国民年金の保険料に加えて月400円の付加保険料を納付すると、「200円 × 付加保険料を納付した月数」で算出される付加年金を原則65歳から受給できます

また国民年金の保険料を納付するのは、20歳から60歳までの40年(480月)です。

そのため全ての期間で付加保険料を納付した場合、年に9万6,000円(200円 × 480月)の付加年金を受給できるのです。

厚生労働省が発表した簡易生命表によると、2020年の日本人の平均寿命は、男性が81.64歳、女性が87.74歳ですので、生涯で次のような金額の付加年金を、受給できる可能性があります。

男性:163万2,000円(9万6,000円 × 約17年)

女性:220万8,000円(9万6,000円 × 約23年)

付加年金の金額は少ないのですが、このように生涯の受給額を算出してみると、けっこうな金額になるとわかります。

また年9万6,000円の付加年金を受給するのに必要な付加保険料は、19万2,000円(400円 × 480月)ですので、わずか2年で元がとれます

こういったメリットがあるため、付加年金を利用してみたい方はかなり多いのではないかと思います。

しかし付加年金を利用できるのは、国民年金の第1号被保険者(自営業者、フリーランス、農林漁業者、非正規雇用者など)に限られているのです。

そのため国民年金の第2号被保険者(厚生年金保険に加入する会社員など)や、第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者)は、付加年金を利用できません。

社会保険加入で付加年金が使えないときはつみたてNISA

社会保険の適用拡大で第1号被保険者が減少する

老後資金を準備するために、iDeCo(個人型の確定拠出年金)を利用する場合、最低でも月5,000円が必要です。

こういった制度を利用するだけの金銭的な余裕がない、第1号被保険者の非正規雇用者は特に付加年金を利用した方が良いと思いますが、今後は利用できなくなる可能性があるのです。

その理由としては社会保険(健康保険、厚生年金保険)の適用拡大が、予定されているからです。

現在は次のような加入要件を全て満たすと、正社員より労働時間などが少ない非正規雇用者でも、社会保険に加入する必要があります。

(A) 1週間の所定労働時間(残業時間などを含まない、あらかじめ働くことが決まっている労働時間)が、20時間以上であること

(B) 1年以上に渡って、雇用される見込みがあること

(C) 学生ではないこと(定時制、夜間、通信制の学生は、社会保険に加入する場合がある)

(D) 賃金の月額(残業代、通勤手当、皆勤手当などは除く)が、8万8,000円以上であること

(E) 従業員数が501人以上の会社(労使の合意がある場合には、500人以下の会社も含む)に勤務していること

この中の(E)に記載した従業員数の要件が、2022年10月から101人以上に引き下げられるとともに、(B)に記載した雇用期間の見込みが、2か月超に引き下げられる予定です。

また2024年10月から(E)に記載した従業員数の要件が、51人以上に引き下げられる予定のため、この機会に社会保険に加入する中小企業の非正規雇用者はかなり多いのではないかと思います。

実際に社会保険に加入した場合、国民年金の被保険者の種別は第1号から第2号に変わるため、付加年金を利用できなくなってしまうのです。

厚生年金保険に加入すると国民年金より保険料が安くなる

厚生年金保険に加入すると原則65歳になった時に、国民年金から支給される「老齢基礎年金」だけでなく、厚生年金保険から支給される「老齢厚生年金」も受給できます。

これに加えて勤務先が保険料の半分を負担してくれるため、国民年金に加入している時より、納付する保険料が安くなる場合があるのです。

例えば月給の金額が17万5,000円以上18万5,000円未満の場合、厚生年金保険の保険料は月1万6,470円になります。

これは国民年金の保険料(2021年度額は月1万6,610円)より低いため、月給の金額が18万5,000円未満であれば、国民年金に加入している時より納付する保険料が安くなるのです。

また厚生年金保険の保険料を納付した20歳以上60歳未満の期間は、国民年金の保険料も納付したことになるので、やはり厚生年金保険には加入した方が良いです。

厚生年金に加入すると保険料は安くなる傾向

つみたてNISAを付加年金の代わりにする

月給の金額が9万3,000円未満で厚生年金保険に加入した場合、この保険料は月8,052円です。

そのため月1万6,610円の国民年金の保険料をきちんと納付していた場合には、月8,000円くらい保険料が安くなります。

この月8,000円の一部(月5,000円くらい)を、年40万円までの投資から生じた利益が20年に渡って非課税になる「つみたてNISA」で運用してみるのです。

おすすめの投資先

つみたてNISAを利用する際は、どの金融商品で積立資金を運用するのかを自分で決める必要があります。

何が良いのかについてはさまざまな意見がありますが、次のような全世界の株式の値動きに連動した運用成果を目指すインデックス・ファンドなら、1本だけで世界中の株式に分散投資ができます。

・ eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)

・ 楽天・全世界株式インデックス・ファンド

・ SBI・全世界株式インデックス・ファンド

・ たわらノーロード 全世界株式

・ つみたて全世界株式

またこういったインデックス・ファンドを選んで運用した場合、6%くらいの平均利回りを期待できます

例えば毎年6万円(月5,000円 × 12か月)を20年積立し、これを年6%で複利運用した場合の元利合計を、「年金終価係数」を使って計算してみると、だいたい次のような金額になります。

6万円 × 36.786(年金終価係数)= 220万7,160円

これは冒頭で紹介した、女性が生涯に受給できる可能性のある付加年金と同じくらいの金額になるため、毎年9万6,000円くらいずつ受け取れば、平均寿命を迎えるまで、つみたてNISAの資産は枯渇しないのです。

また少しずつ現金化して、残った資産の運用を続ければ、平均寿命より長生きした場合にも対応できると思います。

インデックスファンド

iDeCoは60歳までお金を引き出すのが難しい

iDeCoもつみたてNISAと同じように、投資から生じた利益が非課税になるというメリットがあります。

またiDeCoに拠出した掛金の金額分を所得から控除できるため、所得税や住民税が安くなるというメリットもあります。

ただ月給の金額が9万3,000円未満だと所得税や住民税は課税されない場合が多く、課税されても少額になるのです。

またつみたてNISAは保有する金融商品を売却して現金化すれば、20年の積立期間が終わる前でも、お金を引き出せます

一方でiDeCoは死亡したり、一定の障害状態になったりしないかぎり、最低でも60歳にならないとお金を引き出すのが難しいのです。

こういった点から非正規雇用者や専業主婦(主夫)などは特に、iDeCoよりつみたてNISAが良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 広司)