子どもにかかる教育費用のうち、一般的に最も高額なのが大学進学費用です。

1年あたりの学費負担額は、

国公立大学で約54万円

私立大学は文系学部で約90万

理系学部で約120万円

医歯系学部は約300万円

にものぼります。

日本学生支援機構の調べでは、大学生の約半数が奨学金制度を利用しています。

子どもの夢の実現のために手助けとなる奨学金制度ですが、卒業後の返済が苦しいとの話も聞こえてきます。

今回は、無理のない奨学金返済のために、返済を軽減させる方法を解説します。

無理のない「奨学金返済」を

奨学金の落とし穴、返済義務は学生本人にある

奨学金制度は、家計から学費を捻出するのが難しい保護者のための制度ではありません。

家計には頼れないものの、学修意欲がある学生本人のための支援制度です。

そのため、貸与されるのも、返済義務があるのも、学生本人です。

まずは、奨学金制度のおさらい

各大学や地方自治体、民間団体など、さまざまな設置団体が学生に対する奨学金制度を設けています。

返済不要の「給付型奨学金」と返済が必要な「貸与型奨学金」に大別でき、一時金から毎月支給まで受け取り方もさまざまです。

また、支援対象となる基準は、設置団体によって異なります。

ここからは、奨学金を借りている人のうち約85.5%が利用している「日本学生支援機構(JASSO)」の貸与型奨学金を取り上げて、解説します。

参照:独立行政法人日本学生支援機構(pdf)

第一種奨学金・第二種奨学金の違いは、利息がつくかどうかだけではない

日本学生支援機構では、第一種奨学金(無利息)と第二種奨学金(利息あり)という2種類の「貸与型奨学金」を扱っています。

それぞれに世帯収入や学修状況などの基準が異なり、第二種奨学金のほうが借りやすく設定されています

貸与の最低金額はどちらも月額2万円ですが、上限金額は大きく異なります。

第一種奨学金では、学校種別や通学形態などによって4万5,000~6万4,000円までとされている一方で、第二種奨学金では12万円まで選択可能です。

また、第一種奨学金と第二種奨学金は併用が可能で、より大きな金額を借りることもできます。

参照:日本学生支援機構(pdf)

借りた分は、返済しなければならない

「貸与型」奨学金は、借りているお金です。

必ず返さなくてはなりません

奨学金の返済は、大学卒業後7か月目から始まります。

借りた額に応じて、返済期間と毎月の返済額が決まり、最長で20年間返済を続けることになります

卒業後の経済状況によっては、返済が厳しいこともあるでしょう。

もしも、返せなくなってしまったら、どうなるのでしょうか。

奨学金もし返せなくなったらどうしよう

奨学金返済を延滞するとどうなるのか

奨学金を延滞すると、まず延滞している日数分の「延滞金」が課せられます

延滞が3か月以上続く場合は、個人信用情報に延滞状況が記録されるため、クレジットカードの使用や新規契約などが難しくなります。

自宅や勤務先にも督促・請求の文書が届き、未返済分の一括請求がおこなわれることもあります。

最悪の事態としては、裁判所を通した法的措置がとられ、給与や財産を差し押さえられることになってしまいます。

そうならないためには、どうしたらいいのでしょうか。

返せる分だけを借りるのが大原則

助けてもらうために借りる奨学金が、将来の自分を苦しめることになっては本末転倒です。

どのくらいの負担になるのかを、事前に考えておくことが大切です。

大学入学から卒業まで4年間(48か月)奨学金を借りた場合の返済額

第一種奨学金も第二種奨学金も、返済が必要な点で変わりはありません

ここでは、利息は除外して、単純に借りた金額がどのくらいの大きさになるのかを比較しましょう。

貸与月額2万円の場合

2万円 × 48か月=96万円

96万円 ÷ 約8,000円=120回(10年間)

毎月約8,000円の返済を、10年間続けます。

影響がないとはいえませんが、なんとか払い終えることができそうな金額です。

貸与月額12万円の場合

12万円 × 48か月=576万円

576万円 ÷ 20年(240回)=約2万4,000円

奨学金の返済可能期間をすべて使っても、20年間、毎月2万4,000円もの金額を返さなければなりません

相当厳しい状況になることがわかります。

日本学生支援機構の公式サイトでは、さまざまなシミュレーションがおこなえます。

事前に、しっかりと確認しておきましょう。

参照:日本学生支援機構

借りた後は、効率よく返済することで利息負担額を減らす

奨学金額を減らすことはできませんが、利息部分の負担額を減らすことは可能です。

第二種奨学金の利息は、一般的なローンよりも低く設定されていますが、できるかぎり節約しましょう。

繰り上げ返済を利用する

奨学金は、いつでも任意の月数分・金額での繰り上げ返済が可能です。

繰り上げ返済をすると、返済期間が短縮され、その分利息を節約できます

特別な手数料は不要のため、少額ずつでもこまめに繰り上げ返済することが、無駄のない返済に役立ちます。

第二種奨学金であっても、在学中は無利息です。

学資保険満期金や祝い金などを受け取ったときは、在学中から繰り上げ返済をすることで、後がぐっと楽になります

別の奨学金への切り替えを試みる

卒業してからは使えませんが、在学中ならば挑戦する価値がある方法を紹介します。

「貸与型」奨学金は「借りる」ものですが、中には「もらう」タイプの奨学金もあります。

それが「給付型奨学金」です。

大学費用無償化を申請する

2020年4月より、国による「高等教育の修学支援新制度」が始まり、日本学生支援機構の給付型奨学金給付と「授業料の減免」がおこなわれることになりました。

対象は住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯(年収目安約380万円以下)で、学修意欲・学修状況についても厳しい要件が設けられています。

申請は無料です。

新型コロナウィルス感染症の影響で家計状況が悪化してしまったが、学生本人の学修意欲が高い場合など、まずは問い合わせてみるといいでしょう。

参照:文部科学省

大学や民間団体の給付型奨学金を目指す

大学や民間団体の給付型奨学金を目指す

各大学では、さまざまな奨学金制度を用意しています。

その中には、一定水準の成績を修めた場合に受け取れる給付型奨学金も含まれています

また、民間団体でも学業優秀者や将来有望な学生に対する大型の給付型奨学金を用意しているところが多くあります

基準はそれぞれに異なり、該当者は1名のみの厳しいものから、一定水準以上に達すれば全員受け取れるものまでさまざまです。

在籍する大学の支援課や公式サイトで、詳細を確認できます

一時金タイプならば繰り上げ返済に使え、月額給付タイプならば、それまでの奨学金を減額・停止することができるかもしれません。

学業向上にも役立つため、挑戦することが無駄になりません

どうしても返済困難なときの救済制度

どうしても返済が難しくなってしまうときもあるでしょう。

目先の返済額に充てるための資金を、別の金融機関で借りる方法は危険です。

日本学生支援機構では、いくつかの救済制度が整えられています

しかし、延滞中は申請できないものもあります。

また、状況確認をおこなうため即日対応できるとは限りません。

とにかく早めに連絡し、相談することが大切です。

毎月の返済額を減らしてもらう「減額返還」

一定期間、月々の返済額を1/2あるいは1/3に減額する方法です。

その分、返済期間は延長されますが、月々の負担は軽減されます

一定期間返済を待ってもらう「返還期限猶予」

一定期間、返済を停止する方法です。

その分、返済終了年月も延期されますが、先送りしている期間に経済状況を立て直すのに役立ちます

停止期間中に、返済金額が増えることはありません。

返済が免除される場合もある「返還免除」

本人の死亡、または精神・身体の障害により労働能力を喪失したと診断された場合は、全部または一部の返済が免除されます。

参照:日本学生支援機構

親子で説明会に出向くなどして、しっかり理解しておくことが大切

奨学金制度を申し込むとき、学生本人はまだ子どもであることが多いでしょう。

頭でわかっていても、現実問題として理解できていない可能性が高いです。

親子でしっかりと話し合っておくことが大切です。

奨学金制度は、金利や返済制度の点から見ても、利用者にとても有利な制度です。

しっかりと利点を感じられるように、うまく使いこなしましょう。(執筆者:仲村 希)