年金の支給開始は原則65歳となっていますが、少しでも年金受給額を増やすために支給開始を遅らせる「繰り下げ受給」を考える人もいるのではないでしょうか。

しかし、65歳時点で「年金なしでも大丈夫」と言えるほど家計に余裕がない場合もあり、悩ましいところです。

この年金の「繰り上げ」「繰り下げ」は、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」とで別々の時期にずらせます

詳しく見ていきましょう。

「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」余裕がない人の受け取り方法

「老齢基礎年金」とは

「老齢基礎年金」は、国民年金や厚生年金保険などに加入して保険料を納めた人が受け取る年金です。

保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した受給資格期間が10年以上必要で、加入期間に応じて年金額が計算されます。

「老齢厚生年金」とは

「老齢厚生年金」は、会社員や公務員などの「第2号被保険者」が「老齢基礎年金」に上乗せして受け取る年金です。

厚生年金保険の被保険者期間が1か月以上必要(65歳未満で受け取る「老齢厚生年金」には、1年以上の被保険者期間が必要)で、現役時代の給与や賞与の額に応じて年金額が計算されます。

年金の「繰り上げ」「繰り下げ」は別々にできる

年金の支給開始は原則65歳となっていますが、申請すれば60~70歳の範囲で1か月単位で選べます(2020年10月現在)。

「繰り上げ受給」

65歳より前倒しで受取り開始することを「繰り上げ受給」と言い、1か月繰り上げるごとに年金月額が0.5%減額されます。

60歳から支給開始すると年金月額は30%減った金額になり、それが一生続きます

「繰り下げ受給」

65歳より先延ばしで受取り開始することを「繰り下げ受給」と言い、1か月繰り下げるごとに年金月額が0.7%増額されます。

70歳まで支給を遅らせると年金月額は42%増えた金額になり、それが一生続きます

この年金の「繰り上げ」「繰り下げ」は、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」とで別々の時期にずらせます

たとえば

「老齢厚生年金」だけを65歳からもらい始め、「老齢基礎年金」の受け取りを70歳まで先延ばしすることで、「老齢基礎年金」部分は42%増額された年金を受け取る

ことも可能です。

「老齢厚生年金」とセットになる「配偶者加給年金」

「老齢厚生年金」とセットになる「配偶者加給年金」

「老齢厚生年金」には、扶養手当に相当する「配偶者加給年金」というものがあります。これは「老齢基礎年金」にはない制度です。

配偶者加給年金」は、厚生年金に20年以上加入した人が65歳になったときに、年下の被扶養配偶者が65歳になるまで支給されます。

会社員の夫によって生計を維持されている被扶養配偶者(いわゆる専業主婦)が多いため、給与収入から年金収入になった際にも「扶養手当」に相当するものが支給されるということです。

「配偶者加給年金」の金額は、「老齢厚生年金」の受給権者本人の年齢によって異なります。

たとえば、受給権者の生年月日が1943年4月2日以後の人であれば「配偶者加給年金」として年額39万100円が支給されます。

ちなみに、被扶養配偶者が年上の場合には、被扶養配偶者が先に65歳になって自分の年金を受給しているため、この制度は適用されません

ただし、年齢によっては、夫が65歳になったときに「配偶者加給年金」が妻側に「振替加算」となり妻の年金が増額されます(~1966年4月1日生まれまでの人)。

注意したいのが、この「配偶者加給年金」は年金の「繰り上げ」「繰り下げ」をしても金額が変わらないという点です。

また、「老齢厚生年金」と「配偶者加給年金」はセットで支給開始となるため、「老齢厚生年金」を繰り下げ受給して受取りを先延ばしすると、セットになっている「配偶者加給年金」も受け取れません

しかも繰り下げ期間中に配偶者が65歳になると、「配偶者加給年金」は1円も受け取れないまま終了してしまいます。

「老齢厚生年金」「配偶者加給年金」を受け取り、「老齢基礎年金」を先延ばし

年金受取額は多い方がよいのですが、「一気に繰り下げて受取りを先延ばしできるほどの余裕はない…」という人は、

65歳時点で「老齢厚生年金」+「配偶者加給年金」を通常通り受け取り、「老齢基礎年金」だけを繰り下げて、受け取る年金額を少しでも増やす

というのも1つの方法です。(執筆者:元商工会職員 久慈 桃子)