健康保険法では、業務外の疾病または負傷により労務不能となり一定以上収入が減少した場合に「傷病手当金」が支給されることになっています。

一般的には年齢を重ねるごとに病気等のリスクはあがり、若年層よりも「傷病手当金」の受給可能性は高まると考えられます。

一方で、年齢を重ねるということで「老後の年金」(原則は65歳~受給開始)の支給も開始されます。

両方の受給権を満たした場合には、同時に両方受給することができるのでしょうか。

「傷病手当金」と「老齢厚生年金」、「傷病手当金」「障害年金」は同時に受給可能なのか

健康保険「傷病手当金」の支給対象

次の要件を満たした方が「傷病手当金」の支給対象です。

・ 健康保険の被保険者であること

・ 業務外の疾病または負傷により労務不能であること

・ 労務不能となってから継続して3日を経過していること

なお、ここで言う健康保険とは会社で加入する健康保険のことです。国民健康保険の「傷病手当金」は「任意給付」となっているので、各市町村へ事前の確認が必要です。

健康保険から支給される「傷病手当金」の給付額はおおむね月給の2/3です。

その他の留意点として「傷病手当金」は非課税ではあるものの、社会保険の扶養の範囲内の収入には含まれるという点はおさえておきましょう。

また、「傷病手当金」は非課税であることから確定申告すべき収入には含まれません

しかし、「傷病手当金」の受給中であり、年の途中で退職となった場合には労務不能前に受けていた給与において所得税が多く控除されている可能性もあるので確定申告が必要です。

「老後の年金」とは

「老後の公的年金」(「老齢年金」)には、国民年金から支給される「老齢基礎年金」と厚生年金から支給される「老齢厚生年金」があります。

原則として10年以上保険料を納めると受給権を得られます。

「老後の公的年金」の受給額

「老後の公的年金」(「老齢年金」)の受給額は、

「老齢基礎年金」:20歳~60歳までの40年間を全て納めて月額約6万5,000円

「老齢厚生年金」:(現役時代の報酬額にもよりますが)月額約15万円

です。

「傷病手当金」と「老齢年金」同時に両方受給は可能なのか

結論としては、会社員として勤めている間は「老齢年金」(「老齢基礎年金」「老齢厚生年金」)と「傷病手当金」との調整はありません。

しかし、

退職して健康保険の資格を喪失した後に継続給付として「傷病手当金」を受給する場合には「老齢年金」との調整

があります。

調整があるとは「傷病手当金」を支給しないということです。

しかし、

「老齢年金」を360で除した額が「傷病手当金」より少ない時には差額が支給される

ことになります。

なお、健康保険の資格喪失後の継続給付として「傷病手当金」を受給するには次の2点を満たしておく必要があります。

・ 資格喪失日の前日までに引き続き1年以上被保険者であった

・ 被保険者の資格を喪失した際に「傷病手当金」の支給を受けている

「障害年金」を受給できる場合とは

障害年金」を受給できる場合とは

同一の疾病または負傷により「障害厚生年金」を受けられる場合には「傷病手当金」は支給されません

しかし、

「障害厚生年金」(同一の事由により障害基礎年金を受けることができる場合には合算額)を360で除した額が「傷病手当金」の額より少ない場合には、次のように計算した「傷病手当金」との差額が支給されます。

1. 報酬なし、出産手当金なし

「障害年金」と「傷病手当金」との差額

2. 報酬なし、出産手当金あり

「出産手当金」と「障害年金」のいずれか多い額と「傷病手当金」との差額

3. 報酬あり、出産手当金なし

報酬と「障害年金」のいずれか多い額と「傷病手当金」との差額

4. 報酬あり、出産手当金あり

報酬、報酬と調整がなかったとした場合の「出産手当金」の額、「障害年金」のいずれか多い額と「傷病手当金」との差額

「失業手当」とも調整される

「老齢年金」は健康保険の資格喪失前であれば「傷病手当金」と同時に両方を受給可能です。

しかし、健康保険の資格喪失後には調整する規定があり、

まずは「傷病手当金」を支給しないようにして、「老齢年金」の金額が少ない場合には「傷病手当金」との差額を支給する

ということです。

「障害年金」を受給中の場合には「老齢年金」のように健康保険の資格喪失前後で異なった取り扱いをするような規定はなく、まずは「傷病手当金」が支給されない仕組みです。

しかし、

「障害年金」が「傷病手当金」よりも少ない場合には差額が支給される

ということです。

「老齢年金」には、「傷病手当金」や雇用保険から支給される「失業手当」とも調整される規定があります。

「傷病手当金」や「失業手当」には自身でコントロールできない要素も含まれていますが、労働収入が少なくなることからも知識としておさえておきたいところです。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)