投資の世界に「ゼロリスク、ハイリターン」の商品があるとしたら、夢のような話です。

しかし、これは「元本は保証します。しかも高配当を約束します」などと謳った怪しい投資話のことで完全に詐欺の手口です。

投資信託選びに欠かせない指標「シャープレシオ」

さて、投資資産の運用には、

・ 価格の値下がりや暴落等のリスクは低いがリターン(収益)も低い「ローリスク、ローリターン」

または、

・ 高いリターン(収益)を得るために高いリスクも伴う「ハイリスク、ハイリターン」

がありますが、どちらも一長一短です。

そこで、登場するのが「シャープレシオ」と呼ばれる金融商品の運用効率を測定する指標です。

より小さいリスクでより大きなリターンを得ている金融商品を選ぶ際に活用できます。

たとえば、購入を検討している投資信託のファンドが同じカテゴリーのものと比べて、同程度のリスクレベルの中でより高いリターンを得ているファンドであれば、そのファンドの運用は効率良く行われているということです。

この指標は、株式・債券・投資信託などの金融商品にも適用されていますが、投資信託が一般的であるようです。

ちなみに、これはノーベル賞を受賞したアメリカの経済学者の名前からとったものです。

ここでは、指標の計算の仕組みや見方、活用する際のポイントなどを実例を用いて分かりやすく紹介します。

シャープレシオの計算方法

シャーップレシオの計算方法

計算の仕組みはいたって簡単で、一定期間のリターンからリスクフリーレートを差引、その数値をリスクで割って求めます

この指標はプラスの数値が高いほど効率的な運用が行われていることを意味します。

では、シャープレシオの計算式を構成する用語について簡単に整理してみます。

リスク(標準偏差)とは

「リスク」と聞いて思い出すのは「危険」ということですが、資産運用におけるリスクとは不確実性を表します。

標準偏差とは

リスクは運用資産の価格の揺れ幅・値動きのことであり、そのバラツキを数値化したものが標準偏差です。

標準偏差はリスクの括弧書きとなっていますが、リスクを標準偏差で表すことができます。

この指標は、平均値を求めるだけでは、株価や為替レートなどのデータがどのように点在しているのかが分からないため、データの平均値に加え、バラツキの範囲を示すバラツキ度合が表示されます。

バラツキが大きければ大きいほどリスクが大きく、反対に小さければ小さいほどリスクが小さく、リスク度合いの指標ともいわれています。

標準偏差の計算方法

「標準偏差」はリスクだけではなく、あらゆるデータに活用されています。

たとえば、これを分かり易くするため、学校でのテストの得点表から標準偏差を求めたケースを例に挙げて説明します。

科目別得点の標準偏差値

(1) 平均値の計算

生徒(10人)の各科目(国語・算数)の平均点を計算します。

(2) 偏差の計算

各自の得点と平均値の差を計算します。これは「偏差」と呼ばれています。偏差の合計は常に0になります。

(3) 分散の計算

次に、各偏差を2乗して科目別の平均値を計算します。これは「分散」と呼ばれています。

(4) 標準偏差の計算

(3) の分散(平均値)についてはルート(平方根)を用いて計算します。

たとえば、国語の標準偏差は、√272 = 16.5(四捨五入)です。

つまり、標準偏差は各自の得点が平均点の65点を中心に +16.5点から -16.5点の範囲に点在している状態を指しています。

リターンとは

リターンとは、資産運用によって得た収益のことをいいます。

具体的には、株式・債券・投資信託などの値上がり(資産価値が上昇)によって得られる収益(キャピタルゲイン)の合計を指します。

また、リターンは、収益率としてパーセンテージで表示されます。

リスクフリーレートとは

リスクフリーレートとは、リスクが最小で、かつ、ないに等しい金融商品の金利や利回りなどのことを意味しています。

具体的には、金融機関相互の資金の貸し借りに適用される利率である無担保コール(翌日物)レート、元本保証の預貯金の金利や国債の利回りなどです。

日本の場合には、現在、マイナスやほぼゼロに近いレートなので、計算式を構成する超過収益{(リターン)-(リスクフリーレート)}を求めずともリターン(収益率)だけで計算しても影響のない数値です。

シャープレシオを活用して最適なファンドを探す

この指標は、ファンドのリスクとリターンを比べ、たとえば、小さいリスクで大きなリターンを得た場合には大きい数値となり、効率よくリターンを上げていたファンドであることが判断できます。

下の表は、シャープレシオとリターンの関係を表していますが、両方ともより大きい数値であれば最適なファンドだといえます。

シャープレシオとリターン

シャープレシオを活用の際の注意点

ここからは、この指標を主に投資信託において活用する際のいくつかの留意点などについて触れておきます。

注意1. 将来の運用成果は保証できない

この指標の運用実績は過去のデータに基いており、必ずしも将来の運用成果を保証するものではありません

たとえ現在の運用実績が良好な金融商品を選択しても、購入後には運用状況をしっかりと確認していくことが大事です。

従って、新規販売の金融商品においてこの指標は存在しません。

注意2. 比較する運用資産は同じ種類と同じ時期が原則

複数のファンドから選ぶ場合には、国内株式型、国内債券型、国際債券型、バランス型などの同じ資産タイプでこの指標を比較しましょう。

さらに、たとえば、国内株式型ファンドは、国内株式に組入れる比率が基本的に70%以上で運用されていますが、国内株式や他の資産タイプの組入れ比率が同程度であるファンドとの比較が理想的です。

ただし、ここまで手間をかけて細かく調べるなどの必要性はそれほど感じません。

シャープレシオの計算期間は、1年以内の期間から3年間および5年間またはそれ以上の期間までさまざまです。

計算の時期が異なれば指標の値も変わるので、比較する時期は同じ時点の最新版を活用しましょう。

注意3. 期間の選択は長いほうがよい

ファンド選びの際に、短い期間を選択することはあまり得策ではありません。

その主な理由は、期間が短すぎると相場が大きく変動した場合に評価しづらいからです。

適当な期間はファンドの信託期間にもよりますが、過去1年間から3年間程度が妥当ではないしょうか。

注意4. 運用成績が負の数値の場合に注意すること

リターンがマイナスのファンドを選択するのは考えにくいことですが、この計算式の分子にくる超過リターンがマイナスの場合、分母にくるリスクが大きいほどシャープレシオの数値は大きくなるので注意が必要です。

たとえば、以下のように、超過リターンがマイナスのファンドと比べる場合には、リスクが大きいファンドのほうがシャープレシオの値が大きく(負の値が大きい:-0.5<-0.25)なるということです。

【Aファンド】
超過リターン:-5%、リスク:10% → シャープレシオ:-0.5

【Bファンド】
超過リターン:-5%、リスク:20% → シャープレシオ:-0.25

ファンド選びに迷った時の参考になる

シャープレシオの指標は、モーニングスター社のホームページ上、あるいはファンドを取り扱う銀行や証券会社などのウェブサイト上でも確認できます。

特に、店舗型証券会社に相談・サポートコースの口座を持っている場合には、担当者に問い合わせや確認もできます。

ファンド選びに迷った時などは参考になりますので、ご活用ください。(執筆者:CFP、1級FP技能士 小林 仁志)