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60歳以降の厚生年金保険の加入で、金額が「増える年金」と「減る年金」

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60歳以降の厚生年金保険の加入で、金額が「増える年金」と「減る年金」

公的年金は自営業者、フリーランス、学生などが加入する「国民年金」と、会社員や公務員などが加入する「厚生年金保険」の、2種類に分かれております。

前者の国民年金に加入する義務があるのは、20歳から60歳未満になるため、原則として60歳以降は加入しません。

一方で後者の厚生年金保険は、次のような要件をすべて満たすと、嘱託社員などの非正規雇用者でも、70歳になるまで加入します。

・ 1週間の所定労働時間が20時間以上ある

・ 賃金の月額が8万8,000円(年収だと約106万円)以上ある

・ 1年以上雇用される見込みがある

・ 学生ではない

・ 従業員の人数が501人以上の企業、または社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入することについて労使が合意している、従業員の人数が500人以下の企業で働いている

また「従業員の人数が501人以上」という企業規模の要件が、大幅に引き下げられるため、2022月10月からは従業員の人数が101人以上の企業で働いている場合でも、厚生年金保険に加入するようになります。

そして2024月10月からは、従業員の人数が51人以上の企業で働いている場合でも、厚生年金保険に加入するようになります。

こういった改正の影響を受けて、60歳以降に厚生年金保険に加入する方は、更に増えていくと予想されるのです。

65歳以降は1年ごとに老齢厚生年金が増えるようになる

年金が増えるようになる

公的年金の保険料を納付した期間や、国民年金の保険料の免除期間などを合算して、原則10年以上あると、国民年金から「老齢基礎年金」が支給されます。

また原則10年以上という老齢基礎年金の受給要件を満たしたうえで、厚生年金保険の保険料を納付した期間が1か月以上あると、厚生年金保険から「老齢厚生年金」が支給されます。

いずれの老齢年金も受給開始を前倒しする「繰上げ受給」や、受給開始を遅くする「繰下げ受給」を選択しなければ、支給開始は原則として65歳からになります。

20歳から60歳未満の間に納付した厚生年金保険の保険料は、老齢厚生年金だけでなく、老齢基礎年金の金額にも反映されるのです。

そのためこの年齢の間に、厚生年金保険の保険料しか納付しなかった場合でも、納付期間に応じた老齢基礎年金を65歳から受給できます。

一方で60歳以降に納付した厚生年金保険の保険料は、老齢基礎年金の金額には反映されませんが、老齢厚生年金の金額には反映されます。

ですから60歳以降に厚生年金保険に加入すると、70歳になるまで老齢厚生年金は増え続けるのです。

ただ70歳まで退職しなかった場合、65歳以降に納付した厚生年金保険の保険料が、老齢厚生年金の金額に反映されるのは、70歳になってからになります。

これでは働きがいを感じにくいという意見があったので、2022年4月から「在職定時改定」という制度が始まります。

そのため

70歳まで在職していると定時(毎年10月)に、老齢厚生年金の金額が改定される

のです。

つまり1年ごとに老齢厚生年金が増えるため、増額するまでに待機期間がある繰下げ受給より、魅力的に見えると思うのです。

遺族厚生年金や障害厚生年金も金額が増える

公的年金の保険料を納付した期間や、国民年金の保険料の免除期間などを合算した期間が、原則として25年以上ある、老齢厚生年金の受給者が死亡した時は、所定の遺族が「遺族厚生年金」を受給できる場合があります。

また厚生年金保険に加入している間に、初診日(障害の原因になった病気やケガで、初めて医師などの診療を受けた日)のある方が、所定の障害状態になった時は、「障害厚生年金」を受給できる場合があります。

前者の遺族厚生年金の金額は、亡くなった方が受給していた老齢厚生年金の4分の3くらいです。

一方で後者の障害厚生年金の金額は、1級は老齢厚生年金の1.25倍くらい、2級と3級は老齢厚生年金とほぼ同額です。

このように遺族厚生年金と障害厚生年金は、老齢厚生年金の金額を元にして算出するのです。

ですから60歳以降に厚生年金保険に加入して、老齢厚生年金を増やすことは、遺族厚生年金や障害厚生年金を増やすことにもなるのです。

経過的加算は増える方と増えない方がいる

現在はもともと60歳だった老齢厚生年金の支給開始を、65歳に引き上げしている段階のため、あと何年かは65歳になる前から、老齢厚生年金を受給できる方がおります。

この65歳になる前に支給される老齢厚生年金は、「特別支給の老齢厚生年金」と呼ばれ、定額部分と報酬比例部分に分かれております。

また65歳になると、それぞれの年金は次のように変わるため、定額部分と報酬比例部分の両者が支給されていた頃は、65歳になっても受給できる年金額が、あまり変わらないようになっていたのです。

・ 報酬比例部分 → 老齢厚生年金

・ 定額部分 → 老齢基礎年金

ただ定額部分と老齢基礎年金は計算方法が違うため、「定額部分>老齢基礎年金」になってしまう場合が多かったのです。

そこで両者の差額を厚生年金保険から、「経過的加算」として支給し、65歳になっても受給できる年金額が、減らないようにしたのです。

現在は定額部分の引き上げが終わっているため、報酬比例部分しか受給できないのですが、経過的加算という制度はまだ残っております。

また65歳から支給される経過的加算の目安額(2022年度)は、次のように算出しますが、65歳以降に厚生年金保険に加入すると、(A) の加入月数が変わるため、経過的加算が増える場合があるのです。

(A) 1,628円 × 厚生年金保険の加入月数(上限は480)

(B) 780,900円 × 20歳から60歳までの厚生年金保険の加入月数 ÷ 480

(C) A-B=経過的加算

例えば22歳で大学を卒業(在学中は国民年金に加入)し、60歳まで厚生年金保険に加入した方の経過的加算は次のようになります。

(A) 1,628円 × 456=74万2,368円

(B) 78万900円 × 456 ÷ 480=74万1,855円

(C) 74万2,368円-741,855円=513円

この方が60歳以降も厚生年金保険に加入し、(A) が上限の480に達した場合、経過的加算は次のように変わるため、加入前よりも金額が増えるのです。

(A) 1,628円 × 480=781,440円

(B) 78万900円 × 456 ÷ 480=74万1,855円

(C) 78万1,440円-74万1,855円=3万9,585円

一方で例えば18歳で高校を卒業し、そこから60歳まで厚生年金保険に加入した方の場合、60歳に達した時点で、(A)が上限の480に達しております。

そのため60歳以降に厚生年金保険に加入しても、経過的加算はもう増えないのです。

増えたり減ったり難しいのよ

在職老齢年金によって減額する年金は限られている

60歳以降に厚生年金保険に加入すると、上記のような様々なメリットがあるのですが、「在職老齢年金」によるデメリットもあります。

それは老齢厚生年金(65歳未満は特別支給の老齢厚生年金)の月額と、「月給+その月以前1年間の賞与÷12」の合計が、所定の基準額を超えてしまうと、年金額が減っていくというものです。

年金の減額が始まる基準額は今のところ、65歳未満は28万円、65歳以上は47万円になります。

65歳以上の47万円を超えるケースは少ないのですが、65歳未満の28万円を超えるケースはあると思います。

しかし2022年4月からは65歳未満も、基準額が47万円に変わるため、以前より年金額が減りにくくなるのです。

また減額になるのは、原則65歳から支給される老齢厚生年金と、60~64歳から支給される特別支給の老齢厚生年金だけです。

つまり老齢基礎年金、経過的加算、障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金)、遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金)は減額になりません。

ですから在職老齢年金による減額をあまり気にせずに、60歳以降も厚生年金保険に加入した方が良いのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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