2020年3月に税制改正法案が国会で可決され、「NISA(少額投資非課税制度)」が改正されました。

これによって、2024年以降も「一般NISA」は「新NISA」(以下、改正後の「一般NISA」を「新NISA」と表記)に形を変えて2028年まで継続、「つみたてNISA」は期限を5年延長して2042年まで継続されることになりました。

「新NISA」は、「一般NISA」と「つみたてNISA」がミックスされたようなイメージで、2階建ての少し複雑な仕組みです。

特に、「新NISA」を経由するロールオーバーは取扱いが特殊で分かりにくいと感じている人も多いことでしょう。

今回は、「NISA」のロールオーバーを整理して詳細に解説していきます。

ロールオーバー 「3つのパターン」を 「6つの具体例」で解説

ロールオーバーをうまく使うことで非課税投資枠を有効活用できるかもしれません。

曖昧なところがある人は、この記事で細かい点も含めてしっかりと頭に入れておくことをおすすめします。

今後の「NISA」の流れ

本題のロールオーバーを説明する前に、前提として「NISA」に関する簡単なおさらいをしておきます。

「NISA」のスケジュール

税制改正を踏まえると、今後の「NISA」(「ジュニアNISA」は除く)は次のような流れになっていきます。

今後のNISAの流れ

今後利用できる「NISA」は、

2020年~2023年:
「一般NISA」または「つみたてNISA」

2024年~2028年:
「新NISA」または「つみたてNISA」

2029年~2042年:
「つみたてNISA」

ということになると考えられます(2020年10月時点)。

3つの「NISA」のポイント

「一般NISA」「新NISA」「つみたてNISA」の3つの制度があるわけですが、それぞれの主なポイントは次の表の通りです。

「一般NISA」「新NISA」「つみたてNISA」のポイント

非課税期間

非課税期間は「一般NISA」が5年と短く、「つみたてNISA」が20年と長めです。

年間非課税投資枠

一方、年間非課税投資枠は「一般NISA」が120万円であるのに対し、「つみたてNISA」は40万円と少額です。

「つみたてNISA」は少額での長期投資に向いているというイメージです。

「新NISA」の仕組み

「新NISA」は2階建てになっていますが、2階が「一般NISA」風、1階が「つみたてNISA」風という仕組みです。

なお、「つみたてNISA」風の1階も非課税期間が5年間と短いのですが、「つみたてNISA」へのロールオーバーが可能です。

これによって、最長25年間の長期投資もできる仕組みです。

ロールオーバーは3パターン

ロールオーバーとは
≪画像元:野村證券

それでは、本題のロールオーバーについて見ていきましょう。

ロールオーバーとは、非課税期間が過ぎた投資商品をNISA口座のなかで繰り越して保有し続けることです。

その際には、年間の非課税投資枠からロールオーバーする商品分の金額が消費されることになります。

ロールオーバーは次の3パターンに分類されます。

1.「一般NISA」から「一般NISA」

2.「一般NISA」から「新NISA」(2階 → 1階)

3.「新NISA」(1階)から「つみたてNISA」

なお、上記以外のロールオーバー(「一般NISA」から「つみたてNISA」、「つみたてNISA」から「つみたてNISA」など)はできません

ロールオーバーをする年には、ロールオーバー可能な「NISA」を選んでおく必要があるという点に注意しましょう。

それでは、3パターンのロールオーバーをそれぞれ詳細に見ていきましょう。

1.「一般NISA」から「一般NISA」

「一般NISA」から「一般NISA」へのロールオーバーができるのは、2018年以前に「一般NISA」で購入した商品です。

「一般NISA」は2023年で終了するため、2019年以降に「一般NISA」で購入した商品の「一般NISA」へのロールオーバーはできません

このロールオーバーをする場合、

年間非課税投資枠が消化される金額は、ロールオーバー時点の商品の時価ベースで計算

されます。

この時価とは、具体的には非課税期間が終了する年の12月における最終営業日の時価のことです。

なお、商品が値上がりすると「一般NISA」の投資枠である120万円を超えることがあります。

この場合についても、対象となるすべての商品をロールオーバーすることが可能です。

(1) 2017年6月に60万円で購入した商品が、2021年末時点で90万円に値上がりしているケース

2017年中に購入した商品の非課税期間は、2021年末で終了します。

この時点での時価が90万円の場合、ロールオーバーをすると2022年の投資枠が90万円消化され、新規での非課税投資は残り30万円までです。

(2) 2017年6月に60万円で購入した商品が、2021年末時点で150万円に値上がりしているケース

ロールオーバー時点での時価が年間非課税投資枠の120万円を超えていますが、問題なくすべてをロールオーバーできます

この場合、2022年の投資枠120万円はすべて消化されるため、新規での非課税投資はできなくなります。

ロールオーバーの具体例

2.「一般NISA」から「新NISA」(2階 → 1階)

「一般NISA」から「新NISA」へのロールオーバーの対象となるのは、2019年~2023年に「一般NISA」で購入した商品です。

ただし、「一般NISA」と「新NISA」では投資可能商品が異なるという点に注意が必要です。

「新NISA」で投資できない一部のハイリスク商品はロールオーバーもできません。

このロールオーバーをする場合にも、「一般NISA」→「一般NISA」の場合と同様に年間非課税投資枠が消化される金額はロールオーバー時点の時価ベースです。

なお、

「新NISA」の年間非課税投資枠には1階20万円と2階102万円

がありますが、まずは2階部分から順に消化されることになっています。

2階部分がすべて消化されると、1階部分が消化されます。

1階と2階の合計122万円を超えるケースも考えられますが、その場合でも対象となるすべての商品をロールオーバー可能です。

(1) 2022年2月に60万円で購入した商品が、2026年末時点で40万円に値下がりしているケース

ロールオーバー時点での時価が40万円なので、2階部分が40万円消化されることになります。

そのため、2027年の年間非課税投資枠の残りは、1階20万円と2階62万円ということになります。

(2) 2022年2月に60万円で購入した商品が、2026年末時点で110万円に値上がりしているケース

ロールオーバー時点での時価が110万円なので、まずは2階の102万円をすべて消化したうえで、1階でも8万円が消化されることになります。

そのため、2027年の年間非課税投資枠の残りは1階12万円のみということになります。

3.「新NISA」(1階)から「つみたてNISA」

「新NISA」(1階)から「つみたてNISA」へのロールオーバーの対象となるのは、2024年~2028年に「新NISA」(1階)で購入した商品です。

このロールオーバーをする場合には、年間非課税投資枠が消化される金額が取得価格ベースです。

他の2パターンと比べて特殊な取扱いとなっているので、注意しておきましょう。

「新NISA」(1階)の年間投資枠は20万円なので、ロールオーバーをした際の投資枠の消化金額は上限20万円ということになります。

ロールオーバー先の「つみたてNISA」の年間投資枠は40万円なので、ロールオーバーをしても20万円以上の投資枠が残るようになっています。

「新NISA」(1階)は非課税期間が5年ですが、ロールオーバーすることで「つみたてNISA」の20年と合わせて25年にわたる非課税投資も可能です。

そのうえで、新規投資枠も残るような制度になっているというわけです。

(1) 2024年12月に20万円で購入した商品が、2028年末時点で50万円に値上がりしているケース

ロールオーバー時点の時価が50万円に値上がりしていますが、消化されるのは取得価格である20万円です。

そのため、2029年の年間非課税投資枠は20万円残ることになります。

(2) 2024年1月に20万円で購入した商品が、2028年末時点で10万円に値下がりしているケース

ロールオーバー時点の時価が値下がりした場合についても、消化されるのはあくまでも取得価格です。

そのため、2029年の年間非課税投資枠は20万円残ることになります。

非課税投資枠がどう残るか

今回は「NISA」のロールオーバーについて細かく見てきました。

特に、ロールオーバー時に非課税投資枠がどう残るかが少し複雑ですが、具体例を見ていけば理解しやすいかと思います。

最後に、この記事のポイントを簡単におさらいしておきます。

・「一般NISA」からのロールオーバーは、非課税期間が終了する年における12月最終営業日の時価ベースで行われる

・ ロールオーバーが可能な対象商品については、いくら値上がりしてもすべてロールオーバーできる

・「新NISA」(1階)から「つみたてNISA」へのロールオーバーは取得価格ベースなので、ロールオーバーした年も年間非課税投資枠が少なくとも20万円は残る

・「新NISA」(1階)は、ロールオーバーを利用すれば最長25年の非課税投資ができる

やや細かいところもありますが、これを機に正確に理解しておきましょう。

非課税投資枠をできるだけ有効活用して、効率の良い投資を実現していただければと思います。(執筆者:貝田 凡太)