国税庁HP年末調整手続の電子化に向けた取組について(令和2年分以降)よりダウンロードできる年末調整控除申告書作成用ソフトウェアに関して、(1)で概要を説明しました。
(2)ではインストール後の操作方法について解説します。
勤務先の受け入れ態勢が整っていないなどで、残念ながら電子手続ができない方も多いと思いますが、控除額の自動計算をしてくれる点では便利です。
目次
基本情報の入力

最初に、各種申告書の記載に必要な基本情報を入力しますが、合計所得金額の見積が重要です。配偶者の所得見積も、本人分と同様に行います。

給与所得以外では、事業・雑・配当・不動産・退職の各所得を分けて入力でき、それ以外の所得は「上記以外の所得」欄に入力します。
退職所得は、収入金額・勤続年数から控除額を自動計算してくれます。
合計所得金額(見積額)計算表の入力例では、給与収入1,015万円・雑所得の収入110万円・雑所得の必要経費10万円を入力しており、合計所得金額は920万円と計算されます。
合計所得金額見積の注意点
難点を言うと、給与・退職所得以外の所得計算はあまり便利とは言えません。例えば公的年金収入がある場合は、確定申告書作成コーナーでは公的年金等控除額が収入から自動計算できるのですが、このアプリでは自動計算機能が無く手入力が必要です。
また給与と公的年金があると、給与所得から所得金額調整控除10万円を差し引けるのですが、この差引計算もアプリでは行わないので、不正確な合計所得金額を算出する恐れがあります。 さらに譲渡・一時所得の複雑な計算も仕組みを知って入力しないといけないため、給与・退職所得以外の所得がある場合は、確定申告で正確な基礎控除・配偶者(特別)控除額を計算するつもりでいたほうがいい
XMLデータの取り込み

生命保険料控除・地震保険料控除・住宅ローン控除においては、保険料控除証明書や借入金残高証明書の電子データをインポートできます。これは金融機関から取り寄せる必要があります。
マイナポータルの民間送達サービス(「e-私書箱」など)を利用して取り寄せも可能です。
ただしインポートせずとも、各種情報の手入力でも可能です。
インポート選択画面を終えたら、新規作成で作成する申告書を選択します。
よくわからなければ全部選択しても構いません。入力しなかった申告書は無効になります。
電子手続での提出を考えている場合は、ID・パスワードの設定を行うか、マイナンバーカードによる認証を行う必要があります。
扶養控除等申告書
令和2年分(本年分)と令和3年分(翌年分)の2年分を行う点に注意してください。
配偶者情報を入力する際、所得の見積はすでに終えていますが、配偶者が障害者に該当するかはここで設定します。
この点は、手書きの扶養控除等申告書とは書き方が違います。

扶養親族に関して情報の入力を行う際、配偶者と同様に障害者に該当するかを設定するほかに、所得の見積をこの段階で行う点に注意してください。
所得の見積については本人・配偶者と同様に行うことができます。
手書きの扶養控除等申告書でここまで計算するわけでは無いのですが、一連の設定が終わると扶養・障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生の各控除に関して控除額が自動計算されます。

令和2年分が終わったら、令和3年分も各種情報の入力を同様に行います。扶養親族だけでなく、配偶者の所得見積も改めて必要です。
所得金額調整控除申告書

年収850万円を超える場合で所得金額調整控除申告書を選択した場合は、所得金額調整控除の申告のために、特別障害者もしくは23歳未満扶養親族のうち該当項目を選択します。
この申告書を入力することで所得金額調整控除の要件を満たすと、合計所得金額が当初金額から最大15万円減少します。
基礎控除申告書
要となる合計所得金額の見積は終わっているので、ここは自動計算された基礎控除額の確認だけです。

画像(基礎控除額の確認)の例では合計所得金額905万円ですので、基礎控除の額が48万円と算出されています。
配偶者控除等申告書
所得の見積や配偶者の情報は扶養控除等申告書作成で行っているので、ここで行うのは入力情報の確認程度であり、配偶者(特別)控除額も自動計算されています。

例えば本人の合計所得金額905万円・配偶者の合計所得金額を100万円と見積もると、アプリでは配偶者特別控除の額が24万円と自動的に計算されます。

これが手書きの配偶者控除等申告書では、所得の見積を行った後に区分判定と控除額記載の手間がかかります。
保険料控除申告書

電子データのインポートができると簡便ですが手入力の場合でも、数値は保険料の年間支払見込額を入力すれば、数式を使った控除額の計算は自動的に行われます。
住宅借入金等特別控除申告書
住宅ローン控除でXMLを使わず手入力を行う場合ですが、まず合計所得金額の見積は終了しており、控除を受けた初年度の年を選択します。
平成30年以前が初年度ですと、このアプリを使った申告書作成はできません。

手書き用の令和2年分住宅借入金等特別控除申告書・証明書から、居住開始年月日や土地・家屋の情報を転記します。

画像の例では特別特定取得に該当し、家屋取得額1,000万円・土地取得額1,100万円で居住用割合100%・連帯債務割合50%と入力します。
(手書き用の住宅借入金等特別控除申告書・証明書と住宅借入金の年末残高証明書については令和2年分年末調整のしかたP55
より抜粋)

次は金融機関からもらう年末残高証明書から、残高・借入金額などを転記します。

画像の例では借入金が2本あり、1本目は年末残高950万円・当初借入額1,000万円、2本目は年末残高1,000万円・当初借入額1,100万円を入力します。借入日が令和元年10月24日です。

ここまでの手続きで、住宅ローン控除額は9万7,500円と自動計算されます。

手書き申告書ですと、年末残高1,950万円 × 連帯債務割合50% × 控除率1% = 9万7,500円と仕組みを理解しての計算が必要です。
データ出力
データ出力画面では、「電子データで出力する」「書面印刷」を選択できます。

電子データを選択した場合、xmlが作成されるので、このデータを勤務先に提出します。

書面印刷の場合は、前編(1)ですでに説明していますが、手書きの申告と異なり表形式で印刷されます。
最後にマイナンバーの入力ですが、過去の申告書ですでに記入しているのであれば、「マイナンバーは提供済み」を選択しても構いません。(執筆者:石谷 彰彦)