今後、定年退職時に増える疑問に

「年金カットを回避すべきか」

「長く働くべきか」

などがあることでしょう。

今回は、こうした定年退職時に訪れる「年金の疑問」とそれに対する解決案を提示していきます。

定年退職後の働き方と「在職老齢年金」

【定年後の年金】 「在職老齢年金による減額」を回避する解決策 と長く働く「4つのメリット」

働き方1. 定年後再雇用

たとえば、60歳定年の企業に勤めていれば、その後の働き方にはいつくかの選択肢があります。

現行の法律では65歳までの継続雇用が義務付けられ、2021年4月からは70歳までの継続雇用努力義務が企業に課されます

従って、再雇用職員などで就労するのであれば

「在職老齢年金」によって年金が支給停止される場合の給与額がどの程度なのかを把握しておく

ことも有用です。

「在職老齢年金」について詳しく知りたい方には、こちらの記事が参考になります。

働き方2. 厚生年金の被保険者にならない働き方

厚生年金適用事業所に勤めていても被保険者でなければ「在職老齢年金」の対象ではありません

すなわち自営業の場合も「在職老齢年金」の対象ではないことから、働きながらでも満額の年金を受給できるのです。

従って、一定の固定的収入を得ながら年金も満額受給したい場合の選択肢に、自営業者になって働くという方法があります。

働き方3. パートに変更

定年退職後にパートになることも考えられます。

現在500人以下(※法改正により今後段階的に人数要件が縮小)の企業の場合には、1日の労働時間が正社員の3/4未満または1か月の労働時間が正社員の3/4未満の場合には被保険者として扱われません

被保険者にならないので「在職老齢年金」の適用はなく、年金は全額支給されます。

年金がカットされるかどうかは厚生年金の被保険者になるか否かによって変わります。

※法改正の内容を詳しく知りたい方には、こちらの記事が参考になります。

長く働くメリット

では、長く働くメリットとは何でしょうか。

長く働くメリット

メリット1.「長期加入者の特例」

「長期加入者の特例」とは、60歳から64歳の間に受給する「特別支給の老齢厚生年金」の受給金額に上乗せ支給される特例のことです。

「厚生年金」に44年加入した場合に「報酬比例部分」の支給開始年齢に達していれば「定額部分」もあわせて受給できます。

詳細については、こちらの記事をご覧ください。

あとどの程度で44年に到達するかにもよりますが、44年特例の恩恵は小さくないことから十分に検討に値します。

メリット2. 年金額増額

長く働くことで、単純に年金額(老齢厚生年金)は増額されます。

定年退職後には給与が減額されることが多く、平均の給与額は下がることから「年金は減るのではないか?」との意見もありますが、加入月数を乗じることから必ずしも減額するわけではありません

【年金受給額の計算式】

(1) 平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 平成15年3月までの被保険者期間の月数

(2) 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 平成15年4月以降の被保険者期間の月数

(1) + (2) = 老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額

メリット3.「第3号被保険者」になると保険料納付がなくなる

定年退職後も引き続き働くことで妻(または夫)が60歳未満であれば「第3号被保険者」になることができます。

「第3号被保険者」のメリット

「第3号被保険者」のメリットは

保険料の納付が発生しないにも拘らず、老齢基礎年金の計算においては保険料を納めた期間と同様の扱いになる

ということです。

「第3号被保険者」のデメリット

障害を支給事由とする年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。

端的には「障害基礎年金」は障害等級1級から2級であるのに対して、「障害厚生年金」は障害等級1級から3級までと幅広く、同一の支給事由である場合に「障害基礎年金」と「障害厚生年金」は65歳を待たずに併給が可能です。

しかし、「障害厚生年金」は初診日において厚生年金の被保険者であることが要件です。

よって、厚生年金の被保険者資格を喪失後の初診日については、障害厚生年金の支給事由となる初診日としては扱えないことから「障害厚生年金」を受給できないことになります。

メリット4.「遺族厚生年金」増額

長く働くことの恩恵として自身の「老齢厚生年金」が増額されることは先にも触れていますが、自身が亡くなった後に配偶者に支給される「遺族厚生年金」は死亡した者の「老齢厚生年金」の3/4です。

よって、遺された遺族への収入増加の観点からも長く働くメリットはあると言えます。

なお、65歳以降の「遺族厚生年金」支給の場合、自身の「老齢厚生年金」を優先的に支給したうえで、「老齢厚生年金」に相当する部分に「遺族厚生年金」を支給停止するという仕組みが導入されています。

「在職老齢年金」による支給停止部分は将来にも反映される

「在職老齢年金」による年金支給停止とは、その間だけ支給が停止されて後になって遡って支給されるという意味ではなく、その時に支給されなかった分は将来的にも支給されることはありません

また、「在職老齢年金による支給停止回避」と「長く働くことで年金を増額させる」という選択は、同時に恩恵を享受するということが難しいことから、あらかじめ総合的に判断しておきたいところです。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)