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値上げ続きの「国民年金保険料」 納付額を20~40年前と同程度の水準に抑えつつ、受給額をなるべく減らさない方法

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値上げ続きの「国民年金保険料」 納付額を20~40年前と同程度の水準に抑えつつ、受給額をなるべく減らさない方法

20歳以上60歳未満の自営業者、農林漁業者、フリーランス、非正規雇用者、学生、無職者などが加入する国民年金は、1959年4月に創設され、同年11月から年金の支給が始まりました。

始まったばかりの国民年金は税金を財源に、その当時の高齢者や障害者の方に対して、老齢福祉年金や障害福祉年金を支給する制度だったので、保険料は徴収されていませんでした。

値上げ続きの「国民年金保険料」

国民年金保険料の徴収額

現在の国民年金のように保険料が徴収されるようになったのは1961年度からです。今年度は保険料が徴収されるようになってから、ちょうど60年目にあたるわけです。

この間の保険料の推移を10年ごとに振り返ってみると次のようになります。

2021年度(今年度):
1万6,610円

2011年度(10年前):
1万5,020円

2001年度(20年前):
1万3,300円

1991年度(30年前):
9,000円

1981年度(40年前):
4,500円

1971年度(50年前):
450円

1961年度(60年前):
35歳未満は100円、35歳以上は150円

1991年代前半にバブルが崩壊してから、「失われた30年」と呼ばれる長期にわたる日本経済の低迷が続いています。

この長期低迷によって昔のように収入が増えなくなった後にも国民年金保険料の値上げが続いているため、保険料を支払うのが難しくなっていると思うのです。

20~40年前と同程度まで国民年金の保険料が安くなった場合には、現在より保険料を支払う方が増えるかもしれません。

一部免除を受けると保険料は20~40年前の水準になる

収入の減少や失業などによって国民年金の保険料の支払いが難しい時には、所定の申請をすると各種の免除(全額免除、3/4免除、半額免除、1/4免除)や納付猶予を受けられる場合があります。

免除や納付猶予の承認基準となる前年の所得の目安額(括弧内は給与を受け取っている方の年収の目安額)は、次の通りです。

免除となる所得の目安
≪画像元:札幌市役所≫

たとえば、扶養者のいないアルバイトの方の場合には前年の所得が158万円(年収だと251万円)以下くらいであれば、何らかの免除や納付猶予を受けられる可能性があるのです。

しかし実際のところは、各種の免除や納付猶予を受けられる要件を満たしているにも拘らず申請をしていない方が多く、特に一部免除(4分の3免除、半額免除、4分の1免除)は、その傾向が強いのです。

この一部免除を受けると、2021年度において月額1万6,610円である国民年金保険料が次のように変わります。

【3/4免除】4,150円

【半額免除】8,310円

【1/4免除】1万2,460円

3/4免除なら40年前、半額免除なら30年前、1/4免除なら20年前程度の水準にまで保険料が安くなるのです。

また、50歳未満の場合には「全額免除 → 納付猶予 → 3/4免除 → 半額免除 →1/4免除」の順に審査されますが、全額免除や納付猶予を飛ばして一部免除だけの審査も受けられるのです。

免除を受ければ国に徴収された税金を取り戻せる

20歳から60歳までの40年(480月)にわたって一度も欠かさずに国民年金の保険料を支払うと、2021年度に年額78万900円(月額6万5,075円)である満額の老齢基礎年金を原則65歳から受給できます

このように保険料を40年(480月)支払うと満額の老齢基礎年金を受給できるため、未払いの期間が1月あると老齢基礎年金は1,627円(78万900円 ÷ 480月)ほど減ってしまうのです。

一方で、申請を行って保険料の全額免除を受けるとこの1/2ほどの減額で済むのです。老齢基礎年金の財源の1/2は消費税などの税金だからです。

したがって、20歳から60歳までの40年(480月)に渡って、保険料の全額免除を受けて一度も保険料を支払わなかった場合であっても、満額の1/2となる39万450円の老齢基礎年金を受給できます

一方で、3/4免除を受けた期間は「5/8」、半額免除を受けた期間は「6/8」、1/4免除を受けた期間は「7/8」だけが老齢基礎年金の金額に反映されます。

それぞれの免除だけを、40年(480月)にわたって受けた場合の老齢基礎年金の目安額は次の通りです。

【3/4免除】48万063円

【半額免除】58万5,675円

【1/4免除】68万3,288円

このように、たとえば40年(480月)にわたって半額免除を受けた場合には、老齢基礎年金の金額が58万5,675円ほどになるため、保険料の半額免除といっても受給できる年金が半分になるわけではないのです。

しかも、免除を受けた期間分だけ国に徴収された税金を取り戻せるため、1万6,610円を支払えないからといって保険料を未払いにしておくのはもったいない話です。

厚生年金保険に加入すると国民年金の保険料を安くできる

現状では次のような要件をすべて満たす場合には、正社員より労働時間などが少ないパートやアルバイトなどの非正規雇用者であっても健康保険や厚生年金保険といった社会保険に加入する必要があります。

・ 1週間あたりの決まった労働時間が、20時間以上ある

・ 1か月あたりの決まった賃金が、8万8,000円(年収だと約106万円)以上ある

・ 1年以上使用される見込みがある

・ 学生ではない

・ 従業員数が501人以上の企業、または社会保険に加入することに対して労使(労働者と使用者)の合意がある、従業員数が500人以下の企業で働いている

これらの要件を満たして厚生年金保険に加入すると、給与から8,052円の厚生年金保険の保険料が天引きされます。この金額は2021年度の国民年金保険料(1万6,610円)の半分ほどです。

しかし、厚生年金保険の保険料の一部は国民年金の保険料として使われているため、8,052円という厚生年金保険の保険料を支払った20歳以上60歳未満の期間は国民年金の保険料も支払ったことになるのです。

したがって、上記のような要件を満たして厚生年金保険に加入すると、国民年金の保険料を30年前くらいの水準に抑えられるのです。

なお、厚生年金保険の保険料は給与の金額に応じて増えます。1か月あたりの決まった賃金が14万6,000円~15万5,000円の場合の厚生年金保険の保険料は1万3,725円です。この1万3,725円という金額は、20年前の国民年金の保険料と同程度です。

しかも8,052円の時より、原則65歳になると厚生年金保険から支給される老齢厚生年金が増えるため、やはり厚生年金保険には加入したほうが良いのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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