終身雇用が一般的ではなくなったとはいえ長期勤続のメリットのひとつとして退職金が挙げられます。

一般的には長く勤めれば勤めるほど金額は多くなり、従業員として退職金は長期雇用のインセンティブとなるでしょう。

今回は退職金の代わりとなり得る企業型DCにフォーカスをあて解説してまいります。

企業型DCの メリットデメリット

退職金上のメリット

端的には企業型DCは掛金として退職金を先払いすることで、会社に将来生じる債務がなくなるというメリットがあります。

企業型DCを用いない退職金制度の場合、一般的には将来の支払いに備えて資金を準備しておく必要があり、コロナ禍により不透明感が強くなった現代ではリスクと言えるでしょう。

その点、企業型DCは「掛金」として「退職金相当額」を先払いしていくことから、企業として将来生じるかもしれない資金難に陥ったとしても痛手を負わないというメリットがあります。

また、退職金の財源を保険で準備する場合もありますが、健康上の理由で特定の社員のみ加入できない場合や予定利率の低下、運用がうまくいかず、場合によっては現金で補填しなければならないという将来発生し得るリスクがあります。

退職金支払いに当たって社内で引当金として準備していたとしても、それは経費にはなりません。

しかし、確定拠出年金の掛金となると全額損金となることから経営上のメリットは決して小さくありません。

求人上のメリット

大企業であれば企業型DCを導入していても珍しくはありませんが、中小企業となると企業型DCがあることは求人上でも求職者のメリットととして申し込みの誘引になり得ます

導入可能企業の条件

厚生年金に加入している企業であれば特段、規模の条件などはなく、導入可能です。

しかし、すでに厚生年金基金や確定給付企業年金(DB)制度を導入している場合は拠出可能掛金限度額が変わりますが、導入自体は問題ありません

むしろ将来の支払額を約束する確定給付企業年金は将来的なリスクも否定できず、中小企業にとっては難しい場合が多いでしょう。

また、法律上は最低従業員数という条件はありませんが、金融機関によっては最低加入に必要な人数の要件を設けている場合もあり、事前の確認が必要です。

加入対象者と年齢

従業員はもちろん、役員であっても加入可能です。

加入可能年齢について法改正により65歳から70歳へ引き上げられます(2022年5月~)。

導入する際の問い合わせ窓口

一般的には取引のある金融機関に問い合わせをし、費用等を総合的に考慮し、決定していくこととなります。

この段階では社内だけでは経験則がなく、判断がつかないこともあり、専門家に相談をする場合も多くなります。

また、制度を導入するまでには必要書類提出後3か月ほど時間を要することから、可能な限り早く導入したいという場合は逆算したスケジューリングが必要です。

導入にあたっての費用

事業規模や金融機関によっても異なることから統一的な費用は記載できませんが、一般的には導入時に20万円程度、加入者の口座開設にあたり一人あたり数千円、事業主にかかる月々の費用も3万円程度が目安となります。

また、制度導入時の説明会や運用にあたっての勉強会も必要となります。

継続的な勉強会、研修会となると別途費用が発生する場合があります。

勉強会・研修会も必要になる

専門家に相談しながら決めましょう

今回は、経営上のメリットにフォーカスをあてましたが、企業型DCは社員への継続的な投資教育も必要となり、運用コストもゼロではありません。

あくまで社員への福利厚生の一環ということであれば税制優遇を受けながら資産形成ができ、働くことに対するインセンティブになることから大きなメリットになります。

また、企業型DCの他にiDeCo+などの選択肢もあることから、自社にとってどの選択肢が適切か、専門家に相談しながら決めていくことが肝要です。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)