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国民年金の保険料追納なら 納付猶予や学生納付特例の追納を優先した方が良い理由 

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国民年金の保険料追納なら 納付猶予や学生納付特例の追納を優先した方が良い理由 

2021年6月28日に厚生労働省は、「令和2年度の国民年金の加入・保険料納付状況について(pdf)」を公表しました。

これによると2020年度における国民年金の保険料の納付率は、2019年度より2.2ポイント増えて71.5%になり、9年連続で上昇したのです。

国民年金の保険料の納付率は、「(納付月数÷納付対象月数)×100」という計算式で算出するため、保険料を納付した方が増えて、「納付月数」が改善すると、納付率は上昇します。

ただ法定免除、申請免除の一種である全額免除、納付猶予、学生納付特例、産前産後期間の免除を受けた期間は、国民年金の保険料を納付する必要がないので、「納付対象月数」から除きます

そのためこれらを受けた方が増えれば、国民年金の保険料を納付した方が増えなくても、納付率は上昇するのです。

2020年度は法定免除、申請免除の一種である全額免除、納付猶予、学生納付特例を受けた方の合計が、過去最多の約609万人に達しました。

一方で国民年金の保険料を未納にした方は、2019年度の約125万人から、2020年度の約115万人に低下しました。

こういったデータから考えると、2020年度における国民年金の保険料の納付率が2019年度より上昇したのは、免除制度の周知が進んで、実際に利用する方が増えたからではないかと思うのです。

国民年金の免除制度

国庫負担の有無によって老齢基礎年金の金額が変わる

国民年金の保険料の納付が免除、または猶予される制度は、次のような4種類に分かれております。

(1) 法定免除

1級か2級の障害基礎年金を受給している方や、生活保護法による生活扶助を受けている方などが、所定の届出をすると受けられる免除になります。

法定免除を受けた期間には国庫負担(税金の投入)があるため、国民年金の保険料を納付した場合の「2分の1」として、老齢基礎年金の金額に反映されるのです。

(2) 申請免除、納付猶予(50歳未満が対象)

失業や収入の低下によって、国民年金の保険料の納付が難しくなった方が所定の申請をすると、申請免除(全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除)や、納付猶予を受けられます。

また納付猶予の対象になる50歳未満の方が、審査の順番を指定しないで免除申請を行うと、「全額免除 → 納付猶予 → 4分の3免除 → 半額免除 → 4分の1免除」の順に審査されます。

申請免除には国庫負担があるため、

・ 全額免除は保険料を納付した場合の「2分の1」

・ 4分の3免除は「8分の5」

・ 半額免除は「8分の6」

・ 4分の1免除は「8分の7」

として、老齢基礎年金の金額に反映されます。

しかし納付猶予には国庫負担がないため、これを受けた期間は老齢基礎年金の金額に反映されません

(3) 学生納付特例

国民年金の保険料の納付が難しい学生の方は、(2) の申請免除や納付猶予ではなく、学生納付特例を受けることになります。

学生納付特例は納付猶予と同じように国庫負担がないため、これを受けた期間は老齢基礎年金の金額に反映されません

(4) 産前産後期間の免除

所定の届出をすると、出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間の、国民年金の保険料の納付が免除されます。

産前産後期間の免除を受けた期間は、保険料を納付した場合と同じ取り扱いになるため、(1) ~ (3) と違って老齢基礎年金は減額しません

以上のようになりますが、これらを受けた期間は共通して、老齢基礎年金を受給するために必要となる、原則10年の受給資格期間に反映されます

一方で老齢基礎年金の金額に対する反映は、国庫負担の有無によって、かなりの違いが生じるのです。

ただ (1) ~ (3) を受けた各月から10年以内に、国民年金の保険料を追納(後払い)すれば、老齢基礎年金の減額はなくなるのです。

老齢基礎年金は40年(480月)の納付で満額になる

20歳から60歳までの間に、公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料の未納期間が1月もない場合、満額の老齢基礎年金(2021年度額は78万900円)を、原則65歳から受給できます。

つまり40年(480月)で満額になるため、未納期間が1月増えるごとに、1,626円(78万900円÷480月)くらい老齢基礎年金が減ってしまうのです。

逆に言えば公的年金の保険料を1月納付すると、1,626円くらい老齢基礎年金が増えるのです。

また老齢基礎年金を1,626円くらい増やすために必要となる、1月分の国民年金の保険料は、2021年度額で1万6,610円になります。

この1万6,610円を取り戻すために必要な期間は、約10年(1万6,610円÷1,626円=10.2152…)が目安になります。

老齢基礎年金や国民年金の保険料の金額は、将来的には変動していくと思いますが、現状ではこのように老齢基礎年金の受給開始から、約10年で元がとれるのです。

ねんきん定期便

納付猶予や学生納付特例の追納を優先した方が良い

追納する時の国民年金の保険料は、「当時の保険料額+加算額(免除などの翌年度から3年度目以降に追納する場合)」になるため、一律に1万6,610円ではないのですが、この金額だと仮定すると、どのくらいで元がとれるのかがわかります。

例えば納付猶予や学生納付特例を受けた期間は、上記のように国庫負担がないため、1万6,610円の保険料を追納すると、1,626円くらい老齢基礎年金が増えます。

そのため約10年(16,610円÷1,626円=10.2152…)で、元がとれるとわかるのです。

一方で法定免除や全額免除を受けた期間には、上記のように2分の1の国庫負担があるため、国民年金の保険料を追納しなかったとしても、813円(1,626円÷2)くらいは老齢基礎年金の金額に反映されます

逆に言えば1万6,610円を追納しても、813円くらいしか老齢基礎年金は増えないため、元をとるまでに約20年(1万6,610円÷813円=20.4305…)かかるのです。

もうひとつ例を挙げると半額免除を受けて、8,310円の国民年金の保険料を納付した期間は、8,300円(1万6,610円-8,310円)を追納すると、407円くらい老齢基礎年金が増えます

そのため元をとるまでに、約20年(8,300円÷407円=20.3931…)かかるのです。

このように納付猶予や学生納付特例は、約10年で元がとれるのに対して、法定免除や申請免除(全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除)は約20年かかるため、前者の追納を優先した方が良いのです。

節目年齢のねんきん定期便やねんきんネットを活用する

毎年誕生月(1日生まれは誕生月の前月)になると日本年金機構から、保険料の納付実績や年金の見込額などが記載された、ねんきん定期便が送付されます。

ただ節目年齢(35歳、45歳、59歳)以外の、ハガキ形式のねんきん定期便には、直近1年間の国民年金の納付状況しか記載されていないので、納付猶予や学生納付特例を受けたのが数年前だと、これらを受けた時期がわからないのです。

一方で節目年齢のねんきん定期便や、ねんきんネットを見てみると、すべての期間の国民年金の納付状況が記載されているため、納付猶予や学生納付特例をいつ受けたのかが、わかりやすいのです。

またねんきんネットでは、追納が可能な月数が表示されるため、納付猶予や学生納付特例を受けた期間が、追納が可能な10年以内にあるのかを、自分で調べる必要はありません。

そのため追納を検討している方は、節目年齢のねんきん定期便や、ねんきんネットを開くところから、始めてみるのが良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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