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年金受給に必要な「保険料の納付要件(期間)」は、年金の種類によって大きく違う

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年金受給に必要な「保険料の納付要件(期間)」は、年金の種類によって大きく違う

国民年金から支給される「老齢基礎年金」を65歳から受給するには、保険料の納付要件を満たす必要があります。

また、保険料の納付要件を満たすには、公的年金(国民年金、厚生年金保険など)の保険料を納付した期間や国民年金の保険料の納付を免除された期間などを合わせて、原則として25年以上必要でした。

年金受給に必要な 「保険料の納付要件」は年金の種類で違う

「老齢基礎年金」保険料納付期間が10年以上で受給可能に法改正

しかし、法改正されたため、2017年8月以降については、これらの期間の合計が原則として10年以上あれば「老齢基礎年金」を受給できるのです。

こういった法改正を受けて多くの方が「老齢基礎年金」を受給できるようになったのですが、依然として保険料の納付要件を満たせない場合には、60歳から65歳になるまで国民年金に「任意加入」するという方法があります。

また、65歳になっても保険料の納付要件を満たせない、1965年4月1日以前生まれの方は、65歳から70歳になるまで国民年金に「任意加入」できるのです。

このように「老齢基礎年金」の保険料の納付要件が「原則として10年」に短縮されたという話は、ご存じの方が多いと思います。

一方で、「老齢基礎年金」以外の保険料の納付要件については、「原則として10年」に短縮されていない場合があるという話は、あまり知られていないような気がします。

また、年金に関する保険料の納付要件は、受給する年金の種類で大きく変わるのです。

たとえば、「厚生年金保険」から支給される各種の年金に関する保険料の納付要件は、次のようになっています。

「老齢厚生年金」は65歳を境に保険料の納付要件が変わる

公的年金の保険料を納付した期間や国民年金の保険料の納付を免除された期間などを合わせて、原則として10年以上ある場合には、上記のように原則として65歳から「老齢基礎年金」を受給できます。

この保険料の納付要件を満たしたうえで、厚生年金保険の保険料を納付した期間が1月以上ある場合には、

「老齢基礎年金」に上乗せして、厚生年金保険から支給される「老齢厚生年金」を受給

できます。

また、現在は「老齢厚生年金」の支給開始を60歳から65歳に引き上げしている最中にあります。

そのため、

1961年4月1日以前生まれの男性と

1966年4月1日以前生まれの女性は

60~64歳(生年月日によって違う)から「特別支給の老齢厚生年金」を受給できる

のです。

この「特別支給の老齢厚生年金」を受給するには、厚生年金保険の保険料を納付した期間が1年以上必要であるため、原則として65歳から受給できる「老齢厚生年金」より、保険料の納付要件が少しだけ厳しいのです。

また、「老齢厚生年金」の受給開始を65歳より後に繰り下げると、1か月繰り下げるごとに0.7%の割合で支給額が増えていきますが、「特別支給の老齢厚生年金」は繰下げしても金額が変わりません

このように老齢厚生年金と特別支給の老齢厚生年金は、大部分は同じような仕組みですが、少しだけ相違点があるのです。

「加給年金」が加算される際には厚生年金保険の加入期間に注意する

「加給年金」が加算される際には注意する

65歳から「老齢厚生年金」を受給できる方に生計を維持されている、次のような親族がいる場合には、老齢厚生年金に「加給年金」が加算されます

・ 65歳未満の配偶者

・ 18歳に達した日以後の最初の3月31日までの間にある子供

・ 障害等級1級か2級の障害程度にある20歳未満の子供

ただし、「老齢厚生年金」に「加給年金」が加算されるのは、厚生年金保険の保険料を納付した期間が原則として20年以上あって、「加給年金」の保険料の納付要件を満たしている場合です。

また、65歳未満の配偶者を対象にした

「加給年金」は配偶者が65歳になると打ち切りになりますが、「振替加算」へと切り替わり、配偶者が受給する「老齢基礎年金」に上乗せ

されます。

こういった事情があるため、「加給年金」の対象になりそうな配偶者や子供がいる方は、20年を目標にして厚生年金保険に加入したほうが良いのです。

夫婦ともに厚生年金保険料の納付が20年以上になると生じるデメリット

ただし、夫婦ともに厚生年金保険の保険料を納付した期間が20年以上になると、2つのデメリットが生じる可能性があります。

デメリット1.

1つ目のデメリットは、「加給年金」の対象になっている年下の妻が60~64歳から「特別支給の老齢厚生年金」の受給を始めると、夫の「老齢厚生年金」に加算されている加給年金が支給停止になるというものです。

つまり、妻が65歳になる前に夫は「加給年金」を受給できなくなってしまうのです。

デメリット2.

2つ目のデメリットは、妻が65歳になって「老齢基礎年金」を受給できるようになっても、夫の老齢厚生年金に加算されている「加給年金」が「振替加算」に切り替わらないというものです。

そのため、「加給年金」の対象になりそうな妻は、厚生年金保険に加入する期間を20年未満に抑えた方がよいという意見があります。

しかし、「特別支給の老齢厚生年金」が支給される年齢は、数年ごとに引き上げされていき、1966年4月2日以降生まれの女性は受給できなくなります

また、妻が1966年4月2日以降生まれだと「加給年金」は「振替加算」に切り替わらないので、

将来的には「加給年金」と「振替加算」のために、厚生年金保険の加入期間を抑える必要がなくなる

のです。

保険料の未納期間が多くなると「障害厚生年金」を受給できない

「障害厚生年金」「障害手当金」受給の納付要件

厚生年金保険に加入している方が一定の障害状態になった場合には、1~3級の「障害厚生年金」や「障害手当金」を受給できる可能性があります。

ただし、これらの年金や一時金を受給するには、次のいずれかの保険料の納付要件を満たす必要があるのです。

「障害厚生年金」「障害手当金」受給の納付要件

・ 初診日がある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されている(言い換えると保険料の未納期間が1/3を超えていない)

・ 初診日に65歳未満の場合には、初診日がある月の前々月までの直近1年間に公的年金の保険料の未納がない

この中に記載されている初診日とは、障害の原因になった病気やケガで医師や歯科医師などの診療を初めて受けた日のことです。

これらの保険料の納付要件は初診日の前日で判定するため、初診日に想像していたよりも重症だとわかり未納になっていた国民年金の保険料を慌てて納付しても間に合わないのです。

従って、国民年金の保険料を納付するだけの金銭的な余裕がない場合には、きちんと免除を受けたほうが良いのです。

「遺族厚生年金」の保険料の納付要件は改正されていない

厚生年金保険に加入している方が亡くなった場合、または厚生年金保険に加入中の病気やケガがもとで初診日から5年以内に亡くなった場合、一定の要件を満たす遺族は「遺族厚生年金」を受給できる可能性があります。

ただし、死亡日の前日において亡くなった方が上記の「障害厚生年金」や「障害手当金」と同様の保険料の納付要件を満たしていないと「遺族厚生年金」を受給できません

一方で、「老齢厚生年金」を受給している方が亡くなった場合にも、一定の要件を満たす遺族は「遺族厚生年金」を受給できる可能性があります。

ただし、亡くなった方が公的年金の保険料を納付した期間や国民年金の保険料の納付を免除された期間などを合わせて原則として25年以上という、保険料の納付要件を満たしていないと「遺族厚生年金」を受給できません

このように、「遺族厚生年金」の保険料の納付要件は現在でも「原則として25年以上」であるため、「原則として10年以上」に短縮された「老齢基礎年金」とは大きな違いがあるのです。

「加給年金」の次は「遺族厚生年金」を目標にする

また、厚生年金保険の加入期間が20年に達して「加給年金」を受給できるようになったら、次は「遺族厚生年金」が支給される25年を目標にして保険料を支払うのが良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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