株式投資に限らず金融商品の売買について思い描いていることは、「底値で買って、高値で売る」が最も理想的な形で、いつも最高のタイミングで取引し続ける、ということは、たとえプロの投資家でもありえないでしょう。

それどころか、

「株式投資は約70%以上の人が損をしている」

と言われています。

つまり、株の売買でほとんどの人がこのような苦い経験をしていることになります。

株の売り買いを判断する尺度については、投資の知識や経験の他に、投資家の心理的行動も少なからず関わっていると考えられます。

ここでは、その判断に影響を与える心理的行動および取引のパターンや実例などを用いて紹介し、投資判断に必要な知識を含め、何がベストに近い方法なのかを探ってみます。

株を買ったら 株価が下がって 売ったら上がるのはなぜ

心理的要因が大きいこの状況を探る

専門的には、この心理的な投資行動を「行動ファイナンス」という学問領域で論じられていますが、いくつかあるパターンのうち、分かりやすい2つの項目を取り上げて紹介してみます。

心理的行動その1(売り買いのタイミング)

たとえば、コインを5回連続して投げたところ、偶然にも5回とも“表”が出たとします。

では、6回目については、「確率を考え“表”は出ない」と予想するのが一般的です。

しかし、6回目も“表”が出る確率は50%あります。

ここでは、コインを例に挙げ説明していますが、たとえば、株に関して保有銘柄の株価が5日連続下落したことで買値を大きく下回っても、5日連続して下がったのでそろそろリバウンドすることを期待し持ち続けた結果、損切が遅れ、株が塩漬け状態となる最悪のパターンもあります

取引パターンと実例

株を買った途端に株価が下がり、売った途端に上がる

これは、株価が下がり続けているので、「もうこの辺で反転するだろう」と買いを入れたところ、さらに下落した。

一方、株価が上がり続けているので、「もうこの辺で上がることはないだろう」と売を入れたところ、さらに上昇した。

筆者の実感では、約7対3の割合で売りの方が多くなっていますが、結果として、数多くの銘柄は利益確定のタイミングが早すぎたということになります。

この投資判断は、少なくとも確率に基づいた心理状態が影響しています。

心理的行動その2(売りのタイミング)

(A) 小幅な変動領域

たとえば、買った株式の株価が5%の幅で上昇または下落した場合、この相場に関しては、「株価が大いに気になる」といった心理状態となります

具体的な特徴は、たとえ小幅な上昇であっても安心感が大きく、逆に、小幅な下落であっても不安感が大きい。

つまり、この領域は、小幅な変動であっても心理的に敏感になる、とされています。

取引パターンと実例

これに対しては、株価が気になって常にウォッチしていますが、まだ売りのタイミングではない、と判断するのが一般的でしょうか。

筆者保有の株式のうち、これに該当する銘柄の騰落率(買値と現時点の株価の増減率)は、-3.9%~+3.3%(化学株、海運株など4銘柄)です。

この領域は、株価の小幅な変動においても心理的な動揺は他の領域より大きい、と実感します。

(C)大幅な変動領域

たとえば、株価が50%以上上昇または下落してしまうと、この相場に関しては、「株価が余り気にならない」といった心理が働きます。

具体的には、株価がその領域内において多少増減があっても、安心感や不安感はさほどないとされています。

つまり、この領域に達した場合は、満足感や諦念感に至るためか、小幅な領域と比べ心理的に鈍感になる、とされています。

取引パターンと実例

これは、株価の動きを一応チェックするものの、小幅な領域と同様、売りの判断を急がないのが一般的なようです。

筆者保有の株式のうち、これに該当する銘柄の騰落率は、-54.0%~+401.1%(医薬品株、化学株など3銘柄)などは、株価の大幅上昇後、多少増減があっても心理的な動揺は他の領域より小さいと実感します。

(B)中幅な変動領域

この領域は、たとえば、株価が20%前後上昇または下落した場合、「株価は気になるものの、その程度については他の領域((A)と(C))とくらべればやや低い」といった心理状態です。

取引パターンと実例

これは、株価をチェックして売りのタイミングを常に考えることが一般的のようです。

具体的には、株価が上昇傾向にある場合、「まだ上がるかもしれないので、売るのを待とう、または、もうそろそろ下がるかもしれないので早く売っておこう」

下落傾向にある場合、「もっと下がるかもしれないので早く売っておこう、反転するかもしれないので売るのを待とう」

といった楽観的或いは悲観的な心理状態が共に存在している領域です。

筆者保有の株式のうち、これに該当する銘柄の騰落率は、-28.2%~+31.7%(非鉄金属株、卸売株(総合商社)など4銘柄)ですが、 この領域は、株価が多少変動しても心理的な動揺は他の領域よりそれほど大きくないためか、いくつも売り損ないの苦い経験があります。

※変動領域にあるパーセンテージはあくまでも仮設です。

※筆者保有の株価の騰落率は2021年12月3日現在の数値です。

ベストに近い投資判断を探る

ベストに近い投資判断はあるか そのために必要ことはなにか その解決策を探る

ここまでは、心理的な影響による投資判断について述べてきましたが、ここからは、投資手法や投資に必要な基本的な知識について簡単に触れておきます。

投資スタンスは長期投資が主軸

・ 心理面において、日々の値動きに神経を使わないので、ストレスが比較的少ない状態で長期的なリターンを目指すことができる

・ 技術面において、短期投資のようなチャートやテクニカル分析などの専門的な知識はあまり必要としない

・ 相場全体が急落しても慌てて損切りをしなくて済む、など

分散投資でリスクを軽減

1つの銘柄に投資資源を集中させるのではなく異なる業種や銘柄を選択してリスク分散を図ることができる

最低おさえておきたい企業の業績内容と基本的な投資指標

売買したい銘柄の選定や的確な投資判断を行うためには、企業の事業活動、経営方針、事業計画などの事業内容および財務および業績状況、それを基とした投資指標のいくつかを株主通信、月刊誌、会社四季報、証券会社のHPなどの情報媒体を活用し、把握しておくことが大事です。

事業内容や業績面において注視すべき項目をいくつか挙げると

・ 経営課題としている事業とその具体的な取り組みは明確か

・ 新規開発や設備投資などの規模とそれらは利益性のある計画となっているか

・ 借入金などの負債総額は前期と比べ増えていないか

・ 売上高・営業利益・純利益は好調を維持しているか

・ 多額な特別利益や特別損失はないか、またそれは一期だけの臨時的な発生か

などです。

投資指標において注視すべき項目をいくつか挙げると

・ PBR(株価純資産倍率)

割安株を判定する代表的な指標の一つで長期投資向き、1倍以下が銘柄選択の目安

・ PER(株価収益率)

純利益に対して株価水準が割安か割高かを判断する指標で、15倍程度が平均値

・ 配当利回り

1株当たりの年間配当金額を現時点の株価で割った指標ですが、実際は購入株価で

割った方が現実的

・ 配当性向

営業活動で得た純利益のうちいくら株主への配当に充てたか、株主重視をみる指標

・ ROE(株主資本利益率)

株主が出資した資金を企業が効率よく使って経営を行い、いくらの利益を上げたかを判断する指標など、これらの指標が好調に推移しているかをチェックすることです。

投資判断はマイルールを決めておく

たとえば、目標とする株価のおおよそ8割程度で売り買いを実行することをあらかじめ決めておくと精神的に少し気が楽になります

投資は、常にストレスとの戦いともいわれていますが、ストレスフリーにより近い長期投資のスタンスで、負けない株式投資を目指すべきかと考えます。

※心理的な投資行動に関する参考文献:日本ファイナンシャル・プランナーズ協会発行の「金融資産運用設計」平成18年度版

(執筆者:CFP、1級FP技能士 小林 仁志)