2020年は金地金の価格が上昇しており、7月末時点で金の価格は1グラム7,000円を超えています。
価格が高いタイミングで売却できれば、購入金額との差額が利益になりますが、売却益は所得税の対象です。
確定申告をしないと税務署から指摘を受ける可能性もありますので、金の売却益に対する所得税の計算について解説します。
目次
金地金の売却益は譲渡所得の対象
金地金の売却益は、総合譲渡所得の対象です。
譲渡所得は売却益に対して課税される税金なので、売却して損をした場合は譲渡所得税を課されることはありません。
また総合譲渡所得は、50万円の特別控除額を差し引けるため、売却益が50万円以内なら課税される利益はゼロです。
なお譲渡所得は長期譲渡所得と短期譲渡所得に分類され、長期譲渡所得に該当する場合は課税される所得が2分の1になります。
総合譲渡所得の計算式
【短期譲渡所得】(所有期間5年以下)
売却価額̠ -(取得価額 + 売却費用)- 50万円(特別控除)= 課税される譲渡所得の金額
【長期譲渡所得】(所有期間5年超)
売却価額 -(取得価額 + 売却費用)- 50万円(特別控除)= 譲渡所得
譲渡所得 × 1/2 = 課税される譲渡所得の金額
確定申告で使用できる特別控除額は合計50万円までです。
最大90万円の売却益は申告不要
会社で年末調整をしたサラリーマンは、会社からの給与以外の所得が20万円以下なら、所得税の確定申告をしなくても問題ありません。
給与以外の所得が金地金の売却のみの場合、最大90万円までの売却益は、所得20万円以下に収まりますので、利益が発生しても申告不要です。
長期譲渡所得の計算例
【90万円の利益が発生した場合の長期譲渡所得の計算例】
90万円 – 50万円 = 40万円
40万円 × 1/2 = 20万円(課税される譲渡所得の金額)
給与所得以外が20万円なら申告不要です。
なお所得金額が20万円以内でも、医療費控除や寄付控除など確定申告を行う場合には、売却益も含めて申告する必要がありますのでご注意ください。
金地金の売却情報は税務署に流れている
法定調書とは法律で提出義務が定められた書類で、対象となった人(会社)の情報を記載した調書を税務署に提出しなければいけません。
金地金の売却をした場合に税務署へ伝わる情報は、以下の通りです。
・ 数量
・ 売却金額
・ 売却年月日
・ 売却した人の住所・氏名
・ マイナンバー
税務署は金地金の法定調書により、売買事実を確認し、対象者が申告しているかチェックできます。
売却益を申告していない人がいれば、税務調査により申告漏れの指摘をし、本来納めるべき本税のほかに、加算税・延滞税の罰金を支払うことになります。
金地金を売却した際は利益額を確認
金地金の売却益が発生しても、50万円以下であれば、譲渡所得税は課税されません。
しかし売却した金地金の購入金額が不明だと、譲渡所得の計算ができませんので、購入した当時の領収書など、購入金額が確認できる書類は処分せずに保管してください。
せっかくの利益に対して税金を支払うのは嫌になるかもしれませんが、確定申告をしないとさらに嫌な思いをします。
金地金の売却益の申告が必要になる方は、忘れずに手続きをしましょう。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)