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年末調整、再年末調整、確定申告の使い分けの判断基準 「課税所得」の算出方法

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年末調整、再年末調整、確定申告の使い分けの判断基準 「課税所得」の算出方法

課税所得の算出方法

個人事業主に課税される所得税を算出する際は、1~12月の事業収入の合計から、事業のための必要経費を引いて、事業所得を算出します。

(A) 事業収入の合計 – 必要経費 = 事業所得

会社員(正社員、契約社員、パートやアルバイトなど)の場合は、1~12月の給与収入の合計から、会社員の必要経費にあたる「給与所得控除額」を引いて、給与所得を算出します。

(A) 給与収入の合計 – 給与所得控除額 = 給与所得

また年金受給者の場合は、1~12月の年金収入の合計から、年金受給者の必要経費にあたる「公的年金等控除額」を引いて、公的年金等にかかる雑所得を算出します。

(A) 年金収入の合計(非課税の障害年金と遺族年金は除く) – 公的年金等控除額 = 公的年金等にかかる雑所得

ここまでは得られる収入によって、計算式に違いがありますが、これ以降の(B) と(C) は、収入による違いはありません

(B) 各所得(給与所得、事業所得、公的年金等にかかる雑所得) – 所得控除(基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除、生命保険料控除など)の合計 = 課税所得

(C) 課税所得 × 税率(5~45%) – 税額控除(住宅ローン控除など)の合計 = 課税される所得税

以上のようになりますが、(A) → (B) →(C) の順で進めていくと、各人に課税される所得税の、大まかな目安がわかります。

課税所得の算出方法

年末調整は所得税の過不足を会社が精算する手続き

会社員に対して課税される所得税は上記のように、1~12月の給与収入の合計を元にして算出するため、年内最後の給与が支払われるまで、正確な金額を算出できません

ただ正確な金額がわかった後に、所得税の一括納付を求めると、給与収入の合計によっては、多額の費用が必要です。

そこで会社は概算額の所得税を、1月以降に支払う給与から源泉徴収して、税務署に納付します。

また会社は年内最後の給与を支払う際に、源泉徴収した概算額の所得税の合計と、(A) → (B) → (C) の順で算出した正確な金額の所得税を、比較してみます。

両者を比較した時に、「源泉徴収した概算額の所得税の合計>正確な金額の所得税」になっていた場合には、 徴収し過ぎた所得税を、従業員に還付します。

一方で「源泉徴収した概算額の所得税の合計<正確な金額の所得税」になっていた場合には、不足する所得税を従業員から徴収して、税務署に納付します。

このような所得税の過不足を、会社が精算する手続きが、いわゆる「年末調整」になります。

確定申告と年末調整は同じような内容の手続き

年末調整と関係がある手続き、または年末調整と同じような手続きとして、「再年末調整」と「確定申告」があります。

前者の再年末調整とは、従業員が申告した内容と事実に、違いがあったなどの理由により、会社が年末調整をやり直す手続きです。

一方で後者の確定申告とは、(A) → (B) → (C) の計算を自分で行い、その結果を税務署に申告する手続きです。

また計算の結果として、納付する所得税がある場合には、所定の納付書などで税務署に納付し、還付される所得税がある場合には、各人の預貯金口座で還付を受けます。

このように確定申告と年末調整は、ほぼ内容が一緒のため、多くの方はどちらか一方だけで良いのです。

ただ副業でアルバイトをしている方の給与所得が、年間で20万円を超える場合などについては、本業の会社で年末調整を受けていても、確定申告をする必要があります

年金受給者は確定申告で所得税が還付される

年末調整、再年末調整、確定申告の使い分けについて考えてみると、次のようになると思います。

個人事業主

年末調整や再年末調整を受けられない個人事業主は、自分で確定申告をやる必要があります

ただ(A) の事業所得から、(B) の基礎控除(一部の高所得者以外は48万円)を引いた段階で、課税所得がゼロになった場合には、確定申告をやらなくても良いのです。

年金受給者

年末調整や再年末調整は給与をもらっている方が受けるものなので、年金受給者には関係がありません。

また「公的年金等の収入金額の合計が年間で400万円以下」と、「公的年金等以外の所得が年間で20万円以下」という、2つの要件を満たす場合には、確定申告をする必要はありません。

ただ(B) の所得控除の中で、受けられるものがある場合(例えば生命保険に加入しているので、「生命保険料控除」を受けられる)には、確定申告をすると、老齢年金から源泉徴収された所得税が、還付される可能性があります

会社員

多くの方は年末調整で、所得税の精算が完了するので、再年末調整や確定申告が関係してくるのは、一部の方だけです。

年末調整、再年末調整、確定申告 の判断

年末調整の後に変化があったら再年末調整をお願いする

年末調整が終わってから、その年の12月31日までに、例えば次のような出来事があると、(B) の所得控除の合計が変わる可能性があります。

合計が増えるケースと影響を受ける所得控除

・ 結婚して扶養家族が増えた(配偶者控除)

・ 新たに生命保険に加入して保険料を支払った(生命保険料控除)

・ 国民年金の保険料を追納した(社会保険料控除)

・ 配偶者の年収が見積より減った(配偶者特別控除)

合計が減るケースと影響を受ける所得控除

・ 扶養していた配偶者と離婚した(配偶者控除)

・ 配偶者の年収が見積より増えた(配偶者特別控除)

また所得控除の合計が変わると、課税所得が増えたり、減ったりするため、課税される所得税が変わります

そのため会社に対して、再年末調整をお願いして、所得税を再計算してもらいます。

再年末調整をお願いできるのは、基本的には翌年の1月31日までになるため、年末調整が終わった後に渡された源泉徴収票を返して、早めにお願いした方が良いと思います。

年末調整では受けられない所得控除がある

会社が上記のような理由で、従業員から再年末調整の依頼を受けた場合、事務負担が増えてしまうため、会社によっては再年末調整をやってくれない可能性があります。

このようなケースや、再年末調整の期限を過ぎてしまった時は、所得控除の合計が変わった後の、正しい所得税を申告する手段は、確定申告になってくるため、会社員でも確定申告が関係してきます

また「医療費控除」「雑損控除」「寄附金控除」などの所得控除については、原則的には年末調整では受けられないため、会社員でも確定申告が関係してきます。

その他に(C) の住宅ローン控除は、年末調整で受けられますが、1年目だけは確定申告が必要です。

確定申告の書類を提出する時期は通常であれば、翌年の2月16日~3月15日くらいです。

ただ医療費控除などの所得控除で、所得税の還付を受ける「還付申告」の期限は、翌年の1月1日から5年になるため、会社にお願いして源泉徴収票を再発行してもらえば、さかのぼって手続きができます。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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