来月11月3日(日本時間4日未明)に迫った、今年1番の政治イベント米国大統領選挙は、日本でも毎日動静が伝えられるほどヒートアップしてきました。

それに合わせて米国株式市場は乱高下しましたが、ある一定の方向性が固まってきました。

残り2週間を切った選挙戦の現状を、前回レポートした8月10日時点からの比較を交え、日本株式相場への影響も探っていきたいと思います。

米国大統領選挙

米国大統領選挙の現状

米国大統領選挙の行方は、アフターコロナの株式相場を予想するうえで今年最大のイベントです。

どちらが勝利するにしても、株式市場が2番底に向けて急落しないことが分かればよく、9月29日を境に市場関係者のコンセンサスが形成されてきました。

ここではこれまでの世論調査の推移と、転換点となった第1回テレビ討論会、それらを踏まえた日本株式市場の展望を解説します。

世論調査の現状

世論調査をもとにした選挙戦の予想は、「270 To Win」のサイトから確認できます。

大統領選挙人は538人、うち270人を獲得すれば勝利することから、このサイト名が付いています。

8月10日時点の情勢

バイデン候補(民主党、Democrat):278

トランプ候補(共和党、Republican):169

接戦:91

バイデン候補とトランプ候補の票差
≪画像元:Electoral Ventures

※8月10日時点では候補が正式決定していなかったため、政党名で表示

10月15日時点の情勢

バイデン候補(民主党、Democrat):278

トランプ候補(共和党、Republican):169

接戦:91

バイデン候補とトランプ候補の票差の画像2
≪画像元:Electoral Ventures

このサイトによると2か月前の情勢と変わらず、民主党バイデン候補が当選ライン、と有利に立っています

一見接戦に見えますが、選挙2週間前となってもこの差が縮まらないのは致命的であり、トランプ大統領が接戦州91名全てを獲得しても敗北する予想です

第1回討論会終了後は、株式市場もバイデン勝利を予想して動き出しました。

第1回テレビ討論会を経て

1960年に始まった大統領選挙のテレビ討論会は1960年に当時43歳だったケネディ候補が当時の現職であったニクソン候補を破るきっかけになるほど投票行動に大きな影響を与えるイベントです。

では、今年9月29日に開かれた第1回テレビ討論会の結果(世論の反応)は、どうだったのでしょうか。

討論会の内容はさておき、その後のトランプ大統領コロナ感染も含め、今回のテレビ討論会で情勢は変わらなかったようです。

反対に、一部の世論調査ではバイデン候補が10%以上も支持率を引き離す結果も出ていて、バイデン候補有利の情勢です。

しかしここに来て、コロナウィルスの影響によるやっかいな事態が発生しています。

11月3日には決まらない可能性

大統領選挙の投票日は11月3日、その日の夜には開票速報が出て、日本時間の11月4日昼頃には結果が判明するというのが当初の開票スケジュールでした。

しかし、今回はコロナウィルスの関係で郵便投票が空前の件数に上り、その集計作業が当日中に判明しない事態が起きそうなのです。

州によっては11月3日当日の消印があれば有効となるようで、既に結果発表に数日かかると宣言している州もあるという状況です。

当日に投票した人の集計や出口調査による予想に郵便投票分を加えると逆転する事態があり得るということです。

しかし、11月3日夜時点で大差をつける集計結果が判明すれば、郵便投票分は消化試合のような扱いになります。

接戦となった場合には、数日間は勝利宣言も敗北宣言も出ない異例の事態となりそうです。

2016年には約1億3,800万人いた投票者のうち、2割を超える人が郵便投票または不在者投票を使って投票したと推定されています。

今年は郵便投票が5割近くに達する可能性もあるようです。

コロナ感染を軽視するトランプ大統領支持者は当日投票が多く、抑制策を支持するバイデン候補支持者は郵便投票が多いと言われています。

この投票行動も、今回の大統領選挙予想を難しくしている1つの原因なのです。

日本株式相場への影響

9月初旬から乱高下した米国株式市場をよそに菅新政権となった日本ではコロナ感染も抑えられていて、値崩れしない株式相場が続いています。

値崩れしない日本株式相場4つの要因

この強気相場の原因は日本独自の要因が3つ、米国大統領選挙にかかる要因が1つ挙げられます。

(1) コロナ感染が世界の状況に比べ抑え込まれていて、企業業績も最悪期は脱した様子である

(2) 金融緩和策は維持しながら、新政権による新たな国策への期待が高まった

(3) Go Toトラベル開始や海外渡航の一部緩和など、経済活動正常化への期待感が高まった

(4) 米国株式相場がバイデン勝利を織り込んで上昇した

ここでは米国大統領選挙にかかる要因(4) について、解説します。

米国株式相場がバイデン勝利を織り込んで上昇の背景

アメリカ大統領選挙にかかる要因について
Investing.comより、筆者作成(2020.9.1-10.14)≫

夏頃までは「トランプ大統領再選で株高、バイデン候補勝利の場合は株安」という論調が強かったNYウォール街も、第1回テレビ討論会を踏まえた世論調査から、「バイデン候補勝利、それでも株高」と予想する声が増えました。

以前はバイデン候補(共和党)が勝利したとしても、同時に行われる議会選挙で上下両院ともに共和党が過半数を握ると予想されていなかったのです。

そのため「ねじれ状態」が続くのであれば、増税や大型公共投資を打ち出しているバイデンが勝利しても公約は守られず、株安につながると見られていたのです。

それがテレビ討論会後にはトランプ大統領のコロナ軽視政策を支持する共和党自体に矛先が向かい、大統領選および上下議会選の3つ全てに民主党(党のシンボルカラー:ブルー)が勝利する「オールブルー・シナリオ」が現実味を帯びてきました

そうなれば公共事業を中心とした大投資政策が実行され、増税による景気減速よりも景気対策効果が大きくなると見て、株高予想に変わったのです。

この大統領選挙と議会選挙の結果は重要なポイントで、トランプ大統領が再選しても上下議会が民主党過半数となった場合は「ねじれ状態」となり、より混迷を極める可能性もあります。

しかし、予想は予想です。

前回2016年時も、世論調査で劣勢だったトランプ候補が勝利したのですからどちらかに賭けて投資することはお勧めしません

どちらの勝利でも日本経済には期待感

今回の大統領選挙はコロナ禍で行われる特異な選挙であること、議会選挙も大きなポイントになることなど、先が読みにくい状況です。

しかし、どのシナリオになっても日本経済は最悪期を脱しており、11月中旬の企業業績発表にも期待感があり、今年最大の政治イベントを終えた相場には投資マネーが戻って来る「年末ラリー」を予想しています。(執筆者:銀行・証券・保険業界に精通するシニアプライベートバンカー 中野 徹)