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預金通帳の有料化で「宙に浮く保険金」の問題が再注目 未払いを防ぐためにすべきこと

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預金通帳の有料化で「宙に浮く保険金」の問題が再注目 未払いを防ぐためにすべきこと

昨年の夏頃から今年の初めにかけて、預金通帳の発行が有料化されるというニュースを、何度も聞いたという印象があります。

このニュースについて改めて調べてみると、次のような都市銀行と地方銀行が、預金通帳の有料化を発表しておりました。

「宙に浮く保険金」問題

(1) みずほ銀行

2021年1月18日から個人か法人かを問わず、預金通帳を発行する時に、税込で一冊あたり1,100円となる、通帳発行手数料が徴収されます。

ただ2021年1月17日以前に口座開設した方、預金通帳の発行時や繰越時に70歳以上の方については、通帳発行手数料が発生しないようです。

(2) 三井住友銀行

2021年4月1日から個人か法人かを問わず、紙の預金通帳を利用する場合には、税込で年550円の手数料が、対象口座から自動的に引き落としされます。

ただ2021年3月31日以前に口座開設した方、18歳未満または75歳以上の方については、手数料が発生しないようです。

(3) 横浜銀行

2021年2月16日から預金通帳を発行する時に、個人の顧客に限り、税込で一冊あたり1,100円となる、通帳発行手数料が徴収されます。

ただ2021年2月15日以前に口座開設した方、預金通帳の発行時や繰越時に70歳以上の方については、通帳発行手数料が発生しないようです。

以上のようになりますが、今のところは有料になる対象者が限定されているため、大きな影響はないと考えられます。

しかし今後は対象者が拡大したり、他の銀行が同様の制度を導入したりする可能性があります。

こういった動きが進んでいくと、取引履歴や預金残高は預金通帳ではなく、パソコンやスマホの画面で確認するのが、一般的になるのかもしれません。

宙に浮く保険金は終身型の死亡保険で発生しやすい

2014年頃の話だと思いますが、多くの生命保険会社が解決に向けて調査を開始した、「宙に浮く保険金」という問題を、新聞などがよく取り上げておりました。

この宙に浮く保険金とは、請求できる権利が発生しているのに、受取人が請求手続きをしていないため、未払いになっている生命保険の保険金になります。

ある生命保険会社が90歳以上の契約者の約1万1,000人について、調査を実施したところ、2割弱にあたる約2,000人は、すでに亡くなっていたにもかかわらず、保険金が支払われていなかったようです。

また未払いになっている生命保険の大半は、保険料の払い込みが終わっている、保険金の平均額が300万円くらいの、終身型(死亡するまで保障が続くタイプ)の死亡保険だったそうです。

1社だけの調査で、約60億円(2,000人 × 300万円)もの未払いがあったのですから、国内で営業している生命保険会社の、すべての未払いを合計したら、膨大な金額になると思います。

しかも保険金には請求期限(原則的には死亡日から3年)があるため、膨大な金額の一部は、受取人の手元に渡らずに、無駄になってしまう可能性があるのです。

保険金を請求できない

死亡保険は他の保険より未払いになりやすい

保険料の払い込みが終わっている終身型の死亡保険で、未払いが多い理由を推測してみると、例えば医療保険やがん保険については、これらの保険の契約者が、給付金を請求する場合が多いと思います。

このように契約内容の説明を受けた方が、給付金を請求するのであれば、未請求になりにくいのです。

一方で死亡保険については、契約者が亡くなった時に、その親族が保険金を請求する場合が多いと思います。

そのため死亡保険に加入していた事実を、親族が把握していなかった場合、または加入していた生命保険会社を、親族が把握していなかった場合には、未請求になる可能性があるのです。

また契約者が保険料を払い込みしている間は、死亡すると預金口座が凍結され、保険料の引き落としができなくなるため、生命保険会社は死亡したことに気が付きます。

一方で保険料の払い込みが終わっていると、こういった状況にならないため、死亡したことに気付きにくいのです。

仮に気付いたとしても、住所が変更になっていると、生命保険会社は連絡ができないのです。

こういった複数の理由により、保険料の払い込みが終わっている終身型の死亡保険は、未払いが多くなると推測されます。

預金通帳は未払いを防ぐために役立っている

亡くなった方が加入していた死亡保険の情報を、親族が把握していなかった時は上記のように、保険金が未請求になる可能性があります。

ただこういった状況でも、期限内に請求手続きを済ませ、保険金を受け取った方がいるのです。

それは例えば遺品を整理している時に、保険証券、ご契約内容のお知らせ、保険料控除証明書などを見つけた方になります。

また亡くなった方が保有していた預金通帳の取引履歴を、遡って調べていき、特定の生命保険会社が保険料を引き落とししているのを、見つけた方になります。

パソコンやスマホの画面からも、取引履歴を確認できますが、銀行のウェブサイトにログインするための、IDやパスワードなどがわからないと、取引履歴を確認できません

それ以前に預金通帳が未発行で、スマホをキャッシュカードの代わりに使っていた場合には、亡くなった方がどの銀行と取引していたのかが、わからない可能性があるのです。

こういった理由があるため、預金通帳の有料化を受けて、これを持たない方が増えると、宙に浮く保険金の問題が、再注目されるのではないかと思うのです。

生命保険のリストを作って親族と共有する

親族とデータを共有する

地震や台風などの災害で、生命保険契約に関する手掛かり(例えば保険証券)を失い、保険金の請求が困難な場合があります。

こういった時は生命保険協会内の「災害地域生保契約照会センター」に、照会してみるのです。

照会があると災害地域生保契約照会センターは、照会者が提供した情報を、生命保険協会に加盟している、すべての生命保険会社に伝えたうえで、生命保険契約の有無に関する調査を依頼します。

そのため個別の生命保険会社に対して、1社ずつ調査を依頼する手間が省けるのです。

また生命保険契約を確認できた場合は原則として、加入していた生命保険会社から照会者に連絡があります。

こういった仕組みの「災害地域生保契約照会制度」を利用できるのは、災害救助法が適用された地域で、被災した場合に限られているため、災害がなければ利用できないのです。

ただ生命保険協会の発表によると、災害がない時でも利用できる制度に、2021年7月から改正したい意向のようです。

そうすると亡くなった方が加入していた死亡保険の情報を、親族が調べやすくなるため、宙に浮く保険金が減少する可能性があります。

これは良いことですが、加入している生命保険のリスト(生命保険会社の名前、商品名、保険金の支払事由、保険金額などを記入)を作って、親族と共有しておけば、照会制度を利用する必要はないのです。

またリストを作成している過程で、必要性が低い保障が見つかったら、早めに見直しするのが良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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