相続・遺産分割関係の記事を書いたりしているので率直に言ってお恥ずかしい話ですが、皆さまの参考になればと思い、昨年と今年にわが家を襲った相続・遺産分割トラブル事例を紹介したいと思います。

約60年前の未分割財産(曽祖父名義のままの建物)にまつわるトラブル

建物の管理を適切にしてくださいとの通知

事の発端は昨年末に市の建築指導課から私の父宛てに送付されてきた通知です。

内容は、「近隣からクレームが出ているので建物の管理を適切にしてください」というものでした。

そのような建物に心当たりのない私たちは困惑しましたが、調べてみると私からすると曽祖父名義の建物が遺産分割手続きされておらず(未分割財産)、法定相続人共有のまま世代がどんどんと進行していき、このタイミングで2代進行した私の父の代の生存者3人にだけこの通知が届いたということでした。

その建物自体が未登記でした。

父からすると、自分の父(私からは祖父)は次男で外に出た人間だという認識です。

その建物は本家筋がずっと住み続けてきたもので、建物名義は当然のことながら本家の子孫のものになっているものと思っておりました。

また、仮に通知するのであれば本家のほうに行くのが筋だとも思った次第です。

さらに調べてみると、本家筋(3代進行した子孫)は自分の先代の相続放棄をしていました。

そのため、今回の件ではとりあえず、通知はされなかったようです。

相続放棄をしても次の管理者が決まるまでは管理責任は免れないので、今回の通知の内容からは逃れられないはずですが、優先順位が下がったということでしょう。

固定資産税課から未払いの固定資産税の支払督促が届く

次に、ほぼ同時期に市の固定資産税課から未払いの上記建物の数年分の固定資産税についての支払督促が届きました。

未分割財産のまま、本家筋の者が相続放棄する前まで固定資産税の名宛人私の祖父の兄名義のまま固定資産税を支払っていたようで、先代の相続放棄後の数年分の請求でした。

その頃には事情が理解できていましたので驚きはしませんでしたが、約60年も前の建物の件でよく同じようなタイミングで届くものだと思っておりました。

土地所有者の不動産業者(共有持分1/2)から内容証明郵便が届く

最後は、上記建物の敷地の所有者である不動産業者からの内容証明郵便が届きました。

その内容は、「上記建物について法定地上権が成立しているため、その賃借料を支払え」というものでした。

法定地上権とは、抵当権実行時に法律の定めるところによって生じる地上権ことです。

上記建物の敷地だけは、曽祖父没後に遺産分割が済んでおり、先に述べた本家筋の相続放棄によって抵当権が実行されて競売にかけられ、落札した1人がこの不動産業者ということです。

その不動産業者が建物の所有者である法定相続人全員に法定地上権に対する賃借料を請求してきた訳です。

建物の敷地の所有者である不動産業者からの内容証明郵便

わが家はどのように対処したのか

このように次から次へと舞い込んだ相続・遺産分割トラブルの対処法を紹介します。

最初の管理責任の通知が届いた際に、すぐに曽祖父(父からすれば祖父)の相続放棄の申述をしました。

相続放棄の申述は、自分が相続人であることを知ってから原則3か月以内に行えばよいのですぐに手続きしました。

手続き自体は難しくありませんでしたので、専門家に頼まずにすみました。

被相続人(曽祖父)死亡後3か月以内ではないので間違えのないようにしてください。

気になっていたのは、1代前(私からすれば祖父)の相続手続き完了後(単純承認後)に2代前の分だけ相続放棄ができるものかが不明でした。

この点について不安でしたが、家庭裁判所に確認するとそれは申述してみた結果でしか分からないという回答でしたので、結果が出るまでは気にかかっていました。

しかし、約1か月後に無事に相続放棄の申述受理通知書が届き安心しました。

市の建築指導課、固定資産税課に対しては、相続放棄の申述中であることを伝えて結果が出てからの対応である旨を伝えました。

不動産業者に対しては、この申述受理通知書のコピー送付により相続放棄済である旨を通知して対応しました。

その後の経過

不動産業者が内容証明郵便を法定相続人全員(かどうかは不明ですが)に送付したことをきっかけに事態を知ることになった法定相続人が次々に相続放棄の申述を行い、もうそろそろ受理通知書が届いた頃合いであると予想されます。

不動産業者が次の段階に進めるのかは不明です。

昨年末、父の代の生存が判明した者だけに管理責任通知した市もその後、最近になって再度のクレームのために、次の代の法定相続人にも通知を送付しているようです。

法定相続人全員の相続放棄が済めば、本家筋も含めて対等に管理責任が残る訳ですが、不動産業者の動きとの兼ね合いでどうなっていくかは読めない状況です。

固定資産税課の動きについては今のところ不明です。

結果としては、すべてのトラブルが終結したわけではない状態がまだ続いています。

数世代後に禍根を残さぬように終活する

今後、現在検討されている「相続登記の義務化」が施行されれば、こういったトラブルは減っていく訳ですが、これまでの分の一部は当分は残り続けることでしょう。

まだまだ日本人の多くは、自分の死後の事柄について話をすることを嫌がる傾向にありますが、このように

「数世代後に問題が発覚することや直系だけでなく、傍系にまでその悪影響が及ぶこと」

にまで想像が至れば、自身の終活についての取り組み姿勢が変わってくると思います。(執筆者:CFP認定者、1級FP技能士 小木曽 浩司)