何歳からが「老後」なのか、人それぞれ考えがあるでしょう。

高年齢者雇用安定法によって雇用が確保されている年齢が65歳、公的年金の受け取りが始まる年齢も65歳です。

このように「収入源が切り替わる65歳」を、ひとつのボーダーラインとして考える人も多いでしょう。

実は、このボーダーラインをずらすことで、大きなメリットが得られることはご存じでしょうか。

今回は、年金を大幅に増額する方法について、詳しくお話します。

受け取りのタイミングを変えるだけで 「受給額」が変わる

公的年金は、いくら受け取れるのか

まずは、公的年金の仕組みを簡単におさらいしましょう。

公的年金には、国民年金と厚生年金があります。

国民年金は、日本に暮らす20歳から60歳の人すべてが加入しているもの、厚生年金は会社員や公務員が加入しているものです。

年金には、「障害年金」「遺族年金」などいくつかの種類があり、老後に受け取るものを「老齢年金」と呼びます。

国民年金(老齢基礎年金)は、満額受給できても月額6万5,000円

老齢基礎年金の額は年によって異なり、2020年は78万1,700円、月額に換算すると約6万5,000円です。

40年間毎月欠かさず年金保険料を納めると、受給額が「満額」になります

納めていない月がある場合は、その分減額される仕組みです。

保険料納付済み期間と保険料免除期間を合わせて10年以上ある場合に、受給資格が得られるという点に注意が必要です。

参照:日本年金機構

厚生年金(老齢厚生年金)は働き方によって金額が異なる

老齢厚生年金は、収入に応じて年金保険料金額が異なります。

また、「厚生年金に加入している会社に勤めている間」のみが対象のため、それぞれの働き方によって加入期間も異なります

そのため、受給金額も人によって大きく異なります。

厚生労働省の資料では、平均月額約14万6,000円ですが、実際は月額数千円から数十万円まで大きな差がつくでしょう。

「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などで、自分の受給額・受給見込額を把握しておくことが必要です。

厚生年金を納めている期間が1年以上ある場合に、受給資格が得られます。

参照:日本年金機構厚生労働省(pdf)

受け取るタイミングを考えるだけで増額が期待できる

受け取るタイミングを考えるだけ

通常、老齢年金の受給は65歳になったときに始まります。

しかしながら、この受給開始月を早めたり遅らせたりもできるのです。

受給のタイミングを60歳から64歳11か月までに早めることを「繰り上げ受給」、66歳から70歳までに遅らせることを「繰り下げ受給」といいます。

これらは月単位で申請することができ、ずらした分、年金額が変わります

遅らせた月数分、年金が増える「繰り下げ受給」

繰り下げ受給をおこなうと、遅らせた月数分に応じて年金額が増加します。

増額率=繰り下げた月数(受給開始月-65歳に達した月) × 0.7%

年金保険料の追加などは不要で、増額は一生続きます。

具体的にどのくらい増えるのか

ここで、次の受給例をもとに、どのくらい増えるのかを計算してみましょう。

【例】

・ 国民年金(老齢基礎年金)「満額」月額6万5,000円

・ 厚生年金(老齢厚生年金)平均額 月額14万6,000円

受給開始年齢ですぐに請求した場合

65歳0か月で受給開始:増額率0%

・ 国民年金 6万5,000円

・ 厚生年金 14万6,000円

・ 合計月額 21万1,000円

1年遅らせた場合

66歳0か月で受給開始:増額率0.7% × 12か月=8.4%

・ 国民年金 6万5,000円+5,460円=7万460円

・ 厚生年金 14万6,000円 × 1万2,264円=15万8,264円

・ 合計月額 22万8,724円(1万7,724円増)

5年遅らせた場合

70歳0か月で受給開始:増額率0.7% × 60か月=42.0%

・ 国民年金 6万5,000円+2万7,300円=9万2,300円

・ 厚生年金 14万6,000円 × 6万1,320円=20万7,320円

・ 合計月額 29万9,620円(8万8,620円増)

繰り下げ受給の申請方法

申請方法

年金は、65歳になったからといって自動的に始まるわけではありません

受給するためには、「年金請求書」を提出する必要があります

つまり、請求書の提出を保留することで、受給のタイミングをずらすことができるということです。

この「年金請求書」は、年金の受給資格者に65歳の3か月前ごろ送られてきます

ひとまず、大切に保管しておきましょう。

年金受給を開始したいとき

66歳から70歳までの間、いつでも好きなタイミングで受給を開始できます。

保留しておいた「年金請求書」を提出すると、翌月から年金が始まります

このとき、「年金支給繰下げ請求書」という書類も記入します。

提出先は、年金事務所や自治体の年金窓口です。

まずは問い合わせてみるといいでしょう。

国民年金と厚生年金、それぞれ違う月数で繰り下げ受給できる

受給開始手続きは、老齢基礎年金と老齢厚生年金それぞれ同時におこなうことも、別々におこなうことも可能です。

年金額が多い方を受け取って生活費にしたり、あるいは多い方を長く繰り下げることでより効果的な増額を求めたりと、自由に選択できます。

注意事項

繰り下げ受給をする場合には、いくつかの注意が必要です。

5年以上経過した部分の年金は、時効によって消滅する

老齢年金は、65歳で受給権が生まれています。

繰り下げ受給のための保留期間は、「もう受給権があるけれど、受け取らずに預けている」という状況です。

そのため、65歳0か月から丸5年経過した部分は、時効が適用され、順次消滅してしまいます。

期間については自分自身で把握して、69歳11か月までに忘れずに請求することが重要です。

1日生まれのひとは、誕生月計算に注意が必要

年金計算をするとき、「65歳に達した日」は65歳の誕生日前日を指します。

そのため、1日生まれの場合は前月末日を指します

例えば、4月1日生まれの人にとって「65歳0か月」は3月、「65歳1か月」は4月ということです。

他の年金を受け取っている場合、併用はできない

障害年金や遺族年金などを受給している場合は、老齢年金の繰り下げを請求はできません

また、繰り下げ中に障害年金や遺族年金などを受給することになったときは、その時点で老齢年金も自動的に受給開始されます。

65歳から70歳までの選択が、その後のゆとりを左右する

年金の繰り下げ受給は、70歳までの生活費用を年金以外で調達できることが前提です。

実際、65歳から老後と言われても、まだまだ元気で働けるという人は多いでしょう。

参照:日本年金機構

すぐに年金を受け取るか、仕事を続けて年金額を増やすか。

60歳から70歳までのあなたの選択が、その後の年金額を大きく左右するのです。(執筆者:仲村 希)