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【2023年度修正版】収入と所得の見積額がわからない方が「年末調整」の際に参考にすべき書類

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【2023年度修正版】収入と所得の見積額がわからない方が「年末調整」の際に参考にすべき書類

この記事の最新更新日:2023年10月1日

年末が近づいてくると勤務先から、年末調整で必要になる書類が配布され、その記入と提出を求められる場合が多いと思います。

今回は年末調整が必要な理由や、収入と所得の見積額がわからない時に、もっとも参考にすべき書類について解説します。

収入と所得の見積額がわからない方

年末調整とは?

給与(月給、賞与)からは原則として、所得税が源泉徴収されますが、この金額は仮の金額になります。

なぜ仮の金額なのかというと、会社員(正社員、契約社員、パートやアルバイトなど)に対して課税される所得税は、1~12月に支払われた給与の合計を元にして算出します。

そのため12月に年内最後の給与が支払われるまで、本来の金額はわからないからです。

また12月に年内最後の給与を支払う時になると、1~12月の給与の合計が確定するため、勤務先は本来の所得税を算出します。

この本来の所得税の金額と、1月以降の給与から源泉徴収された仮の所得税の合計を比較し、「本来の所得税<仮の所得税の合計」になったら、勤務先は取り過ぎた所得税を還付します。

一方で「本来の所得税>仮の所得税の合計」になったら、勤務先は追加で所得税を徴収します。

こういった所得税の過不足を、勤務先が年末に精算する手続きが、いわゆる年末調整になるのです。

会社員の方は年末調整を受けると、所得税の過不足が精算されるため、原則として所得税の確定申告をする必要はありません。

収入・所得の見積額とは?

年末調整の際に提出する書類は、

  • 来年1月以降の給与から源泉徴収する仮の所得税を計算する時に必要な書類
  • 本来の所得税を計算する時に必要な書類

に分かれます。

仮の所得税を計算する時に使用する、来年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」以外は、本来の所得税を計算する時に使用する場合が多いのです。

本来の所得税を計算する際には、112月に支払われた給与の合計が必須になりますが、年末調整の書類を提出するのは一般的に、給与の合計が確定する前です。

そのため年間の収入を記入する欄には、年末調整の書類を提出する段階で、すでに受け取っている1月以降の給与と、12月末までに受け取る予定の給与を合わせた、収入の見積額を記入します。

年間の収入から必要経費(会社員は概算の必要経費である「給与所得控除額」)を控除すると、年間の所得がわかりますが、年間の収入が確定していないので、年間の所得も見積額を記入します。

「収入金額」と「所得金額」の見積額を算出するのは難しい理由

2020年は年末調整の書類のフォーマットが大幅に改正されたので、かなり複雑になりましたが、2021年の改正点は書類への押印が不要になったくらいのようです。

これ以降の主な年末調整の改正点のうち、書類を記入する時に注意が必要になりそうなものを挙げてみると次のようになります。

2022年の改正点

「社会保険料控除証明書(国民年金の申告で使用)」や、「小規模企業共済等掛金払込証明書(iDeCoの申告で使用)」を、電子データで提出できるようになりました。

2023年の改正点

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の住民税に関する事項に、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」と「寡婦又はひとり親」が追加されました。

いずれについても2020年の書類のフォーマットの改正と比較すると、小幅な改正にとどまっているため、スムーズに書類を記入できると思います。

ただ「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の中にある、給与所得に関する「収入金額」や「所得金額」の見積額の欄は、次のような3つの理由により、スムーズに記入するのが難しいかもしれません。

(1) 11月や12月の給与の金額を推測する必要がある

勤務先によって違いがあるかと思いますが、11月の中旬から12月の前半くらいには、年末調整で必要になる書類の提出を求められると思います。

そうなると11月や12月に支払われる給与は、その金額を推測する必要があるため、スムーズに記入するのが難しいのです。

(2) 収入金額に含める手当と含めない手当がある

給与所得に関する「収入金額」の欄には、今年の1月から現在までに支払われた給与と、11月や12月に支払われる予定の給与を、合計した金額を記入します。

ただ合計するのは手取りではなく、社会保険料や所得税などを源泉徴収する前の額面(残業手当を含む)になる点や、額面の金額から非課税になる通勤手当を控除する点に、注意する必要があるのです。

なお電車やバスなどの公共交通機関で通勤している場合、通勤手当が月15万円以内なら非課税になります。

また車やバイクなどで通勤している場合、その距離に応じて非課税になる金額が決まり、例えば片道の通勤距離が2キロメートル以上10キロメートル未満の時は、通勤手当が月4,200円以内なら非課税になります。

「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の裏面を読んでみると、給与所得に関する「収入金額」に含めるものが書いてあります。

しかしここまで詳しくは書いていないため、スムーズに記入するのが難しいのです。

(3) 給与所得を算出する機会が少ない

自営業者やフリーランスなどの場合、1年間の事業収入から必要経費を控除して、事業所得を算出します。

一方で会社員は1年間の給与収入から、「給与所得控除額(概算の必要経費)」を控除して、給与所得を算出します。

このようにして算出した金額を、給与所得に関する「所得金額」の欄に記入するのです。

「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の裏面を読んでみると、給与所得に関する「所得金額」の算出方法が書いてあります。

記載された内容をきちんと読めば、決して難しくはないのですが、自分と配偶者の「所得金額」を算出する機会は少ないため、計算結果が正しいのかについて、自信を持てない場合があると思います。

これに加えて収入と所得の違いが、よくわからない方もいるので、スムーズに記入するのが難しいのです。

収入・所得の見積額がわからない場合はどうするのか?

給与の振込口座の通帳、給与明細、家計簿などを参考にしながら、収入や所得の見積額を計算する方がいるようです。

こういった方法でも良いのですが、収入や所得の見積額がわからない時に、もっと参考になるものがあります。

昨年の「給与所得者の源泉徴収票」を参考にする

源泉徴収票

年末調整の際に勤務先に対して、自分と配偶者の「収入金額」や「所得金額」を申告する必要があるのは、これらの金額によって、受けられる配偶者(特別)控除の金額が変わるからです。

例えば夫が別の会社で働いている妻を対象にして、配偶者(特別)控除を受ける場合、夫の勤務先は書類に記入された、給与所得に関する夫の「収入金額」や「所得金額」が正しいのかを、賃金台帳などで調べることができます。

一方で書類に記入された、給与所得に関する妻の「収入金額」や「所得金額」が正しいのかを、夫の勤務先が調べるのは、かなり難しいと思います。

こういった事情があるため、妻の「収入金額」や「所得金額」は、特に間違えないようにしたいところです。

ただ妻の仕事の時給や労働時間などに、大きな変動がなければ、給与所得に関する今年の「収入金額」や「所得金額」は、昨年と同じくらいになると推測されるのです。

そのため昨年の年末調整が終わった時に、妻の勤務先から配布された「給与所得者の源泉徴収票」という書類を参考にすれば、間違いが少なくなると思うのです。

例えば2022年の年末調整の後に配布された、「給与所得者の源泉徴収票」の中の、「支払金額」という欄を見てみると、給与所得に関する2022年の「収入金額」がわかります。

また「給与所得控除後の金額」という欄を見てみると、給与所得に関する2022年の「所得金額」がわかります。

通勤手当は上記のように、非課税になる分を額面から控除するのですが、「給与所得者の源泉徴収票」の「支払金額」の欄に記載されているのは、控除が済んだ後の金額になるので、この点を心配する必要はありません。

「収入金額」と「所得金額」の見積額と実際の金額に乖離があった場合はどうなるのか?

11月や12月に支払われた妻の給与が予想額とは違い、見積額と実際の金額に乖離があった場合、

  • 夫は配偶者(特別)控除を受けられなくなる
  • 受けられる金額が変わる

などの可能性があります。

こういったケースに該当した場合、勤務先に再年調(年末調整のやり直し)をお願いするか、所得税の確定申告で修正します。

医療費控除や雑損控除などの、年末調整では受けられない所得控除を受け、納めすぎた所得税を還付してもらう場合、所得税の確定申告を行います。

いずれのケースでも所得税の確定申告をする際には、「給与所得者の源泉徴収票」が必要になるため、これを勤務先から受け取ったら、すぐに捨てない方が良いのです。

「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」の欄が追加

2023年の改正では「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」の欄が追加されたので、「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」も捨てない方が良いと思います。

「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を見た時に、「支払金額>退職所得控除額」になっていた場合には、退職所得が発生している可能性があります。

退職所得が発生していた場合には、給与所得を記入する欄の下にある「給与所得以外の所得の合計額」に、その金額を記入します。

給与所得者の源泉徴収票は5年くらい保管しておく

納めすぎた所得税を還付してもらえるのは、翌年の1月1日から5年になるため、このくらいの期間に渡って「給与所得者の源泉徴収票」を保管しておくと、後で困らないと思います。

所得税の確定申告をする予定がない方でも保管しておけば、交通事故に遭って保険会社に休業損害証明書を提出する時、賃貸物件を借りる時、金融機関から融資を受ける時などに、役に立つ可能性があります

また勤務先は「給与所得者の源泉徴収票」を、7年間保管しておく義務があるため、すでに破棄した方は勤務先に対して、再発行をお願いしてみるのが良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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