べる

相続放棄をすれば支払い義務がなくなるとは言っても、

故人にある程度の遺産がある場合には、相続したうえで原状回復費用などを支払うほうが得策

である場合もあります。

そこでまずは、故人の遺産を調べる必要があります。

ただし、賃貸アパートで孤独死される方の場合、それほど資産がないということが多いようです。

調べてみて、借金があるようであれば相続放棄したほうがよいと言えます。

相続放棄する場合には故人の荷物はそのままにする

相続放棄する場合の注意点は、故人の荷物の片付けや遺品整理などは行わないほうがよいということです。

故人の財産を一部でも処分すると相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなるからです。

明らかに財産的価値のないゴミを捨てるぶんには問題ありません。

しかし、判断に迷うものが必ずあるはずなので、触らないほうが無難です。

遺品整理などは行わない方がよい

大家との交渉で解決する方法

相続放棄をされると、家主はとても困ります

原状回復費用を支払ってもらえないうえに、故人の荷物の撤去に非常に手間取ることになるからです。

故人の部屋に残された荷物を撤去するためには、家主が費用をかけて相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てなければなりません

最終的には相続財産管理人が故人の荷物を処分するのですが、すべての手続きが終了するまでには時間がかかります。

次の入居者を募集できるようになるまでに1年以上かかる場合も多いのです。

家族としても、故人が原因で家主に迷惑はかけたくないでしょうし、

家主からの請求額が支払える範囲内であれば話し合いで解決するのもよい

と言えます。

相続放棄をしない場合には、話し合いで解決する必要があります

交渉では譲歩することも必要

具体的な交渉方法ですが、まずは冷静に家主から請求額を聞いてみましょう。

それほど負担にならない金額であれば、そのまま支払えば解決します。

請求額に不服があれば話し合いをすることになるのですが、交渉の主導権は遺族側にあります

なぜなら、遺族が相続放棄をすると家主は費用の面でも時間の面でも多大な損失をこうむることになるからです。

ただし、だからといって一方的に家主に負担を押し付けようとしても話し合いは進みません。

相続放棄をしないのであれば相続人には支払い義務があるのですから、一定の譲歩は必要です。

遺族としては、

敷金の返還請求権は放棄して、敷金を原状回復費用などに充ててもらう

のが穏当な対応と言えます。

部屋に残された荷物も遺族側で撤去して、すみやかに部屋を明け渡すべきです。

交渉によって合意した内容を超えて原状回復費用や家賃、損害賠償などを請求されても応じないことを取り決めておく

ことも必要です。

合意がまとまったら、合意書を作って交わしておきましょう。

すみやかで誠意ある対応が必要

法定相続人が賃貸借契約を解除しない限り、賃借人としての地位は続きます。

賃借人である限り、原状回復費用や家賃の支払い義務はあります。

したがって、「いつでも相続放棄できるんだから、お金は一切支払わない」という対応は誤りです。

相続放棄をするのであれば、故人の死亡を知ってから3か月以内に手続をしなければなりません。

相続放棄をしない場合には、家主と誠意を持って話し合うようにしましょう。(執筆者:元弁護士 川端 克成)


《川端 克成》
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川端 克成

約15年間弁護士をしていましたが、人の悩みは法律だけでは解決できないことに悩み続けて、辞めてしまいました。現在はフリーライターとして活躍中です。読んで役に立ち、元気が出るライティングをモットーに、法律問題に限らず幅広いジャンルで執筆しています。これまでの人生では、ずいぶん遠回りをしてきました。高校卒業後は工場などで働いて二部大学に入り、大学卒業後も工場で働いて司法試験の勉強をしました。弁護士を辞めた後も工場で働きながらライティングの修行を重ねました。そんな人生経験にも基づいて、優しい心を執筆を通じてお伝えするのが理想です。 寄稿者にメッセージを送る

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