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【60歳以降】国民年金の任意加入より、厚生年金の方が「コスパが良いケース」 計算式で解説

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【60歳以降】国民年金の任意加入より、厚生年金の方が「コスパが良いケース」 計算式で解説

原則65歳になってから、国民年金から支給される老齢基礎年金を受給するには、この受給資格期間を満たす必要があります。

また老齢基礎年金の受給資格期間を満たすには、公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料を納付した期間や、国民年金の保険料の納付を免除された期間などの合計が、原則120月(10年)以上必要になります。

これを満たせば老齢基礎年金を受給できますが、満額の老齢基礎年金(2021年度額は78万900円)が支給されるのは、20歳から60歳までの間に、公的年金の保険料を納付した期間が、480月(40年)ある場合です。

そのため未納期間がひと月増えるごとに、1,626円(78万900円 ÷ 480月)くらい老齢基礎年金が減額します。

例えば20歳から60歳までの間に、国民年金の保険料の未納期間が48月(4年)ある場合、老齢基礎年金は7万8,090円くらい減額します。

こういった方が60歳から65歳までの間に、国民年金に任意加入して、未納期間に応じた保険料を納付すると、その分だけ老齢基礎年金が増額するため、満額を受給できるのです。

また65歳になっても老齢基礎年金の受給資格期間を満たせない、1965年4月1日以前生まれの方は、65歳から70歳までの間に、国民年金に任意加入できます。

ただ65歳以降の任意加入は、受給資格期間を満たしていない方の制度になるため、受給資格期間を満たした時点で、任意加入は終了です。

国民年金の任意加入か、厚生年金か

国民年金の任意加入と厚生年金保険は片方しか選べない

60歳以降も正社員で働く方、またはパートやアルバイトなどで働く方のうち、次のような要件をすべて満たす方は、70歳になるまで厚生年金保険に加入します。

・ 週の所定労働時間が、20時間以上あること

・ 勤務期間が1年以上になる、見込みがあること

・ 賃金月額(残業代、通勤手当などは除く)が、8万8,000円以上あること

・ 学生ではないこと

・ 従業員数が501人以上の会社、または労使の合意がある、従業員数が500人以下の会社で働いていること

また「従業員数が501人以上」という会社規模の要件は、2022月10月からは101人以上、2024月10月からは51人以上に改正されます。

これに加えて2022月10月からは、「勤務期間が1年以上」という勤務期間の要件が、2か月超に改正されます。

こういった法改正の実施により、60歳以降も厚生年金保険に加入する方は、以前より増えると予想されるのです。

実際に厚生年金保険に加入した場合、国民年金の任意加入は利用できなくなるため、どちらを選べば良いのかで悩む方も、以前より増える可能性があります。

60歳以降も働くなら国民年金でなく厚生年金加入もおすすめ

60歳以降に厚生年金保険に加入すると経過的加算が増える

冒頭で紹介した老齢基礎年金の受給資格期間を満たし、かつ厚生年金保険の加入期間が1月以上ある方は、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金を、原則65歳から受給できます。

この老齢厚生年金の金額は、勤務先から受け取った月給と賞与の平均額や、厚生年金保険の加入期間で決まります。

そのため60歳になってからも厚生年金保険の加入を続ければ、これ以降の月給と賞与の平均額や、厚生年金保険の加入期間に応じて、老齢厚生年金が増額するのです。

2021年度に支給される経過的加算目安額の計算式

また原則65歳になると厚生年金保険から支給される経過的加算も、増額する場合があるのですが、2021年度に支給される経過的加算の目安額は、次のような計算式で算出します。

(A)1,628円 × 厚生年金保険の加入期間(480月が上限)

(B)78万900円 × 20歳以上60歳未満の厚生年金保険の加入期間 ÷ 480月

(C)A – B = 経過的加算の目安額

国民年金4年間加入(未納)+ 厚生年金36年間の目安額

例えば20歳から60歳までの間に、国民年金に48月(4年)加入したけれども、保険料をすべて未納にし、これ以外の432月(36年)は厚生年金保険に加入した方の、60歳時点の経過的加算の目安額は、次のようになります。

(A)1,628円 × 432 = 70万3,296円

(B)78万900円 × 432 ÷ 480 = 70万2,810円

(C)70万3,296円 – 70万2,810円=486円

65歳まで厚生年金保険に加入した場合

こういった条件の方が、例えば65歳まで厚生年金保険に加入し、この加入期間が上限の480月になった場合、経過的加算の目安額は次のように変わるのです。

(A)1,628円 × 480 = 78万1,440円

(B)78万900円 × 432 ÷ 480 = 70万2,810円

(C)78万1,440円 – 702,810円 = 78,630円

両者の金額を比較してみると、60歳以降の厚生年金保険の加入によって、65歳から支給される経過的加算は、7万8,144円(78,630円-486円)増額したとわかります。

60歳時点で同じ条件に該当する方が、60歳以降に国民年金に任意加入して、満額になるまで保険料を納付した場合、老齢基礎年金は7万8,090円くらい増額するため、経過的加算の増額とほぼ同じになります。

そのため厚生年金保険と国民年金の任意加入の、いずれを選択した場合でも、同じような効果が得られるわけです。

しかも20歳から60歳までの厚生年金保険の加入期間が短いため、65歳まで働いても上限の480月に達しない方は、70歳になるまで経過的加算を増額できます。

国民年金より厚生年金の方がコスパの良いケースもある

コスパ重視なら厚生年金保険に加入するのは480月までにする

国民年金の保険料は月1万6,610円(2021年度額)になりますが、全額免除、納付猶予、一部免除(4分の3免除、半額免除、4分の1免除)、学生納付特例を受ければ、保険料をゼロまたは少額にできます。

ただ60歳以降に国民年金に任意加入した場合には、たとえ収入が低かったとしても、これらの制度の適用を受けられません

そのため毎月1万6,610円を納付できるくらいの、金銭的な余裕が必要になるのです。

一方で60歳以上の方の、月給から控除される厚生年金保険の保険料は、60歳未満の方と同じように、報酬月額(毎月の基本給 + 各種の手当)の金額に応じて決まります。

例えば報酬月額の金額が9万3,000円未満だった場合、月給から控除される厚生年金保険の保険料は、月8,052円ほどになるため、国民年金の保険料のほぼ半額で済みます。

それにもかかわらず国民年金に任意加入して、月1万6,610円の保険料を納付した場合と、同じような効果(任意加入と同程度の経過的加算の増額)が得られるため、厚生年金保険はコスパが良いと思うのです。

なお報酬月額の金額が18万5,000円以上19万5,000円未満だと、厚生年金保険の保険料は月1万7,385円ほどになるため、国民年金の保険料の金額を上回ります

そのためコスパを重視するなら、報酬月額の金額を18万5,000円未満に抑えたうえで、60歳以降に厚生年金保険に加入するのは、上限の480月に達するまでにするのです。

ただ厚生年金保険の加入期間が長くなれば、その分だけ老齢厚生年金が増額するため、厚生年金保険に加入できる間は、できるだけ加入した方が良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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