在職老齢年金の制度により報酬(給与と直近1年間に受けた月額換算した賞与)が一定額を超えていたために、年金が受給できない方が多くおられます。

定年再雇用後には、現役時代よりも報酬が下がることが多いでしょう。

それなのに年金がまだカットされたままというご相談をうけます

これは、構造上の問題ではありますが手続きによりある程度コントロールすることは可能です。

今回は従業員の場合と経営者の場合に分けて解説してまいります。

給与が下がったのに年金も減額される場合

従業員の場合

従業員の場合について、見てみましょう。

随時改定(月額変更届)により通常の手続き

原則として標準報酬月額が2等級以上下がる場合は、低下した報酬を受けた月から起算して4か月目から標準報酬月額が下がります

4月から報酬が下がったとしても、実施には7月までは標準報酬月額は下がらないということです。

定年再雇用される1年前に一定額以上の賞与を受けていた場合は、その賞与も含めた報酬となるために、受給できなかったというケースです。

同日得喪にて手続き

60歳以上の方が定年退職後再雇用される場合などに選択できます。

被保険者資格喪失届と被保険者資格取得届を同時に提出することで「再雇用された月から」再雇用後の給与に応じて、標準報酬月額を決定できる仕組みです。

たとえば3月31日付で定年退職し、4月1日付で再雇用となる場合、3月までの労働契約と4月以降の労働契約は実質的に異なっています。

通常の月額変更届を提出して4か月目まで社会保険料の低下を待期することとなると、再雇用後の賃金と比べて社会保険料が重くのしかかり、家計へ与える負担は大きいと言えるでしょう

そこで法改正を経て、このような仕組みが導入されています。

同日得喪のデメリット

後者の届出を選択すれば年金の支給停止もより早期に免れられると言えますが、デメリットもあります。

病気になり労務の提供ができなくなった場合、傷病手当金の受給額が減額となります。

この場合、同日得喪を選択している場合、再雇用された月から標準報酬月額が低下することから、傷病手当金の受給額も低下するということです。

老後の年金は課税であるのに対し、傷病手当金は非課税という点も押さえておきましょう。

傷病手当金の受給額の計算は以下の通りとなります。

直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2

年金受給額、傷病手当金の受給可能性(会社で有給の病気休暇などが設けられている場合は有給となる期間、支給率なども含めて)を総合的に考慮し、決断したいところです。

この世代となると1つの決断がその後の生活設計において大きなウェートを占める場合もあります

頭の中だけでメリットデメリットがしぼりづらい場合は、紙に書きだすなどして全体をよく見て決断することで、後悔を少なくできるのではないかと考えます

経営者の場合

経営者の場合。

経営者の場合は従業員よりも多く、在職老齢年金による年金の全部または一部の支給停止を受けている可能性があります

そこでせっかく従業員よりも高い社会保険料を払ってきたことから 老後の年金を可能な限り受給したという思いが出てくると感じます。

今回は従業員との違いを含めて確認しましょう。

・ 代表取締役などの役員の場合、労働契約関係ではなく、委任関係となる

・ 役員報酬を変更する場合は事業年度開始の日から3か月以内

たとえば4月が事業開始月の場合、やむを得ない場合を除き例えば8月に変更した場合は損金に算入ができなくなります

事業年度開始から3か月以内を目安に役員報酬を変更しておくことで、早期に年金の支給停止を回避できる場合があります

しかし、4月が事業開始月であることから6月に役員報酬を引き下げたとしてもすぐに年金が支給されるわけではありません

これは、従業員と同じく月額変更届を提出しなければならないためです。

ロジックは従業員と同じく変更後の報酬を受けた月の4か月目(6月に変更した場合は9月)から変更ということです。

年金の支払い月に注意しよう

その月に支払われる年金は前月分と前々月分です。

その月の分は次回の支払い月に支払われるということです。

もし万が一お亡くなりになられた場合は必ず未支給分の年金があります

その場合は遺族が未支給年金として請求をすることとなりますが、老齢年金は課税、障害年金および遺族年金は非課税となる点もおさえておきましょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)